「切削工具の加工・製造を始めてから、自分たちに価格決定権のあるものを作りたかった。メーカーとして自立し、自社のブランド力を世の中の人に知ってもらうようになる。その足がかりになるものをつくることができた」。西研社長の寺本博氏は、新たに開発した「クレアボーラー」を手にしながら胸を張った。
創業は1995年。同じ会社に勤めていた同僚と2人で切削工具の再研磨を請け負う会社を立ち上げた。資本金は300万円。汎用の工具研削盤2台からのスタートだった。
再研磨は、摩耗して切れ味が悪くなったドリルやエンドミルなどの切削工具を研ぎ直すサービスだ。一見すると、単なるドリルのように見える切削工具は、金属やプラスチックの材料を削り込み、思いのままの形を作りあげる。硬い材料を何十、何百と削り込むと、切削工具の刃は1日ももたず数時間ほどで摩耗してしまう。このため、部品などの加工メーカーは、西研のような専門業者に摩耗した工具の再研磨を依頼。切れ味を回復させて再び加工に使用している。
寺本氏によると、取引先のもとに週に1度定期的に顔を出し、摩耗した切削工具を引き取り、研磨機にかけ、再び新品同様の切れ味に戻して顧客に納品するという。「これまでにいろいろな仕事を経験してきたが、理髪店のように取引先が定期的に来てくれるような仕事をしたかった」と再研磨のビジネスを始めた理由を話してくれた。
「NOと言わない会社」を目指し、顧客の要望を最優先に営業を展開。金曜日に「休み明けには納品してほしい」と引き受けた仕事を休日返上で対応することもいとわなかった。顧客優先のサービスは高く評価され、市内を中心に取引先の数は増えた。最新の装置も導入。従業員を雇い、事業の規模は少しずつ大きくなっていった。