農業ビジネスに挑む(事例)

「わかば農園」原料から生産するカット野菜事業で飛躍する

  • 「大根のつま」づくりで事業を立ち上げる
  • カット野菜で販路拡大

刺身のつまや薬味、そしてカップサラダなどのカット野菜で躍進する企業が岐阜県にある。農業生産法人のわかば農園だ。小売業から出発した同社は先見の明から製造業へ転身し、さらに自営農場をもつことで原料の安定供給を図っている。

自前で加工機械をつくる

わかば農園の前身は、先代社長(現会長)が地元で経営していたスーパーマーケットだ。1990年、先代社長がごぼうのササガキなどカットした野菜を青果商に提供すると好評を博した。それにヒントを得た先代社長は、スーパーの店子の鮮魚店が刺身のつまとして大根を刻んでいることに着目し、1991年に大根のつまの製造・販売を始めた。そして1992年にはそのための会社「わかばFoods」も設立。

この事業は大当たりし、手作業では対応しきれないため早速自前で機械の開発に着手した。試行錯誤の末に原案を完成させ、懇意の板金メーカーに製作を依頼して1994年に初号機が完成した。ところが、大根のつま製造の機械化を喜んだのもつかの間、特許で押さえていなかった初号機はコピーされて全国に出回ってしまった。そこで差別化を図るため、1995年には2号機の開発をスタートさせて2年後に完成(1999年に特許取得)。これにより大根のつまの生産効率を飛躍的に高め、大根のつまを始めとするつまものメーカーとしてその地歩を確実なものとしていった。

鮮魚店で刻まれる刺身のつまをヒントに大根のつまの製造・販売を始めた

販路の拡大と安定化へ邁進

2000年、先代社長を継いで三浦茂雄さんが社長に就任すると、販路を拡大するため大手スーパーの平和堂と取引を開始した。それから10年の歳月をかけて販路の拡大と安定化を図っていった。

また、大根のつまの原料となる大根の安定確保を図るために自営農場を開設した。需要の変動にも柔軟に対応し、顧客に廉価な商品を供給する体制づくりのためだ。現在は岐阜県を始め山梨、静岡、三重など6県で直轄の農場を運営する。

大根のつまの原料を安定確保するため自営農場を6県下に所有する

2009年、三浦社長は経営方針の1つとして年商を倍増して50億円を目指すと明言し、それと同時に社名を「わかば農園」に変更した。年商倍増のためには大根を中心とするつまものだけでは不可能なため、2011年からはカット野菜の製造・販売を始めた。その主体となるのがサラダで、大根はもとよりタマネギ、キャベツ、パプリカなど多様な野菜をカットしてサラダの具材として提供する。

平和堂を始めとするスーパーには自社ブランドのカップ入りサラダ、レストラン、居酒屋などの外食産業には業務用サラダを出荷し、近年はOEM供給の1コイン(100円)カップサラダがヒットしている。

さらなる飛躍を期して…

2009年は新工場が竣工した年であり、それを機にわかば農園は自社の特徴を訴求する目的で温室栽培を始めた。新工場の屋上に面積2500m2の温室を設け、6種のベビーリーフを溶液栽培している。

また、カット野菜の品質管理を万全とするため2003年にISO9001の認証を取得し、原料の生産から加工、出荷まで全工程でのトレーサビリティーにも対応している。

現在、年商は44億6000万円、売上げの60%以上をサラダが占め、草創期の主力である大根のつまは20%という。

カット野菜で成長してきた同社だが、今後は加熱総菜も視野に入れ、さらなる飛躍を期すべくその準備に余念がない。

企業データ

企業名
農業生産法人 わかば農園株式会社
Webサイト
代表者
三浦茂雄
所在地
岐阜県岐阜市細畑2-4-18