農業ビジネスに挑む(事例)

「カフェスロー大阪」農業で「部活」するカフェ

  • クラブを組織して有機栽培を体験する
  • 自ら生産した野菜で加工品も製造・販売

2005年、2人の若者が軽ワゴンでオーガニックコーヒーの移動カフェを始めた。北海道から九州まで全国のイベントを駆け巡り、オーガニックコーヒーを販売した。  イベントのない日は地元の農業生産者を訪れ、なかば押しかけで手伝いをした。それでも生産者からはおおいに歓迎され、料理を振る舞われたり宿を提供されたりと至れり尽くせりの歓待を受けた。

そんな彼らも2007年に会社(株式会社かふぇぴとぅ)を起こし、2008年に大阪・十三のジュース工場の跡地を改装してカフェをオープンした。オーガニックコーヒーのほかに有機野菜を中心としたフードメニューを提供するスローなカフェ「カフェスロー大阪」だ。2人の若者は、赤澤福彦さんと見島英之さん。高校時代からの同級生だ。

2008年にオープンした「カフェスロー大阪」

かふぇぴとぅ代表取締役の赤澤さんがオーガニック野菜と出会ったのは10代の終わり頃、「インスタントラーメンばかり食べていた」(赤澤さん)ことが原因か、極端な食生活がたたって病に倒れた。それをきっかけに食生活を見直し、その際、有機野菜に興味をもち独りで学んだ。

そんな有機野菜との縁をもつ赤澤さん、カフェで食事をするお客さんからメニューの野菜について質問されるたび、もっと有機野菜を知りたいと農業への関心が高まっていった。そして開店の年に店舗の大家の知人から農地(能勢=京都府北部)を借り受け、農業を始めた。最初は農業のイロハも知らなかったが、それでも周囲の協力を得ながらキュウリ、トマト、ナス、ソラマメ、ゴーヤなどの野菜を栽培し、夏フェスのメニューにも載せた。

いまでは能勢の農地で菊芋を栽培し、それをチップスに加工して店内で販売している。

いまでは能勢の農地で菊芋を栽培し、それをチップスに加工して店内で販売している。

農業を体験する部活を開始

農地で栽培を始めたのだから、せっかくだ、共に農業を体験する人を募ろう。そのための集まりとして「チャレンジ畑部」を2008年に発足させ、5人のなじみ客とスタートさせた。

さらに農地を管理し野菜を栽培するうえでもっと技術を身につけたいと、2009年からは枚方のカルチャースクールに参加するようになった。ここでは隔週の土曜・日曜日にプロの生産者から野菜の栽培を学んでいる。

野菜の栽培技術を身に付け、実際に農地で実践する。そのチャレンジ畑部の活動領域をさらに広げようと、2010年に森の都研究所と共同で「里山再生プロジェクト」を丹波で実施した。森の都研究所は生態系保全を目的としたNPO(特定非営利活動法人)だが、チャレンジ畑部はイベントを介して同研究所と知り合い、そこで意気投合して里山再生に取り組むことになった。同プロジェクトでは毎月1回以上活動し、田植え、きのこの菌打ちなど里山での作業に取り組んでいる。

近畿内の4カ所で農業に携わる

現在、カフェスロー大阪はチャレンジ畑部を主体に4カ所で農業に携わっている。既述の能勢、枚方、丹波、そして川西だ。川西での活動はこれからだが、NPOが実施するゴミの堆肥化に参加する予定という。

「これまでに複数の場所で農業に取り組み、体験を重ねてきました。そして土地によってさまざまな農法があることを知りました。そうした多様なものを学んでいく機会を今後さらに増やしたいと思っています」

カフェスロー大阪の店舗内にはレンタルスペースがある。かふぇぴとぅが経営する事業の1つだが、赤澤さんはそのレンタルスペースで生産者と消費者がふれあえる機会を増やし、もっと農業を知ってもらうことで両者のつながりを強固にしたいと考えている。

企業データ

企業名
カフェスロー大阪(運営は株式会社かふぇぴとぅ)
Webサイト
代表者
赤澤福彦
所在地
大阪市淀川区十三元今里2-5-17