近隣のイチゴ観光農園と比べ若干高めの価格設定をしているワイズアグリだが、価格付けは前述のとおりダイナミックプライシングによる。人が集中する土日祝日は料金を上げ、集客数を見込みにくい平日に安くするのも運営上の道理だろう。特徴的なのは、午前と午後でも料金が異なること。人がまだ入っていない午前中のほうが採れるイチゴが多いので、どうしても午後に来た顧客はイチゴの数が少ない。料金を下げることで顧客も納得し、かつ常連ともなれば午後より料金が高くとも午前中を狙って予約してくれるのだ。
実は、ダイナミックプライシングに踏み切ったのは開業後3年経ってからのこと。当時は、お客様の予約数が激増し、収容者数のキャパシティが限界を迎えていた。一方で、資材や肥料など材料費が値上げしていくことはある程度織り込み済みだったが、ウクライナ戦争の影響もあり急激にすべてが高騰したのだ。原料や肥料が数パーセント値上がりしたほか、建築資材の高騰は想像を絶するものだった。対応するため値上げを余儀なくされたが、ただの値上げではいけない。顧客にとって納得のいくものならば、とダイナミックプライシングを導入。制限時間を長めにする、アフターサービスを充実させるなど、サービス面を強化したうえで料金を見直したのだった。
付加価値をつけることで顧客に納得してもらう、というポイントもさることながら、この戦略には徹底的なマーケティングがされている。たとえば、果物狩りでは平均して30分ほどでお腹がいっぱいになるが、そのまま帰すのではなく無料のドリンクやポップコーンをふるまう。人は滞在時間が長くなるほど消費活動が活発になるというデータ通り、ポップコーンを食べお腹が落ち着いてくるとお土産を手に取り買ってくれる人が増えた。この、ポップコーンを出すのにも理由があり、体内のイオンバランスを整える目的で提供している。イチゴはカリウムが多く、たくさんカリウムを摂取したあとはナトリウム(しょっぱいもの)が食べたくなるためだ。来場者から友人などに渡ったお土産はPR効果を発揮し、自社サイトから予約をしてくれる人も増えてきた。お出かけ情報サイトの利用料もなかなか高額なので、自社サイトからの予約はありがたいのだ。
こうした戦略が奏功し、値上げをしても客離れを起こすこともなく、むしろ順調にファンを増やしている。