農業ビジネスに挑む(事例)

「アグリコンパス」農産物市場の物流の効率化をシステム面からサポート

  • 生産管理の効率化を目指したシステム開発
  • 物流での膨大な作業の解消に寄与するシステム

農業関係者にITシステムをASPでサービス提供するアグリコンパスは、2009年6月に設立の若い会社だ。三井物産とJFEエンジニアリングの折半出資合弁会社としてスタートしたが、現在は三井物産の完全子会社だ。農場経営支援システム「アグリプランナー」、団体生産履歴管理システム「トレースナビ」、販売精算物流管理システム「アグリポイント」の3つのシステムを軸に、農業関連のソリューションプロバイダーとして事業展開している。

ネットを活用した生産管理システム

農場経営支援システム「アグリプランナー」は、生産現場に近い農業法人が主顧客で、農業生産の効率化を促すサービス。農業法人の社長もしくは社員が畑などの生産現場の状況をつぶさに一元管理して生産性向上につなげることができるツールだ。

農業法人では野菜や果実などを栽培する場合、生産現場(圃場)ごとの作業指示、あるいは生産した農産物の採算性や販売管理などを的確に行いたいとするニーズが大きく、それに応える形でアグリプランナーを開発した。

ハウス栽培など手間のかかる農作業でも、あるいは20以上もの圃場に数多くの作業員を配置している場合でも、このツールを使うと容易にそれが可能になる。各圃場の担当作業員には、いつ種を蒔き、いつ肥料や農薬を施すといった情報をスマホを介して本部から飛ばし、それを受けて作業を進めた担当者は、作業が終わるとそれをスマホで報告する。

その情報を本部で一元管理する社長や社員は、日々の報告に基づいて遅滞なく指示を飛ばすことができる。仮にどこかの圃場で害虫が発生した場合でも、現場からその報告を受けると本部はただちに適切な農薬の散布を指示でき、それがほかの圃場に及ばないよう情報を共有して対応にあたることもできる。

システム利用料は月5万円。ただ、2011年の開発当初は相応の市場拡大を期待したが、想定したほど農業法人が増えず、現在では緩やかな伸びにとどまっている。

入荷時の農薬チェックを瞬時に実施

それに対し、もっか同社の基幹事業になっているのが「トレースナビ」と「アグリポイント」。この両システムで売上げの9割以上を占める。いずれも全国のJAグループが主顧客だ。

トレースナビは、農産物への安全・安心のニーズに対応した農薬トレーサビリティ・システムで、全国約680のJAのうち、110JAがすでにこれを導入している。

JAの集荷場には農家から大量の農産物が入荷されるが、その荷受けの事務処理を手作業で行うと膨大な手間がかかる。それに対しこのトレースナビを導入すると、集荷場で農家から農産物を受け入れる際に使用農薬のマークシート(農家で記入される)の情報を高速スキャナーで瞬時に読み取って処理するので、作業が大幅に軽減され、作業の省力化が進む。しかも万が一、農産物に残留農薬があったとしても、それを荷受け段階ではねのけられるので、農産物の安全・安心は水際で完全に確保されることになる。

このトレーサビリティ機能が高く評価され、最近ではその簡易版として道の駅・直売所向けのシステムも開発、使い勝手の良さからこの普及も着実に進みつつある。

農家が記入した「使用農薬のマークシート」を集荷場で読み取り、荷受け作業を大幅に効率化できる「トレースナビ」

物流管理を飛躍的に効率化

もうひとつの販売精算物流管理システム「アグリポイント」は、正確かつスピーディな荷受け・配荷管理のためのツールで、あらかじめ農家に貼ってもらうバーコードを市販のバーコードリーダーで読み取る。 多くの農家から荷受けする各種野菜の数量はサイズごとに瞬時に情報処理され、東京、大阪、名古屋などの市場に出荷される。各市場で競りにかけられ販売されたあとの伝票もまたこのシステムで一括処理、農家ごとの精算データを作成する。

こうした作業は夏場の繁忙期などは、JA職員が夜中まで事務処理しなければならず、また、事務処理が追いつかない場合は農家からの入荷を制限することがあった。しかし、このシステムの導入でそのボトルネックが完全に解消され、10人以上を要していた職員が2~3人ですむようになったJAも珍しくない。このシステムは現在、全国13JA・約90集荷場で採用されている。

「アグリポイント」により荷受け・配荷管理をスピーディに処理できる

年率2ケタで高成長する

現在、同社の年商は約3億円。創業当時はビジネスのターゲットがなかなか定まらなかったが、3年ほど前にこの3本柱の経営路線に明確な道筋がついてからは年率2ケタの伸びを続けている。とりわけJAグループ向けの2つのシステムに期待がかかる。

「事業をどう効率化するか、各JAはそれぞれの悩みを抱える。私どもはそれを聞き、ああしよう、こうしようと1~2年がかりでシステムをつくりこんでいく。ソリューションに独自のノウハウをもっており、そこに私どもの強みがある」
そう語るアグリコンパスの石原廣社長は、自らのシステムに揺るぎない自信を抱いている。

企業データ

企業名
株式会社アグリコンパス
代表者
石原廣
所在地
東京都千代田区内神田1-14-6 福利久ビル