東南アジア、南米など世界に広がる輸出先
従業員はすべて正社員、定着率も高い
伊社と提携し韓国社に販売
福田敏男社長は電機部品メーカー勤務などを経て1972年に三和電機を設立した。当初は、社員の手作業でコイルを成形し、絶縁テープを施して、最終製品に仕上げていく仕事だった。その後、「機械化すればもっと数をこなせるはず」と、コイル成形機やコイルテーピングマシンを内製化する。最初は制御装置こそない機械だったが、手作業に比べて機械1台当たり数千円、率にして15~20%のコストダウンを実現した。
第1号の自動テーピングマシンは93年に鉄道モーター用として完成。コーナー部分のテーピングには曲線部分がじゃまをしがちだが、社員の発案でパソコンによる制御で円滑、スピーディーに精度良く巻けるようにした。翌94年にはイタリア・ミラノの展示会に出品する。イタリアの企業と販売提携し、初めての顧客に韓国の現代重工業が決まった。その後、日本の重電メーカーにも採用が広がっていった。
2000年には、約30年の経験とノウハウを生かして、巻線機とテーピングマシン、中間成形機、成形機の4台で構成する「全自動コイル製造システム」を開発した。最大18軸の機械で、手作業を省くことで生産性が7~10倍に高め、価格も欧州製の半分程度を実現した。こうした取り組みが「第2回ものづくり日本大賞優秀賞」や「元気なモノ作り中小企業300社」の受賞・選定に結びついた。
自社用に開発し外販もする全自動コイル製造システム
改善提案の鬼
同社のポイントは「社内で機械を使いながら外販し、さらにモーターのメンテナンスも受けていく」という総合戦略をとっていること。匠の技を数値化して移植した機械、自社の加工でも威力を発揮する高速・高品質の機械は、説得力にあふれる有能なセールススタッフというべき存在だろう。
福田社長は会社員時代、職場で「改善提案の鬼」といわれた。大手の下請けにとどまらず「こうしたらもっとコストダウンできる」といった提案を取引先に繰り返し行った。三和電機を創業してから、その動きに拍車がかかった。「“変わり者だな”と言われながら喜んでもらえたのが当社の原動力」と福田社長は強調する。受注単価の引き下げが極めて厳しかった87年の国鉄分割民営化(JR各社誕生)も大きな転機となって、不良率をいかに下げ、どんな仕事がきても対応できるように改善・改革を徹底してきたことが今日の同社を形作ってきた。
高い定着率
「従業員は正社員のみ。経営が厳しい時でも解雇や一時帰休はしない。何より優秀な社員を育てる」をモットーとする同社だから、社員の定着率は高い。2015年12月期の売上高は前年度比5%増の約6億5000万円。リーマン・ショック前の約9億5000万円には届かないものの、着実に顧客・受注量を増やしている。従業員の高齢化や後継者難で廃業する同業他社もある中、「景気の変動はあっても、コイルの需要がゼロになることはあり得ない」(福田社長)とし、モーター修理から特注の一品モノまで多様なニーズにこたえている。近い将来、専務である子息に社長を譲り、自身は会長に就くつもりだ。今後も二人三脚で、顧客にも社員にも地域にも信頼される会社として発展を続ける考えだ。