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「和モダン」時空間演出する独自の歓待サービス「おもてなしstyle」

2021年 3月 22日


営野代表自作のPV

おもてなしstyleは、室内空間コーディネートサービスを提供している来客歓待事業者。桜、寿司下駄、重箱、升、籠、提灯など日本に古くからあるアイテムをおしゃれにアレンジしてインテリアに散りばめる。代表は、「和モダン」テイストのデザインを得意とするフリーランスのグラフィックデザイナー 営野久美子氏が務めている。

商業施設やホテル、旅館、飲食店などの接客スペースに風流な「和」の空間を創出するアイデアを提供するため、とりわけSNS映えするビジュアルと商品開発に工夫を凝らしている。季節や目的に応じてコーディネートする空間にマッチするケータリングも請け負うなど、演出の引き出しは多彩を極める。

祖母がおしえてくれた「和」の魅力

帯をランナーに使ったテーブルコーディネート
帯をランナーに使ったテーブルコーディネート

おもてなしstyleは「ホームパーティーにゲストを招いて、おもてなしすることが大好き。どう喜ばせようかと思いを巡らせる時間は、とても楽しい」と語る営野代表の旺盛な歓待精神と美的センス、想像力、開発力を源泉としている。が、「和」との出遭いは祖母の存在なくしては語れないという。

「小原流華道の先生だった祖母は、珍しい花器を多数持っていた。祖父が瓦師だったことから、瓦や鯱なども花器として使ってみる柔軟で斬新なアイデアに感銘を受けた」

亡き後、譲り受けた多数の花器や着物の帯などを使い、グラフィックデザインの仕事で家のインテリアをディスプレイするようになっていった。アクセントに使っている狐のお面も、王子生まれだった祖母が地元の稲荷神社にゆかりのある狐の行列で実際に使っていたもの。たくさんの想い出に導かれるように、仕事と主催するホームパーティーの双方で、歓待サービスの感性を磨き、経験を積んでいった。

忘れられない歓喜の声

インスタで好評だった正月用コーディネート
インスタで好評だった正月用コーディネート

好きが高じて、アイデアが次々湧いてくるようになってきたホームパーティー。招くことより、来客の笑顔を見ることに楽しみと充実感を覚え、いつしか目的とやりがいに変わっていた。

「ワインに合う繊細で華やかな自作のフィンガーフードを旅館や料亭で使うような高級志向の小さな器に盛って歓迎した時の、親日外国人の歓喜が忘れられない。お酒を風呂敷に包んで土産に渡した際の、紙の包装でなかったことへの驚きと感謝の言葉も耳に残っている。SNSで発信したテーブルディスプレイには、日本人からも好反響が寄せられた」

モダンにデザインした和小物で、接客する時間と空間をコーディネートするサービスは、外国人だけでなく日本人の興味も惹く——。こうした気付きが、和モダンを売りにした歓待サービスを事業化する決意につながった。「おもてなしStyle」で税務署に個人事業の開業を届け出たのは2020年1月。思い立ってから3カ月のスピード創業だった。

主力は手縫いの風呂敷「お包み」

「お包み」は意匠登録出願中
「お包み」は意匠登録出願中

4合瓶を風呂敷で包装する「お包み」は、おもてなしstyleの主力商品。営野代表の創業意欲を刺激するきっかけにもなった、贈答品を引き立てる「一枚のおもてなし」だ。

瓶を入れて、上部をクルっと結ぶ独自のラッピング商品。裏地がチラッと見えても美しい風呂敷用のしっかりした生地を京都のメーカーから仕入れ、自ら一つひとつ丁寧に細長い袋状に手で縫って仕上げている。

難しいとされる風呂敷の結び方を簡略化している点や、紙の包装より遥かに優れた質感や雰囲気が際立つ。贈答価値を付加して「お土産用に買ってきたお酒」を格上げする効果が期待できるとして、酒造メーカーや商社から商談が舞い込んでいる。相次ぐ量産要望に応えられる別バージョンも検討している。

心遣い表す木箱

「お包み」ラッピングの高級感をさらに引き立てる木箱は、「お包み」とのセット販売商品。桐によく似たファルカタ材を使って、和の風合いを漂わせている。4合瓶が入るスペースに、杯、ネクタイ、ハンカチなどが、ほどよく収まる小さな別のスペースを設けてある。メインのお酒に添える、ささやかな心遣いを表す自信作だ。

この木箱には、差し上げる人の名前やオリジナルのメッセージ、写真などを蓋に刻印できるオプションを添えてある。レーザー刻印機でビジュアルを艶やかにグレードアップするサービス。日本古来の市松模様などをあしらうと、風情豊かになるという。

ケーキスタンドから生まれた「映えるお重」

脚で高さを変えられる「映えるお重」
脚で高さを変えられる「映えるお重」

オリジナルの重箱は、食べ物とテーブルをより立体的に彩る器。知人のフードコーディネーターの商品開発要望を実現した「映えるお重」だ。重箱は、料理を宝石箱のように詰めて重ねられる外観も魅力的な食器。しかし、知人のリクエストは「使い捨て以上、高級未満の重箱」だった。

詳しく聞くと「伝統的な漆器は、高価なうえにテーブルコーディネートが和風に限定されてしまう。廉価な薄手のプラスチック製では、歓待にならない」という難しい注文。実現するには、どうすべきか…。料理を美味しそうに魅せている画像をインターネットで検索するうち、アフタヌーンティーに付き物のケーキスタンドに目が止まった。

小鉢もぴったりの間仕切り
小鉢もぴったりの間仕切り

3段という適度な高さにヒントを得た営野代表は、高さの異なる2種類の支脚パーツを取り付けて、高低差を設けて供する重箱を桐材で製作。支脚パーツは、持ち運びや収納時の利便性を考慮して、簡単に着脱できる仕組みにした。水に弱い桐の難点は、クッキングシートを敷くことで補った。安価で提供するためにも、コスト高になる防水加工は選択肢から消去した。

この新たな重箱に間仕切りを設け、正月用にきれいな小鉢を入れて21年の年明け、Instagramに投稿した画像には予想を大幅に上回るアクセスがあった。好評を弾みに、現在は量産計画を具体化する途上にある。

コロナ禍を充電期間に

沸いてくるアイデアを次々商品化していく営野代表に、順風ばかりが吹いていたわけではない。新型コロナウイルス感染症の影響で、インバウンドを含む観光産業全体が停滞した。被害は、おもてなしstyleにも及んだ。

創業して間もない20年2月、プロの反応を確かめようと腕試しのつもりで大規模展示商談会「インバウンドマーケットEXPO2020」に出展した。春向けに桜で彩ったインテリア「室内花見」は好評を得たものの、感染が中国で拡大し始めた矢先の開催。来場者は前回の6割に落ち込んだ。ブースに立ち寄ってくれたすべての事業者に営業したが、多くはホテル、旅行会社、商社などの観光関係者。新規の受注には至らなかった。

ビジュアルマーケティング積極展開

営野代表は、1回目の緊急事態宣言が解除された5月以降も、本格的な事業再開を敢えて控え、自助努力を重ねる。事業拡大には積極的な情報発信が不可欠と考え、まずInstagramの強化に着手した。

自己投資に一眼レフのデジタルカメラを購入。我流に頼ることなく、プロのカメラマンが運営する教室で撮影技術を学んだ。被写体の世界感が伝わる構図を研究するため、空間ディスプレイデザインを専門的に教える教育機関にも通った。

小道具をフレームの端に少しだけ写り込ませる演出や、視覚に訴える効果的な商品陳列術など、習得した知識と技術はイベントディスプレイサービスなどの品質向上に注ぎ込んでいる。おもてなしstyleのスタイリッシュなウェブサイトは、動画を含めて営野代表が企画からセッティング、撮影、編集まですべて1人で完遂した作品だ。

資金の一部は、令和元年度補正予算小規模事業者持続化補助金で調達した。グラフィックデザイナーの領域であるウェブ制作や画像編集、販促物の制作以外の自力を高めるため、「ラッピングの開発による自社ブランド確立と販路拡大事業」で申請。採択された。補助金は、ウェブと SNSに載せる動画の制作費、レーザー刻印機と3Dプリンターの購入費などに充てている。

日本体験ワークショップも

おもてなしstyleは「ガイドブックに載っていない日本を紹介する心」で、特に訪日客の想い出となる「コト消費」体験を提供するワークショップも展開している。観光事業者が、主に訪日客向けに活用することを想定した講座。ファシリテーターには、国際交流団体で外国人に日本文化を伝えている講師を迎えた。

水引や手ぬぐい、風呂敷を使った日本の伝統的な包装技術を伝えるコースや、粘土で和菓子“作り”を体験するコースなどバリエーションを豊富に取り揃え、「和」の伝道に努めている。

日本古来の姿「Reデザイン」

「今はグラフィックデザインの仕事でも収入を得ながら、歓待事業の本格的な再稼働に備えて新たな企画を練りながら、経営基盤を強固にしている段階」と英気を養う営野代表。情緒溢れる日本古来の姿形の「Reデザイン」をコンセプトに、おもてなしの心を届ける商品開発に余念がないようだ。

おもてなしstyle 代表 営野久美子(えいのくみこ)氏

おもてなしstyle 代表 営野久美子(えいのくみこ)氏

グラフィックデザイナーとしての技能を活かして、「和モダン」テイストのサービスや商品企画を提案する歓待時空間クリエーター

企業データ

企業名
おもてなしstyle
Webサイト
設立
2020年1月
代表者
営野久美子 氏
所在地
神奈川県横浜市神奈川区橋本町2-5-3CHT BW604
Tel
045-620-3343
事業内容
テーブルコーディネート・ケータリングの受託、テーブルウエアの企画・開発、日本文化体験ワークショップの運営など