コロナ禍からの華麗な脱出などなにもかもWin-Winに動いているように見えるが、佐別当氏はもとから社会的インパクト投資家にしぼって声をかけるなど、見通しを持っている。こうした投資家は利益よりも"社会にどれだけ貢献できたか"を主に注視するため、会社利益の指標だけでなく毎年「社会的インパクトレポート」を発表しているのも、ADDressのビジネススタイルだ。空き家をどれだけ減らせたのか、地域の活性化にどれだけ貢献できたのか、幸福度がどれだけあがったのか、を調査。これこそが、投資家たちにとっての"成果"であり、また、佐別当氏の目指すところでもある。
「実は、20年くらい前にアメリカで起こった社会事業家というものにずっと興味を持っていて。IT業界から社会を変えられると思っていたのですが、ネットいじめだとか不幸なことばかりが目に付くので、ITではないなと」。社会に貢献したい佐別当氏なのに、その実感がなかったことが独自起業への動力になっている。準備期間こそ「2か月程度」と短かったが、実はずっと抱き続けていた夢があるのだ。
投資家と佐別当氏との間には、こうした夢の共有があったことも確かだが、時代の流れも大きなポイントだ。本来、空き家問題などは不動産業界も解決に乗り出してもおかしくない。しかしこうした事業を思いつかないのは「商習慣が固まっているからではないか」と佐別当氏は考える。「全国の空き家をつなげる」という発想にたどり着いたADDressのサービスは、今や不動産関係の会社からの出資もあるといい、そのネットワークを利用してさらなる拡大を続ける。
この先、ADDressでは100万人の利用者を獲得することを目指す。それは、将来的に空き家が2千万軒にのぼるとの予測がある中、地域の課題解決を目標に掲げるのなら、それだけの規模がなければ「自己満足に終わる」から。規模の拡大は必須なのだ。
「ウチの利用者には学生も主婦の方もいる。誰もが気軽に使えるサービスにするために、選択肢の多いプランを作っています」と佐別当氏。投資家たちが見ているのは損益や売り上げではない。「そんな観点で投資をしているのではないから」と言い、社会貢献の度合いに注視しているのだ。
立命館大学出身の佐別当氏のこのビジネス。なんと大学が1億円のファンドを作って出資してくれたといい、社会的インパクト事業の投資モデルとして高く評価されてもいる。「なにか世の中の役に立ちたい」という想いが根底にあるからこその成功であったのではないだろうか。