2020年からのコロナ禍で同社でも客足が大きく落ち込んだ。そのとき、国の事業再構築補助金を申請するに際し、千葉県よろず支援拠点のサポートを受けた。よろず支援拠点とは、国が全国47都道府県に設置している無料の経営相談所で、中小企業などを対象に、売り上げ拡大や経営改善など経営上のあらゆる悩み事の相談に対応している。補助金に関するサポートを機に、銅板洗浄後の不良品についてよろず支援拠点に相談したところ、大手メーカー出身のコーディネーター(CO)が課題解決に協力することになった。
取り組みは2023年から始まり、まず不良品発生の原因を解明したところ、洗浄の際に付着物と一緒に「パティナ層」と呼ばれる保護層も除去していることが分かった。これは銅などの金属表面に酸化によって形成される薄い層で、パティナ層を一定程度残すことで、洗浄後すぐに適度な焼き具合が実現できるという結論に至った。これを受けてCOはレーザー照射で銅板の付着物を除去する方法を提示した。レーザー装置をレンタルで導入し、除去の様子をカメラで撮影して銅板表面のデータを半年ほどかけて収集・解析。適度な焼き具合の製品を安定的に製造できる照射条件を導き出した。
こうしたDX化の結果、できて当たり前だった焼成工程の不良品はほぼゼロになり、どら焼きの歩留まりは82%から95%に改善された(5%は他の工程での不良品)。渋谷氏は「不良品をなくすなんて無理、と思っていたが、メカニズムを解明していけば実現可能であることが分かった」と話す。
この取り組みは2024年度の千葉県の先進的デジタル技術活用実証プロジェクト補助金に採択され、その成果は他の県内中小企業で広く活用されることが期待されている。