社会課題を解決する

小型人工衛星を開発・製造 日本の宇宙ビジネスの牽引役「株式会社アクセルスペース」

2023年 4月 17日

アクセルスペースの中村友哉・代表取締役CEO
アクセルスペースの中村友哉・代表取締役CEO

天気予報や衛星放送、GPS—。人工衛星を利用したサービスは今やわれわれの生活に欠かせない重要な社会インフラとなっている。株式会社アクセルスペースは、低コストで高性能の小型衛星を製造し、打ち上げから運用までの幅広いサービスを提供する。民間の宇宙利用のすそ野を大きく広げる取り組みが評価され、「第22回Japan Venture Awards」(中小機構主催)の最高賞である経済産業大臣賞を受賞した。

重さは100~200キロ 短期・低コストで製造を実現

東京・日本橋のオフィスビルで人工衛星が製造されている
東京・日本橋のオフィスビルで人工衛星が製造されている

アクセルスペースが得意とするのは重さ100キログラム級の小型の人工衛星だ。国や大手企業が手掛ける数トンクラスの大型人工衛星に比べるとはるかにコンパクト。しかし、「技術の進展とともにトンクラスの機能を持つようになった」と代表取締役CEOの中村友哉氏は語る。

人工衛星は大型であればあるほど機能も性能も上がる。だが、開発・製造にかかる時間は5~10年、コストは数百億円にもなる。一方、機能や性能を絞り込んだ小型衛星は数十億円規模。2~3年ほどで開発・製造することが可能だ。スピーディーかつリーズナブルに宇宙を利活用できるメリットがある。

小型人工衛星の分野で世界でもトップクラスの技術ノウハウを誇るアクセルスペース。人工衛星の製造にとどまらず、自ら開発した衛星を自社で運用し、衛星から得られた地球のデータを提供する「AxelGlobe(アクセルグローブ)」という地球観測プラットフォームサービスを2015年から展開している。

さらに宇宙空間でのミッション実現のために衛星の打ち上げを目指す企業を対象に、小型衛星の開発から打ち上げ、運用まで幅広いサービスをオールインワンで提供する「AxelLiner(アクセルライナー)」というサービスを22年に発表。自社のノウハウを活かし、幅広い宇宙ビジネスを展開し、海外にも顧客を増やしている。

社会の役に立つ衛星を 大学発ベンチャーを起業

衛星からの観測画像。画像を分析し、顧客に提供する
衛星からの観測画像。画像を分析し、顧客に提供する

中村氏が研究室の先輩ら2人のメンバーとともに会社を創業したのは今から15年ほど前の2008年にさかのぼる。

東京大学大学院で宇宙工学を専攻していた中村氏は、手のひらサイズの超小型衛星「キューブサット」を学生たちが実際に打ち上げる研究に参画し、人工衛星の魅力に取りつかれた。博士課程の修了が間近に迫った07年、研究室の教授から「大学発ベンチャーを作る助成金を取ってきているが、チームに入らないか」と声をかけられたことが起業のきっかけとなった。

「社会に役に立つ小型衛星を作って、宇宙を社会のインフラとして広げていきたい」。そう考えていた中村氏。その思いにはまる会社が見つけられずにいた。「そうか、だったら自分で作ればいいのか」。教授の言葉にはっとしたという。

まだ、宇宙ビジネスに対する理解が広がっておらず、事業を軌道に乗せるまでは困難の連続だった。「投資家に資金調達をお願いしても門前払いだった」と振り返る。根っからのエンジニア。経営や営業のノウハウを全く持たない中、自社で人工衛星を保有したい会社を探し回った。そんな中、大手気象情報会社からの契約を獲得し、本格的な事業展開につなげることができた。

幅広い宇宙サービス提供 宇宙ビジネスを牽引

スタッフには外国人も多い
スタッフには外国人も多い

これまでに開発し、打ち上げた人工衛星は9機にのぼる。初号機は10キロほどの超小型衛星だったが、少しずつ大型化。15年に事業化したAxelGlobeを提供するために打ち上げた5機の衛星は100キログラム級だ。

「衛星のデータを活用したいが、まだまだ自分で衛星を持つリスクが大きいと感じる」。AxelGlobeは、そういった企業に代わって自らリスクを取って衛星を打ち上げて運用し、観測データを民間に提供し、利用してもらう。

「当社の衛星は、観測幅57キロメートルと広域で撮影できるところが特徴。農業や土地管理、防災、地図作成など地球上の広いエリアを観測したいというニーズを持つ企業などの利用が広がっている」と中村氏。今後も人工衛星コンステレーション(人工衛星群)を増やす予定で、「1日1回、地球上のどこでも観測できるようにすれば、より顧客にニーズにタイムリーに応えられるようになる。まずは10機体制を目指したい」と意欲を示した。

一方、新たにスタートさせたAxelLinerについて、中村氏は「まだ研究・開発の段階だが、24年第1四半期に実証衛星初号機を打ち上げる予定。23年後半以降には、新規の案件を受注できるようにしたい」との見通しを示した。

中村氏によると、100キログラム級小型衛星に対する需要が急拡大し、衛星製造の依頼がひっきりなしに寄せられているという。顧客のニーズに応えるため、2年に1機開発・製造するペースをさらに加速させ、25年以降には変動する受注に応じて年間50機程度を量産できる体制を目指す。ノウハウを持たない顧客に打ち上げから運用にかかわる煩雑な手続きや作業をワンストップで提供できるようにする。実現すれば、さらに多くの人々が宇宙を利活用できる環境が整う。

「われわれのような宇宙ベンチャーが増えているが、せっかく衛星を打ち上げたのに基本的なところでつまずいて、宇宙空間でやりたかったことを実現できなかったということも少なくない。基本はわれわれが信頼性高く運営し、宇宙ベンチャーは目的・ミッションに集中する。そういう需要にも応えたい」と中村氏は語った。

宇宙ビジネスの世界市場規模は40年に100兆円になるとの予測がある。だが、日本は欧米に比べ出遅れているとも指摘される。小型人工衛星ビジネスのパイオニアとして中村氏が牽引し、切り開いた道から宇宙を目指す後進たちが数多く羽ばたけば、日本が世界にキャッチアップする日もそう遠くはない。

企業データ

企業名
株式会社アクセルスペース
Webサイト
設立
2008年8月8日
資本金
80億5028万円 (資本準備金を含む)
従業員数
121人
代表者
中村友哉氏
所在地
東京都中央区日本橋本町3-3-3 Clipニホンバシビル
Tel
03-6262-6105