中小企業応援士に聞く

信頼される人材・製品・会社を創る【オカウレ株式会社(愛知県岡崎市)代表取締役社長・髙井恵氏】

中小機構は令和元年度から中小企業・小規模事業者の活躍や地域の発展に貢献する 全国各地の経営者や支援機関に「中小企業応援士」を委嘱している。どんな事業に取り組んでいるのか、応援士の横顔を紹介する。

2021年11月29日

業務改善に取り組むプロジェクトチーム員と髙井恵社長(後列中央)
業務改善に取り組むプロジェクトチーム員と髙井恵社長(後列中央)

1.事業内容をおしえてください

岡崎市のオカウレ本社社屋
岡崎市のオカウレ本社社屋

1973年に岡崎ウレタン工業として設立し、2001年に現在のオカウレに社名変更した。ウレタンフォームという高分子化学素材を用いて、主に自動車のシートクッションや防音用・安全用パーツなどを加工生産している。社員数は約140人で、このうち男性が約90人、女性が約50人。直近の2021年1月期の売上高は約38億円である。

関連会社として、1983年に静岡県富士市に「岡崎ウレタン」、1985年に群馬県伊勢崎市に「岡崎ウレタン群馬」、1986年に岡崎市大樹寺に「大樹工業」を設立。岡崎ウレタンと岡崎ウレタン群馬は、自動車部品以外にも台所用スポンジなど日用品・生活雑貨を生産している。

一方、オカウレと大樹工業は、自動車部品にほぼ特化した製造加工を行っているのが特徴だ。素材として軟質ウレタンを使用しているが、空気を通す柔らかい特性もあり、工場のロボット化や自動化によって大量生産することが難しい。そのような素材を自動車部品の高い精度、お客様のニーズにあわせて、手作業で加工している。

新型コロナウイルス感染症の影響は大きい。9月は前年同月比で43%、10月は同53%まで売り上げが落ち込んでおり、大変厳しく思っている。このため、9月は7日間、10月は3日間にわたり全社休業・一時帰休を行い、雇用調整助成金を申請した。

2.強みは何でしょう

細かく破砕したウレタン廃材を攪拌し、リサイクルする
細かく破砕したウレタン廃材を攪拌し、リサイクルする

資源のリサイクル化に積極的に取り組み、生産工程で排出される細片や余剰物などを粉砕したものを成形して再生化を行い、販売供給などにより資源の再利用を推進している。環境問題が叫ばれている昨今、このような工程を持っていることは強みと考えている。環境負荷低減に少しでもお役に立てればうれしい。

また、多品種・小ロット・短納期で、顧客の要望に受入から納品まで工程をまたぐ複雑な加工も自社一貫生産で対応できる軟質ウレタン加工の技術を保有している。今後、自動車の電動化・自動運転化が急速に進むだろうが、ウレタン材は自動車部品の中でも残っていく可能性が高い部材だと判断しており、事業の将来性は期待できると思っている。

3.課題はありますか

ウレタンを製品の幅に合わせてカット
ウレタンを製品の幅に合わせてカット

2017年に先代社長(実父)の急逝により会社を引き継いだが、就任当初は大変苦労した。旧態依然の経営体質で利益が確保できなくなっていたほか、お客様のニーズの変化への対応や、核となる人材の育成が遅れていた。管理職は当事者意識が薄く、受身の「指示待ち」の考え方になっていた。そこで外部コンサルタントによる管理職教育を開始。また中小機構のハンズオン支援を受け、会社全体の意識が良い方向に変わってきたと実感している。

人材の確保・育成は引き続き大きな課題だ。製造業はチームプレーが重要で、特に当社は自動化ができない作業が多い。「職人性」が必要な工程は定着と習熟が大事になるので、上司や先輩社員ら「皆が思いやりをもって助け合う」風土を築きたい。どんな時でも常に良い人材を受け入れたいと考えており、ホームページやセミナー、人材マッチングなどを活用して、コロナ禍でも継続して採用活動を行っている。

また今年、初めて女性を管理職に登用した。社会的にも職場での女性の活躍の機運が高まっており、女性自身も能力を発揮して、良い効果が出ている。今後も優秀な女性は積極的に登用していきたい。人を育てることは簡単ではなく、時間もかかる。人材の確保・育成に対しては、今後も投資していくつもりだ。

4.将来をどう展望しますか

主力製品のシートクッション
主力製品のシートクッション

当社は再来年に創立50周年を迎える。それに向けて、オンリーワンの自社開発製品を作っていきたいと考えている。チップ材を使って、新しい事業や販路ができるよう模索していく。例えば日用品や消耗品などについてもアイデアを出していきたい。

また2023年放送予定の大河ドラマで徳川家康公が主人公に決定したのを機に、岡崎商工会議所主催の「おかざき土産品開発プロジェクト」でコラボ開発を進めている。インテリアを作っている会社と共同で、岡崎市のご当地キャラクター「オカザえもん」のゆるキャラマスコット人形にトライしている。

5. 地域や業界とのつながりで、御社が大切にしていることは何ですか

地域とのつながりとして、近隣の障がい者施設と連携して、軽作業を行ってもらっている。また「おかざき世界子ども美術博物館」には長年、子ども向けの工作材料を供給している。最近では、岡崎市から依頼を受けて、小学生に支給しているタブレット端末の保護カバーをスポットで生産するなどして、地域とのかかわりを持っている。

当社は自動車部品の製造を行っており、品質面でお客様から信頼されることが大切だ。社会から信頼されながら、地域に根付いて継続的に企業経営を行っていきたい。

6.応援士としての抱負は

ハンズオン支援事業(専門家継続派遣)によるモノづくり現場の作業効率化や不良低減といった業務改善活動や、事業継続力強化計画(BCP)の策定支援など、当社の経験を踏まえ、広く中小機構の事業を周知していきたい。中小機構のアドバイザーは充実しているし、企業のニーズに合った方を派遣してもらえるので、支援を必要とされている方には、ぜひ活用してほしい。

企業データ

企業名
オカウレ株式会社
Webサイト
設立
1973年
代表者
代表取締役社長 髙井恵氏
所在地
愛知県岡崎市羽栗町字法ケ堂20-10
Tel
0564-48-7300

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