スキー依存から脱却した同社はブランド戦略にも乗り出した。直営店の展開だ。同社の主力商品となった杖は百貨店をはじめ小売店で販売されているが、介護用品として販売されることが多く、ブランドの訴求は難しい。そこで、商品の魅力と価値を顧客に伝え、購買意欲や「シナノ」ブランドへの信頼感を高めようと、2013年に初の直営店「ステッキ工房シナノ有楽町」(東京都千代田区)をJR有楽町駅前の東京交通会館に開設した。「当社の印刷技術などを駆使したファッション性をアピールするのも狙い」(柳澤氏)で、店頭にはオシャレなデザインの杖が数多く陳列されている。
直営店では顧客と直に接し、生の声を聞けるというメリットもある。そして、こうした声は販売戦略に反映されている。「杖を購入する男女比は2:8で圧倒的に女性が多いと思っていた。ところが直営店を開設してみると、男性が3、4割に達していたことが分かった」と柳澤氏。そこでデザインやサイズなど男性向けの杖の割合を増やした。
直営店はその後、吉祥寺店(東京都武蔵野市)、横浜ランドマークプラザ店(横浜市西区)と続き、2025年1月に4店目の名古屋栄店(名古屋市中区)がオープン。「杖は陳列の際に場所を取らず、店の広さは3坪あれば十分。今後も人口規模の大きい政令指定都市をターゲットに、1年に1店舗ずつ増やしていきたい」(柳澤氏)との目標を立てている。
一方、海外への輸出では2011年の韓国を皮切りに、現在は中国や台湾、オーストラリアなど6カ国・地域で展開している。とくに中国や韓国では今後、高齢化が顕著になるとみられており、「早い段階で『シナノ』ブランドの認知度を高め、これから高齢化が進んだときには当社の商品を選んでほしい」と柳澤氏は将来の海外市場を見据えている。