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「大橋」粉砕機で環境に貢献する機械メーカ

この記事の内容

  • 樹木の枝、葉、竹など粉砕し廃棄物を資源化
  • 環境意識高まり粉砕機を開発。国内トップに
  • 自社農園をつくり農産物の生産販売も開始

廃棄物を資源に

刈り込まれた樹木の枝は単なる廃棄物だが、粉砕しチップ状にすれば植物由来の資源として生まれ変わる。粉砕チップはバイオマス燃料としてビニールハウスなどの新エネルギーとなり、堆肥化することで農地の土壌改良に利用できる。

そこで必要となるのが、不要な枝や葉をミクロン単位まで微細化する粉砕機。専用メーカーの大橋は、竹、間伐材、枝、草など多様な発生材に対応する小型から大型まで12機種をそろえ、開発から生産、販売まで一貫体制で行う。

国内粉砕機市場でトップシェアを走り続ける同社の大橋弘幸代表取締役社長は「環境意識の高まりを受け粉砕機を手掛けたが、ここまでの道のりは容易ではなかった」と事業の流れを振り返る。

当初2年は赤字

農機メーカー役員だった初代社長で父親の博保氏とともに1988年に創業。ゴルフ場の省力化のため、芝を根から取り除く専用機を開発し製造販売を開始した。だが、画期的な機械もバブル崩壊とともにゴルフ場が減り、販売は思うように伸びない。苦しい状態が続いた。

その流れを変えたのが、1997年に開催された地球温暖化防止京都会議。日本での環境意識が高まり、普通に行われていた、たき火や野焼きが禁止されるようになる。

その時、顧客から「せん定した樹木を燃やせず困ったとの声を聞き、対応する機械を作ろうと、環境事業へと大きく舵を切った」という。98年には樹木粉砕機を企画開発。小型機、コンベア式の大型粉砕機を相次いで製品化した。ただ「当初2年間は赤字で厳しさが増しただけだった」と語る。

市場規模は年間数千台程度しかない。「ニッチ市場だが、そこに必要としてくれる顧客がいるし、廃棄物を資源化する意義は大きい」と社会貢献につながる事業を誇りとして、事業を軌道に乗せる努力を続けてきた。現在の年間生産台数は、全機種合計で約1000台にのぼる。

市場には欧米からの輸入品もあるが、粉砕してもチップが大きく、枯葉が切れない製品も多い。同社製は、300ミクロンから15ミリメートルまで対応する能力を持つ。技術開発力の高さを裏付けている。

海外体制を構築

環境意識の高い欧州は、魅力的な市場である。欧州の展示会に出展して知り合った販売会社と代理店契約を結び、3年前から海外展開を開始した。昨年12月には中小機構のFS支援事業でベトナムを視察。生産拠点や部材調達など東南アジアへの進出を視野に入れた海外展開を検討中。

海外に向けた準備を進めている中で、中小機構の専門家派遣を受け「契約書作成のアドバイスや相談に対応してもらった」という。新市場の開拓に必要な海外営業では、日本に留学していた外国人を採用。海外在住経験を持つ日本人を含め5人で海外展開の本格化に備えている。

自社農園を持つ

「今後は農業とエネルギー分野への展開に注力したい」と粉砕機から広がる事業展開について大橋社長は力強く語る。2014年に農産物の生産、加工、販売を行うアグリエコ事業部を設置。地元の耕作放棄地を開墾して大橋農園「KAGUYA」として季節野菜の栽培を開始。土壌は隣接する竹林の竹を粉砕した竹堆肥を用いて土壌を改良。栽培した「ボイセンベリー」を飲料用に加工し販売している。

エネルギー分野では、バイオマス燃料に適したチップ粉砕機の製品開発に力を入れていく。また、東南アジアでヤシの実の搾りかす処理が問題化しているが、これも粉砕でバイオマス燃料への変換が進められる展開を考えたいという。

粉砕機は、環境に貢献でき、社会に役立つ製品だ。これを世界へ供給する取り組みが、これから本格化する。

企業データ

企業名
株式会社大橋
Webサイト
設立
1988(昭和63)年5月
従業員数
13人
代表者
大橋弘幸氏
所在地
3,175万円