中小企業NEWS特集記事

「沖縄特産販売」海外実績が国内展開を促進!

この記事の内容

  • ウコン、シークワーサーなど沖縄特産品を通販などで展開
  • 創業時から海外市場を視野に、視察や展示会出展を積極化
  • 海外現法の撤退も経験し、4月からタイで飲食店をオープン
「沖縄で6社目の上場企業を目指す」と語る與那覇社長(本社ビル1階の直営店で)

日本の消費市場は、人口減少を主因として縮小へと向かい始めている。その半面、着実な市場拡大が見込まれるのが、人口増に支えられたアジア諸国など海外市場だ。ここに販路拡大のチャンスが広がる。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)批准に向けたフォローの風が吹く中で、どのような海外展開が有望なのか。成長市場の取り込みに挑戦する中小企業の事例を連載する。

沖縄県那覇市に隣接する豊見城市。ここに本社を置く沖縄特産販売は、沖縄を代表する果物「シークワーサー」を全国に広めたことで知られる。若きエネルギー溢れるチャレンジャー企業だ。現在は、子会社が所有する農場で生産し加工、販売までを手掛け、地域とともに6次産業化を目指す注目すべき存在でもある。

シークワーサーの取扱量は、年間600~1000トンの規模。ブームは去り競合相手はいないが、與那覇仁代表取締役社長は「全国的な認知度はまだまだの状況。根強い需要に対応しながら、しっかりと浸透を図る展開を続けていく」と話す。取扱商品は30種類の自社製品のほか、他の沖縄産品や輸入品など幅広い事業を展開している。

販売は自社店舗での直販や商社、大手スーパー向けのほか、インターネット通販による販売も大きな比率を占める。通販は、1995年ごろ個人事業者時にカタログ販売で届く商品にチラシを入れてもらいウコンを販売していた。シークワーサーの通販は2000年ごろ。ホームページを立ち上げ販売を始めた後のブームで注文に応えられない状態が続いた。その後、法人化し事業拡大への道を歩み始めていく。

與那覇社長が海外進出を考えたのは、親族とともにウコンを売り始めたころに遡る。「20年前から海外への想いがあり、海外市場の視察や展示会に出展し様子を見てきた。ドバイでは諸外国から入る農産品の品質を見て、これなら日本から持ち込んでもやっていけると判断し、現地に会社を設立した」という。だが、輸出手配中に東日本大震災が発生し輸送ができない状態になる。その他の問題も重なったこともありドバイから撤退。初陣は敗退だった。

同時進行で中小機構のF/S(事業化可能性調査)支援事業などを通してマレーシア、インドネシア、タイなどを視察。イスラム法で認められるハラル食材に関する実態を見てビジネスの可能性を確認する。マレーシアで農産物を生産し、ハラル認証を得た工場で加工、すべて無農薬で行う「ハラル&オーガニック」に取り組んでいる。巨大な市場に向け、生産、加工、販売までの6次産業化を行う考えで、ハラル食品を日本や他の国へ輸出していく方針。

また、タイでは、石垣牛の焼肉店を開いたが再開発のため撤退。再チャレンジでバンコク郊外に鮭の食べ放題の店を4月にオープンした。同じビルに焼肉店も開く計画でタイでのリベンジを目指す。また、シンガポールには広島県の企業と合弁で物流会社を設立し、輸出を始めている。中国では通販事業を、スウェーデンではビールメーカーとシークワーサーを使った商品開発を進める。

多様な取り組みで海外市場への展開を行うことについて與那覇社長は「国内は市場ごとに完成された構造があり、入り込むのが大変だった。後発の自分たちは国内ではなく海外に目を向けるべきと考え、積極的に挑んだ結果が評価され、自然に国内での対応も変わってきた。海外にはチャンスがある」と語る。

次の目標は「沖縄で6社目の株式上場。5年以内のIPO(新規公開株)」と言い切る。沖縄の民間企業が上場すれば、次に続く企業が出てくるはず。この流れが沖縄企業を変革していくはず。アジア展開での地理的優位性がある沖縄だが、海外展開をする企業は多くはない。これもIPOが起爆剤になっていくことを期待しているという。

「ほかにもビジネスのアイデアがある。やりたいことがある」と話す與那覇社長の考えは、視野を世界に広げてきたからこそ湧き出たアイデアと思える。チャレンジする姿勢にしか販路拡大も事業発展もない。

企業データ

企業名
沖縄特産販売株式会社
Webサイト
設立
2001年10月
資本金
4500万円
従業員数
77人
代表者
與那覇仁氏
所在地
沖縄県豊見城市字豊崎3-84
Tel
098-850-8953
事業内容
沖縄県の特産物や健康食品の卸・小売・通信販売。シークワーサー果実の加工販売ほか