ベトナムで人を育てる
幼稚園や小学校を建設するというプロジェクトから政府関係者とのコネクションができてきたが、それにより現地に深くかかわらなければ見えてこない問題や課題を知ることとなった。
ベトナム経済は外資に頼り、いかに日本や中国から資金を持って来るかに執着していた。外資で事業をつくるというのが彼らのやり方であり、自分たちで人材を育成し産業基盤をつくるという発想の優先順位は低かった。
ベトナムの経済は依然1次産業が中心で、他は投資のかからないIT関係の事業しかない。例えば、原子力などの技術開発や港湾事業を自分たちで手掛けることはできない。
ベトナム人は勤勉だが短期志向。長期ビジョンを持っている人は少ない。人材も1社にとどまることがなく高い給与を求めて転職をするため、腰を据えてスキルアップを図るということもない。そうなってくると、人が育たずお金をくれるところだけに人が集まるという構図になる。
しかし、ベトナムでも人を育てていかなければならない時代が来るだろう。そこで「ベトナムで人を育てるということに何とか貢献したい」という結論に至ったという。ちょうとその時、政府から「ダナン市で会社をつくってもらえないか」との依頼があった。ホーチミンやハノイにはアメリカやオーストラリアから人材育成支援企業が進出していたが、著名人のセミナーを開催することが主であり、現場レベルでの人材育成には着手できていなかった。
そこであえて中部に会社をつくり、日本から駐在員を派遣し政府関係者の協力も得つつ会社設立が決まった。2009年からリサーチを始め、2010年に事業を開始。当然事業の拠点はダナン市。実際のビジネスは大都市の企業が中心だが、ハノイとホーチミンへはそれぞれ飛行機で1時間くらいであり利便性もよい。当初、なかなか事業として成り立たなかったが、最近になりようやく事業としてのサイクルが回り始めた。
HRインスティテュートの事業の3本柱はベトナム進出支援、トレーニング、コンサルティングだ。ターゲットはすでにベトナムに進出している企業とこれから進出しようと考えている企業。主に前者は大企業で、後者は中小企業だ。大企業には5Sや報・連・相などのコンサルティングや各種トレーニングを行い、中小企業へは進出支援とグローバルリーダー候補者向け研修、進出前の視察ツアーなどを提供している。視察ツアー参加企業には自社オフィスをレンタルし、現地の視察や大学との面談などの機会を提供している。
日系企業へのコンサルティングでは、日本の企業を退職した人たちの協力を得てさまざまな指導を行っている。彼らは50代半ば前後で、会社の都合でやむなく退職せざるを得なくなった人材だ。スキルは持っていても活かす場所がないとの思いが強いため、パワーに溢れている。彼らには1カ月に1週間程度現地に赴き、現場で指導を行ってもらっている。この取組みは日本の新聞やビジネス誌でも取り上げられたことがある。2020年に工業立国を目指しているベトナムはさまざまなノウハウを求めているため、彼らの技術やノウハウが必要とされるのだ。
日系企業においては、駐在員の数が少ないうえにベトナム人の従業員は育っていない。すなわち、マネージメントサイクルが回らない状態となっている。そこで、そのサイクルを定着させるための手法を現地のミドルマネージャーに教育し、駐在員のマネージメントの負担を軽減させるという活動を行っている。
HRIでは韓国でも2010年に会社を設立している。ベトナムで活躍してくれる人材を募集したところ、応募してきたのが現在の韓国オフィスの責任者だった。面接の折、この人となら一緒に仕事ができるというインスピレーションから、韓国でも事業を立ち上げることが決まったという。韓国はコンサルティングだけであるが、順調に成長している。