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「Full Cast Win(福井市)」フリーズドライ食材で躍進

この記事の内容

  • 日本初のフリーズドライフラワー商品化を契機に食材に発展
  • 夫婦で試行錯誤を繰り返し、素材の良さを保てる製造法を開発
  • 中小機構の専門家派遣制度を活用し、ホテルなどの市場を開拓

素材の持つ色や形、風味、成分をしっかりと残していて、見た目にも美しく、水に戻さずともそのまま食べられる─。Full Cast Win(フルキャストウィン)が製造・販売する無添加・無着色のフリーズドライ食品は今、従来のドライフルーツ類とはひと味違うオリジナル性が高い商品として、百貨店の特選品や高級ホテルのウェルカムフルーツといった独特の市場を切り開きつつある。

「最初に生花のフリーズドライ化に取り組んだのが良かった。花はデリケートで、すぐに壊れてしまうので、妻と2人で試行錯誤を繰り返し、今の製法に辿りついた」。大嶋良雄代表取締役社長は、食材などのたんぱく質を破壊せずに水分だけを取り除く技術を確立した経緯を振り返る。

同社は2009年に国内企業で初めてフリーズドライフラワーの商品化に成功している。夫人の大嶋さち専務取締役がフリーズドライフラワーの美しさに魅せられて、フラワー教室を開こうとしたが、契約先から送られてくる輸入品に満足できず、自ら「窯(真空凍結乾燥器)探しから始めて」、同フラワー作りに乗り出したのがきっかけだ。同年秋に千葉で開かれた国際フラワーエキスポ「IFEX」に出展して、話題を集めた。

その後、総合食品スーパー「ハニー」を経営するFull Cast(フルキャスト)の社長でもある良雄氏が大量に仕入れていたチベット産湖塩を活用。塩にフリーズドライフラワーやフルーツ・野菜を混ぜた入浴用、食用のソルト商品へと発展させた。チベット産湖塩は鉄分などのミネラルをたっぷり含んでいるので、花やフルーツに反応して鮮やかな色に染まる。現在、この天然の着色技術は特許申請中だ。これらソルト商品は昨年春から東京のM百貨店のギフト商品に採用されている。

一方で、フルーツ・野菜を塩にまぜないで単体でほしいというニーズも台頭。大手企業では、大阪に進出した外資系ホテルが2013年6月の開業を控え、ウェルカムフルーツとして使いたいと注文してきた。

開業後、「(同社製品の提供のされ方を見るため)社長と2人で宿泊したが、油を使っていないので子供のいる家族にも喜ばれ、扱いやすいと係の人に好評だった」(さち専務)。

ちょうど同年春から、中小機構近畿本部の販路開拓コーディネート事業を活用していたので、取引が見込まれる有望企業を販路開拓コーディネーターと同行訪問する際に、同ホテルへの納入実績をアピール。新たに、大手コーヒーチェーンなどに販路を広げることができ、「大いに自信がついた」と、さち専務は微笑む。

昨年3月に、福井市の支援を受けて国際食品・飲料展「FOODEX JAPAN」に出展して好評を得たことから、西武福井店(福井市)が常設売り場を設置。それまでの卸売中心から小売にも参入した。さらに今年3月の同展で「美食女子グランプリ」の銀賞を受賞して知名度が一段と上がり、東京のT百貨店やS百貨店のギフトにも採用された。

これと並行して、今年3月から中小機構北陸本部の経営実務支援事業を活用。企業としての強み・弱みの把握に始まり、ブランドコンセプトや商品体系の明確化、商品ラベルの刷新など企業体質の強化に取り組んだ。引き続きネット販売用のホームページとパンフレットのブラッシュアップを図るという。

現在はソルト商品とフルーツ・野菜を中心に順調に注文が増えている。だが、生産能力を無闇に増やすつもりはない。「どこにでもある商品にはしたくない。せっかく築いた“特選品”の市場を大事に育てていきたい」(さち専務)と考えるからだ。

企業データ

企業名
Full Cast Win
設立
2007(平成19)年11月
資本金
400万円
従業員数
6人
事業内容
フリーズドライ加工品製造販売