起業のススメ

「ピクスタ株式会社」クリエイターを育てる画像投稿サイト

ピクスタはウェブデザイナーなど向けに、ホームページで写真素材を提供するサービスを展開している。ウェブサイトの「PIXTA」は約1500万点という素材の豊富さで、顧客から支持も高い。素材はプロカメラマンから、アマチュアカメラマンまで幅広く撮影し、投稿されている。投稿者はみな「自身の作品に対するニーズ」があることを知って、PIXTAを通じて、人生の新しいやりがいを見いだしている。

2015年9月、ピクスタは東証マザーズに上場した。役員が感極まって涙を流す中、社長の古俣大介は自分でも驚くほど冷静だった。「経営者人生というマラソンのまだ5%しか走っていない。ここがゴールではない。スタートだ」と気を引き締めた。

3度目の起業

同社が産声を上げたのは2005年8月。古俣は多摩大学在学中学に「インターネットの時代が来る」とコーヒー豆のEC(電子商取引)サイト運営会社を起業、大学卒業後1年間の会社勤めを経て、2003年に健康グッズのEC事業で2度目の起業を行い、3度目の正直だった。古俣の両親も実業家で、父は2度起業を経験している。「両親の横で長い間、仕事を手伝ってきた。だからこそ、いつしか大人になったら自分も起業したいと思うようになったのだろう」と自身を振り返る。

素材提供を始めたのは、ある日掲示板に投稿されている写真愛好家の写真を、古俣がたまたま見たのがきっかけだ。デザイン・印刷業を営んでいた時、ポスター作成で画像が必要となり、画像を探していた時に掲示板の写真に出会った。クオリティの高さに驚いた古俣は「ただ閲覧されるだけではなく、せっかくの良い写真を生かせる方法はないだろうか」と考えた。これが出発点だ。

当時、ネットワークを使って印刷物などに画像などの素材を提供するサービスには、先行企業がいた。だがそのサービスは使用料が高いし、市販の素材集CDでは写真点数が少ない。一部のプロ写真家に絞ったサイトだった。ちょうどいいサービスが見つからなかった。「同じ悩みを持つ人は多いはず」と起業家精神が働いた。

古俣はこう考えた。「素晴らしい才能を持つ人は世の中にたくさんいるが、決してプロとは限らない。でもほとんどの才能が世の中に生かされていない。であればインターネットを最大限活用し、プロ・アマ問わずどんな立場の人でも才能を発揮できるフラットな世界をつくろう」。

窮地に追い込まれた、その時…

こうして2006年にサービス開始したが、最初は苦労の連続だった。写真投稿数は順調に伸びるものの、ユーザーも出資者もなかなか見つからない。1件1件足で回り、話ができるのは20件に1件だった。2008年9月のリーマン・ショック以降はそれもままならなくなった。やむを得ず役員報酬、従業員給与と削減していった。投稿数だけは増えていたが、経営は窮地に追い込まれた。

そこで奇跡が起きる。2009年3月に、ユーザー企業が決算月の追い込み注文を連発してくれたのだ。プロ、アマを問わず、フラットな土俵で写真の枚数をそろえていたのが勝因だった。ライバルのサイトと比べて、PIXTAにはニーズに応えられるだけの写真群がそろっていて、売り上げが前月比で倍増した。以降、評判が高まり安定して売り上げられるようになった。「私は元来飽きっぽい性格。でも、このビジネスにはずっと続けたいと思える何かがあった。諦めずに続けてきて良かった」と話す。

目標はアジアそして世界

2016年1月、同社は前年についで2度目となる「クリエイターズアワード」を開催した。この業態はプラットフォーム事業であり、クリエーターがあって初めて成功するものだ。これらの感謝の意味と、クリエーター同士の交流や情報提供をすすめ、ますます良質な写真が集まるようにとの思いがこもっている。ピクスタをはじめて10年間の間に、このサイトで活躍することでプロデビューした写真家もでてきた。創業の思いが結実し、上場と言う形で社会にも認められた。

2015年7月にはPIXTAの英語サイトを、同年12月には中国語サイトも開設した。
「5年後の目標はアジアで最も支持されるサイトになること」と古俣。世界レベルでのサービスを視野に入れてまい進する。

(敬称略)

起業を目指す後輩に送るメッセージ

起業も含めて、若いときに大事なことは「人生のテーマ選び」です。それを早く見つけることができれば、それだけ充実した人生になります。起業することだけを考えるのではなく、とにかくしっかり学び、行動し、考え抜くことが大切です。

掲載日:2016年3月25日

企業データ

企業名
ピクスタ株式会社
Webサイト
設立
2005年8月
法人番号
1011001067555
代表者
古俣大介
所在地
東京都渋谷区渋谷3-11-11
事業内容
デジタル素材のオンラインマーケットプレイス「PIXTA」の運営