頑張れシニアベンチャー

赤字会社の社長に就任!「竹資源開発」

起業して自分らしい仕事をしたいと考えるシニアにエールを送るコーナーです。
竹フローリングというローテク事業にひかれた田中会長。それは竹こそが地球にやさしい資源だからだった。

株式会社竹資源開発 取締役会長 田中一男氏

株式会社竹資源開発 取締役会長
田中一男
1938年福岡生まれ。1999年に日本エアシステムを退職後、現在の会社の前身会社を引き取り、竹フローリングの販売施工を開始。現在では業界内の指導的存在として、東奔西走の毎日である。

森林を救え!竹は無尽蔵のエコ資源

——田中会長は、もともとはパイロットと伺いました。定年後に会社を経営されるきっかけとはなんだったのですか?

1999年に38年間勤めていたパイロット(日本エアライン勤務)を定年で退職したわけですが、その段階で不動産のローンがかなり残ってしまったのですね。これはまずい、何かしなくてはと思い、いくつかの異業種交流会に参加しました。
ときはITバブルで、IT関連で起業をめざす人たちが多く出入りしていたのですが、私などはITなんてまったく歯が立たない。それでも時間だけはあったので、起業のサポートを手伝うようになりました。ここで経営の基本を一から学べたわけですが、そのうち竹フローリングの販売施工という案件がもち込まれてきました。このきわめてローテクな事業に目が引かれたわけです。

——竹フローリングにひかれた理由とは何でしょう?

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なによりも地球の環境にやさしかったことですね。パイロットをしながらいつも感じていたのは、ヨーロッパからアフリカ、中近東などの上空を飛ぶと、広大な土地の大部分が赤茶けた荒野や砂漠が広がっていること。これが本当の地球の姿だと思っていました。
また大型ジェット機は1万メートルの上空を大量の二酸化炭素を排出しながら飛行するわけですが、その二酸化炭素を浄化するためには当然森林が必要になります。ところが現在大量の森林伐採が問題となっている。しかもいまから植樹をしても50年から60年というスパンでしか森林は回復しない。一方で竹は3年で成長し、5年もすると建材として木材に劣らなくなる。竹を使えば森林伐採が減るわけですから、オーナーがいう、竹は無尽蔵のエコ資源という言葉も納得ができました。
そこで投資をしたのですが、学者肌のオーナーでは、赤字ばかりが膨らんでしまってどうも経営がうまくない。ついには自分でやらせてくれと、資金をつぎ込んで株を引き取り、代表取締役に就任したわけです。

——赤字の会社を引き取ったわけですね。

これから絶対必要となる事業だという思いだけでした。商社勤務で中国に在住していた息子を呼び戻して、一緒に事業を開始しました(現在はご子息が代表取締役社長となっている)。もちろん赤字からのスタートです。しかも竹は無垢材なので、湿度や温度によって伸縮するので施工がむずかしく、商品としての利幅も少ないために建築業者がなかなか取り扱わない。この時期が経営的にはいちばんつらかったです。ただ時代が私たちを後押ししてくれました。

素人だから生まれた新商品「置く竹」

——追い風が吹いたわけですか?

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そうです。まずひとつは、竹のフローリング材は、コストを下げるために中国で生産、加工し輸入をしているのですが、その中国が国策として竹資源の有効活用に取り組みはじめたのです。農村部にいる国民の雇用創出、収入源のひとつとして考えたのですね。そのおかげで安定して均一な質の商品を輸入できるようになりました。
もうひとつの追い風は、2003年の建築基準法の改正です。シックハウス症候群が大きな問題となり、家を買う人にとって健康や安全がキーワードとなりました。行政としても、シックハウスの原因となるホルムアルデヒドなどについて使用の規制を厳しくしたのですが、竹フローリングは規制対象外なために無制限に使用ができるわけです。アレルギーの発症の原因とされるホームダスト(家ダニの死骸やフン)も、竹のフローリングでは発生しません。だから現在では小学校などでも竹フローリングが使われるようになってきていますね。

——新しい商品も開発されたとか。

私が建築の素人だから発想できたのですが、現在は登録商標した「置く竹」という新商品も開発しました。いままではフローリング材は、釘や接着剤で施工するのが当たり前だったのですが、これでは転居やリフォームしたときに、廃材となってしまいます。
そこで思いついたのが畳です。日本古来の床材である畳は、接着剤などでも固定しないで十分に生活ができているわけで、竹フォローリングも同じようにすればいい。そうして生まれたのが「置く竹」でした。接着剤、釘は一切使わず、はめ込むだけ。日曜大工の延長でできますから施工費もかからず、コストも安くなる。転居するときも、そのまま持っていけるから廃材にもならず、まさに一石二鳥にも、三鳥にもなるわけです。

——今後の展望をどのように思い描いておられますか?

現在ではオフィス用に使えるフローリング材を開発しましたが、私としては、自分だけが儲かればいいという発想はさらさらないですね。新商品も、ノウハウも積極的に発信して業界に、社会に竹フローリングを知らしめていきたい。それ自体が地球環境に役立つことですし、まさに地球にやさしく、人にやさしいのが竹フローリングですから。

掲載日:2008年9月22日