すると理研の研究所で大勢の一流と言われる研究者がスポイトを使って手作業で試験管に試薬を入れている姿を目の当たりにする。
「私が自動生成装置を作りましょう」
大手企業がこの装置の開発に6年から7年の歳月を費やしながら、結局は開発できずに次々に事業から撤退していく中、永島は2001年2月に話を聞いて、2ヵ月後の4月には設計図面を作成して理研に届ける離れ業をやってのけた。
「この通りだ」。図面をもった研究者の手が微かに震えていた姿が、今でも永島の眼に焼きついて離れないという。
こうして世界初の「たんぱく質自動結晶化観察ロボットシステム」は、その年の9月に完成した。この装置は、これまで手作業で数ヵ月要した結晶生成期間が2日から2週間に短縮された、結晶化や結晶観察、顕微鏡撮影などの一連の作業を無人で行えるため、膨大なデータを蓄積できるといった優れた特徴をもつ。
だからといって、理研から注文を受けて開発した装置ではないため、売れる宛てもない。年間売り上げ約4億円規模の中小企業が5,000万円を投資するビジネスとしてはあまりにも無謀に見えた。当然、周囲の反対意見も多かったという。永島はその理由について、こうアッサリと言ってのける。
うちは元々、ハイリスク・ハイリターンの会社なんです。」
だが、永島には「試料調製機」という安定収入の確保できるコア製品があるからこそ、未知の分野へチャレンジする勇気が生まれたと言えなくもなかった。