発売当時の「カルピス」の価格は400ml入り大びんで1円60銭、180ml入り小びんで80銭だった。大正末期のラムネ(170ml)8銭やサイダー(360 ml)22銭、牛乳(180ml)10銭に比べると高価な飲みものと思われた。が、「カルピス」は原液であるため薄めて飲むことを考えればそれほど高価ではない。薄めて飲む経済的な飲料であることを訴求するため広告を打った。当初の広告は経済性を訴えるものだったが、やがてそれは文化性とエンターテイメント性をともなったものへと変化していく。
その象徴的な広告が、「初恋の味」のキャッチフレーズだ。なんと20(大正11)年にこの広告を新聞に掲載している。大正浪漫という自由闊達な雰囲気の時代とはいえ、かなり大胆な発想であり、刺激的なキャッチフレーズといえた。
この先進性はのちの広告にも連綿と受け継がれていく。その1つに「空中マラソン競走」とタイトルを書いた広告がある(1922年)。空中マラソン?-みなさんは何を想像するだろうか。これは、動物愛護協会とのタイアップで伝書鳩レースを主催した際の広告だ。富士山頂から東京・日比谷公園まで100羽の伝書鳩を飛ばし、所要時間を当てるという懸賞クイズの広告で、このイベントと広告は大好評を博したという。
「カルピス」の広告の先進性は制作者の名前にもうかがえる。岡本一平(漫画家・故岡本太郎の父)、東郷青児(洋画家)、西条八十(詩人)などそうそうたる芸術家、文化人が「カルピス」の広告に携わっていた。まさに三島海雲の交友の広さを物語っている。