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「BASE」起業目的は決済の簡易化

この記事の内容

  • スマホ増加などを背景に日本のEC市場は伸びる。越境ECはチャレンジする価値がある
  • ECを無料で誰でも気軽に使えるツールにすることがBASEのミッション
  • 月間売上高10万円に壁がある。低価格に走らず価値を認めてもらうことが大事

EC(電子商取引)市場の拡大が続いている。経済産業省が発表した2016年度「電子商取引による市場調査」によると、国内EC(BtoC)の市場規模は15・1兆円を超え右肩上がり。その半面、ネットショップを始めるには技術面に加え出店費用、決済手数料の高さから二の足を踏む小規模事業者が少なくない。この課題解消に向けた事業を展開するBASEの鶴岡裕太・代表取締役にEC分野での起業家支援の取り組みなどを聞いた。

——拡大するEC市場の今後をどのように見ていますか

「商取引市場に対するEC市場の規模割合であるEC化率(BtoC)は、昨年度5・4%と前年比増を続けています。この傾向に変化の兆しはなく、今後、若干の伸び率低下はあっても国内EC市場の拡大は続くと見ています。その背景として、スマートフォンユーザーの増加、インターネット知識の普及、ネットショップの扱い商品の増勢のほか、ネットでしか買えない商品も増えていることが挙げられます。すでに10%を超えた中国のEC化率や欧米の状況を見ても、日本のEC市場はさらに伸びるのは間違いないでしょう」

「一方、越境ECは、言語と市場・商慣習の違い、為替、関税など国内ECよりハードルが高いだけでなく、市場調査、分析などでニーズを把握しなくては売れません。ただ、国内市場の縮小傾向に比べ、旺盛な消費需要など魅力ある市場であることは間違いなく、チャレンジする価値があると思います。BASEは越境ECへのサポートも強化する方針で、ハードルを下げることに取り組んでいます」

——提供するサービスの強みは

「安心な決済方法をともなう多彩なデザインテンプレートを活用し、自分のネットショップを簡単に作成できることです。売り上げがなければ料金は発生しないので、今ある商品をリスクなくネットで販売することができます」

「EC展開は初期費用と一定の知識が必要なのが常識だといわれ続けています。大分市で婦人服を販売する母親が、大手のECサービスでショップ開設を目指しましたが、できなかった。これがきっかけとなり、ECを無料で誰でも気軽に使えるツールにすることを目標に事業化したのがBASEです。『価値の交換をよりシンプルにし、世界中の人々が最適な経済活動を行えるようにする』これが私たちのミッションであり、その考え方から開発したサービスそのものが強みだと自負しています」

——その主軸となるサービスは

「ネットショップ作成とショッピングアプリのECプラットホーム『BASE』を中心にオンライン決済サービス『PAY・JP』、ID型決済サービス『PAY ID』の3事業を柱にしています。EC運営に必要なインフラサービスを網羅しているので、費用、技術などの理由でEC展開を諦めていた人も気軽にネットショップを始められます。現在の加盟店舗数は毎月1万店増えており40万店を超えました。特別な宣伝活動は行わず、ほとんどが利用者の口コミです。100万店までを想定しています」

——EC展開を検討する中小企業・個人事業者などへアドバイスをお願いします

「月間売上高10万円が壁です。ここを超えるまでが一番難しいと思います。商品に自信を持ち、低価格に走らずに価値を認めてもらう理由付けに取り組んでほしいですね。次にブランディングと商品の見せ方です。安定的に月100万円を超えるショップになれるまでのサポートがBASEのサービスコンセプトです。目指すのは、世の中の仕組みを変えることではなく、変化する技術・サービスに誰もが携われる最適化したシステムを提供していくことです」

企業データ

企業名
BASE
Webサイト
設立
2012(平成24)年12月
従業員数
80人
代表者
鶴岡裕太氏
所在地
東京都渋谷区道玄坂2-11-1
Tel
03・6416・5450
事業内容
Webサービス企画・開発・運営

プロフィール

鶴岡裕太 (つるおか ゆうた)

大学在学中からインターネットサービスに関わり、ネットショップ決済を簡易化するBASEを22歳で設立。利用店舗は40万店を超える。米経済誌フォーブスの2016年「アジアを代表する30歳未満」小売・EC部門に選出。27歳。大分市出身。