中小企業NEWS特集記事

「太平工材(姫路市)」人材育成の現場から

この記事の内容

  • 離職率の高さを社員との一体感で改善も幹部社員が育っていないことに悩む
  • 関西校の研修に毎年15人程度を派遣し「社員レベルが確実に向上した」
  • 新工場完成と体系化した知識持つ社員でシェア向上にまい進
「仕事を楽しみながら、業績も存在価値も上げたい」と話す平位稔之・代表取締役

「来年3月には姫路市内に新工場が完成します。これでさらに営業効率を高めたい」—。ステンレス・アルミニウム専門商社、太平工材の平位稔之代表取締役は、こう意気込む。

新工場は敷地面積9000平方メートル、建屋面積5000平方メートル。500平方メートルの事務棟も建て、本社も移転する。総投資額は約15億円だ。素材の一次加工も行う設備も増強し、3カ所ある加工工場のうち設備が老朽化した1工場をここに集約。「取引が小口化しているなかでも、新工場の完成で利益水準が高まる」(平位氏)という。

新工場には託児ルームや食堂などの福利厚生面にも気を使い、「優秀な人材を集め営業力も強化する」。平位氏の社員に対する思いは、社長になってから一貫している。

義父が創業した同社の3代目として社長に就任したのは2007年。それまで「顧客密着」「即納」というポリシーを貫き、大手企業を含め600社の取引先を持つなど一定の地位を築いていた。

半面、ユーザー本位のため業務はハードで「離職率も高かった」。そこで、平位氏は社員とのコミュニケーションを重視する。毎月の給料日には全社員にメッセージカードを付けたり、読書感想発表会、会社負担の社員旅行、忘年会、ユニークなのは「お笑い研修」というのもある。これらイベントスケジュールを年度初めに発表するという徹底ぶり。しかも「必ず全員参加」(同)だ。

最初は冷ややかな社員もいたというが、続けるうちに「社員の一体感が生まれ、チームワークが良くなった。何より離職率が大幅に減った」。

平位氏が社長に就任して、もう一つの悩みがあった。幹部社員が育っていないことだ。そんな時、中小企業大学校関西校の案内を見て社員を派遣しようと即決。自身も含め、2012年から毎年15人程度を派遣し、その数は延べ100人近くに上る。研修後はリポート提出のほか、他のイベントなどでも成果を発表。「自主性が向上し、知識を共有するなど社員のレベルは確実に上がっており、今後もずっと続けたい」という。

平位氏は昨年、社長業を続けながら中小企業診断士の資格を取得したという努力家。今後はその資格を生かして「相談に乗ることなどにより、取引先の経営も向上してほしい」と願う。

顧客密着の姿勢から、「配送も自社でやっている。非効率な面もあるが、直接、取引先の現場に入って営業できる」のがその理由。「播磨地区を中心に業界シェアは4割程度。それを50~60%にしたい」という平位氏は、新工場完成と社内一体で、シェア向上に向けてアクセルを踏み込む。

山中和彦・関西校校長のコメント

企業、大学に利用呼びかけ、プレゼンス高める

関西校は、中小企業大学校の地方展開の1校目で、35年の歴史を持ちます。この間、1万社から約5万人の受講者がいます。今年度は50種近い研修を実施しますが、なかでも毎年実施している5日間×12カ月の「経営管理者研修」は東京校と当校だけの宿泊型で、課題解決と演習を通じて学ぶほか、参加者同士のコミュニケーションも図れる人気コースとなっています。

現在、人材育成や事業承継、販路開拓、ウェブ活用など経営環境の変化を受け、ニーズに合った新しい研修企画が求められています。このため、近畿本部との連携を一層強め情報共有を進めます。近畿本部は専門家派遣などで現場のニーズを分かっているからです。例えば、近畿本部の経営支援と研修を融合することも考えています。ウェブ活用による人材育成支援も進めます。

受講生を増やすには、関西校の認知度向上が必要です。職員やアドバイザーが企業や工業団地、支援機関などを回り、研修や大学校施設利用の案内などを配布。企業だけでなく、大学などにも利用を呼びかけています。今年度から始まった「まちなか大学校」は大阪、京都、神戸で7講座を予定しています。

地元・福崎町との連携も深めており、2月と3月には町商工会と連携して経営者らを集めた「経営サロン」を開き、地元の課題解決のヒントをつかんでいただく機会としました。これらさまざまな活動を通じて、関西校のプレゼンスをさらに高めていきます。

企業データ

企業名
太平工材株式会社
資本金
7000万円
従業員数
70人
代表者
平位稔之氏
所在地
姫路市飾磨区今在家1113番地23
Tel
079-233-0921
事業内容
ステンレス・アルミニウム等非鉄金属の加工・販売
創業
1976(昭和51)年3月