09年8月、桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」が発売された。
瓶詰商品のため中身が見える。具材がたくさん入っている。ラー油なので辛いだろう。が、パッケージをみると“少し辛い”と書いてある。辛いのが苦手な人でも大丈夫かな?食べてみる。フライドガーリックやフライドオニオンが香ばしくて美味。サクサクッとした食感もいい。なるほど、確かにそんなに辛くない。でも、少し辛いからやみつきになりそう——。
こんな食味が平成ミセスや独身サラリーマンを魅了し、その人気を広げていった。
また、発売直後に爆発的ヒットへとつなげたのがウェブの活用だった。最初にサンプリングサイトや食品口コミサイトで情報を流し、サイト上で口コミが広がるとつぎにテレビCMを投入して大ブレークを招いた。このウェブサイトの活用は大きかった。ブログやSNSで消費者がつぎつぎと情報発信した。
「滅茶苦茶はまります。おかずいりません」
「炊きたてのご飯にのっけてたべてみると...なんだろ?コノ美味さ!」
「最近、桃屋の辛そうで辛くない少し辛いラー油のことしか考えられない...」
いまも昔も口コミほど効果的な宣伝はない。
さらに、ブロガーたちは「冷ややっこにのせる」「チャーハンにまぜる」「納豆にまぜる」など自ら試したレシピも発信した。
その結果、「辛そうで辛くない少し辛いラー油」は発売3カ月後に「ラー油市場のシェア65.5%」(09年11月2日付日経MJ)と報じられるまでに急伸し、その後品薄状態に陥った。
現在では競合商品が100種以上あるものの、「辛そうで辛くない少し辛いラー油」の売行きは群を抜いている。いまでもスーパーなどの店頭では品が薄く、陳列棚で目にする機会が少ない。また、たまに商品が入荷しても即座に売り切れてしまう。「棚効率が悪く、ほかの商品で棚を埋めたいのですが、いつもお客さんに桃屋のラー油はないのと言われて困っているんです」とは、某大手スーパーの売場主任の嘆きだ。