頑張れシニアベンチャー

予定通り55歳で辞めて、環境ビジネスで起業「エコビズ」

起業して自分らしい仕事をしたいと考えるシニアにエールを送るコーナーです。
澤地さんはサラリーマンになった時から「定年後は自分で何かする」と決めていました。予定通り55歳で辞めて直後に起業。環境配慮の観点から考案した梱包用荷崩れ防止ベルトが、原油高騰、エコの追い風を受け、大躍進中です。

エコビズ株式会社代表取締役 澤地憲一氏

エコビズ株式会社 代表取締役
澤地憲一(さわち・けんいち)
昭和19年生まれ。大学卒業後、建設会社、食品メーカーなどの勤務を経て55歳で定年退職。直後の平成11年11月、インキュベーション施設の運営管理を行う会社を設立。その後新しい発想による梱包用荷崩れ防止ベルトを考案し、同18年8月、エコビズ株式会社を設立、代表取締役に就任。

企業が抱える環境対策に関する課題を解決

——御社の事業内容をお聞かせください。

ポリエステルが原料の「グリーンエコベルト」と「エコビズベルト」という2種類の梱包用荷崩れ防止ベルトで企業の物流改善を応援しています。「グリーンエコベルト」は約1,000回の使用が可能でコストが従来の10分の1で済み、「エコビズベルト」は耐用期間を超えたら回収・再生して再び繊維製品にリサイクルできるほか、ベルトに搭載した※RFIDで在庫やベルトの使用回数を管理し、荷物や耐用期間の識別を容易にしているのが大きな特徴です。

※RFID(Radio Frequency IDentification)...微小な無線チップにより人や物を識別・管理する仕組み。耐環境性に優れた数センチ程度のタグにデータを記憶し、直接接触することなく電波や電磁波で読み取り機と交信する。バーコードに代わる商品識別・管理技術として生産・在庫・物流管理等で使用が広がっている。

——そのような荷崩れ防止ベルトの開発に着眼されたのはどうしてですか。

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通常、物流現場ではパレット輸送時の荷崩れ防止策として家庭用ラップを大きくしたようなストレッチフィルムを多用しているのですが、1回しか使用できないため産業廃棄物となり、焼却処分により大量のCO2や有害ガスが発生します。そこで企業が抱えるこれら環境面とゴミ処理費用および輸送費用に関する大きな課題を何とか解決したいと思ったのです。

「グリーンエコベルト」は売り切り方式ですが、「エコビズベルト」はベルト一式が8,000円から1万円ほどもするので、大口利用者である大手企業にとっては注文時のイニシャルコストが莫大な金額になります。そこ——販売方法も工夫されていますね。リース方式にして経済的負担を軽くしました。いずれも結束力に優れているのはもちろん、扱いが簡単で1人でも装着・取り外し・収納ができます。

「グリーンエコベルト」は売り切り方式ですが、「エコビズベルト」はベルト一式が8,000円から1万円ほどもするので、大口利用者である大手企業にとっては注文時のイニシャルコストが莫大な金額になります。そこでリース方式にして経済的負担を軽くしました。いずれも結束力に優れているのはもちろん、扱いが簡単で1人でも装着・取り外し・収納ができます。

——導入企業にとってどのようなメリットがありますか。

「エコビズベルト」は製造時に排出されるCO2相当分を相殺できるよう排出権を商品に付ける(※カーボンオフセット)とともに、ベルトが耐用期間内に輸送される距離を定義し、排出されるベルト分のCO2量を相殺できる排出権も付けています。これにより導入企業様の環境負荷の低減とコスト削減に大きく貢献できると自負しています。

※カーボンオフセット...途上国などにおいて植林や風力発電所の建設等で実現したCO2の排出削減量(=排出権)を購入することで自らの排出量の全部または一部を相殺する、「京都議定書」で認められた地球温暖化を抑制する仕組み。

「精一杯一生働いて人間は終わるべきだ」

——そもそも澤地さんが起業されたのはどういうきっかけからですか。

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僕は自分の人生設計を描くのが小さい頃からの癖なんです。昭和42年に大学を卒業して建設会社に入社したとき、当時は55歳定年だったので「56歳になったら自分で何かする」と決めていました。退職前は食品メーカーの子会社の社長だったので居続けることはできましたが、55歳で辞めて、入社時の予定通り、自分の会社を立ち上げました。

——退職時にはすでに次の事業の青写真ができていたのですか。

いえ、その時はまだ何をするか決めていませんでした。ただ「人の役に立ちたい、地球の役に立ちたい」と思っていただけです。いい年で起業するわけですから、単なる金儲けだけを狙った事業はやりたくないというのが基本コンセプトです。そして平成11年にインキュベーション施設を考案し、運営管理する会社を立ち上げました。エコビズは2社目です。

——環境ビジネスはまったく門外漢だったと伺いましたが。

ひとつ目の会社を運営する中、ある企業から梱包用荷崩れ防止材の環境ビジネスを一緒にやらないかと打診され、乗るつもりで新しい会社を立ち上げたら突然梯子をはずされました。悔しくて「素人でも負けないようなものを自分で開発してやるぞ!」と。怒りのパワーが壁を乗り越える大きなエネルギーになりました(笑)。

——新商品の企画開発にはいろいろご苦労がおありだったのでしょうね。

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開発にあたって一番こだわったのは、特許取得できるような商品でないとダメだということでした。特許申請されている6,000件、最終的には2万件を徹底的に調べ、整理し、それに引っかからないものということでベルトの留め方に注目しました。平成18年春から「グリーンエコベルト」の開発にかかり約半年で完成、年末には特許申請しました。「エコビズベルト」は昨春(07年)から開発にかかり、今春できたばかりなので、いよいよこれから販売にかかるところです。

——一番たいへんだったのはどんなことでしたか。

弊社の知名度が低いことに加えて、当時は物流関係者の環境への意識も今ほど高くなかったので営業に行っても門前払い。やっと実際に試してもらうところまでこぎつけても今度は変化を嫌う現場が導入に反対するという具合で、何度も営業のために足を運びました。それがここへ来て石油価格の急騰、地球温暖化、※カーボン・フットプリントなどすべてが追い風になり、今では一部上場企業を中心に取引先も50社ぐらいに拡がりました。

※カーボン・フットプリント...1つの商品における原料の採掘や栽培、製造、加工、包装、輸送、および購買、消費されたあとの廃棄にいたるまでの、それぞれの段階で排出された温暖化ガスであるCO2の総合計を重量で表わしたもの。この考え方は、自らが排出したCO2を相殺するカーボンオフセットの目安となるもので、先進国の企業では商品にカーボン・フットプリントのラベルを表示し、温暖化問題への取り組みをアピールするツールとして活用する動きがある。

——最後に今後の目標を教えてください。

当初は「人や地球のお役に立てればいいな」という程度で商売になることをあまり期待せず始めたのですが、これらの取り組みが経済産業省の平成19年度グリーン・サービサイジング事業に採択されたこともものすごい追い風になりました。目標は特にありませんが、あえてポリシーを語るなら「精一杯一生働いて人間は終わるべきだ」というところですね。

掲載日:2008年8月19日