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「オムニヨシダ(大阪市中央区)」F/S、展示会など公的支援を活用

この記事の内容

  • 国内メーカーのグローバル展開に沿い25年前に海外へ進出
  • 中小機構の海外市場F/S(実現可能性調査)など活用し現地で顧客開拓
  • 今後も公的機関の支援を受けアジアに続きアフリカでの事業も視野に入れている
自社製品の照明器具交換台車「セフティカート」の前に立つ吉田氏

物流を効率化するマテハン機器メーカーのオムニヨシダが海外に進出したのは、今から25年前のこと。「大事な顧客のグローバル展開に付いていったのが始まり」(吉田慎太郎・常務営業本部長)で、以後、数多くの納入実績を積み重ねてきた。中小機構の海外事業支援策を活用するなど公的機関のバックアップも生かし、アジア各国の物流整備に大いに貢献している。

同社の主力製品は、「オムニリフター」と名付けた垂直自動搬送機。オムニリフターを中核に、物流センター内の流れをスムーズにする各種マテハン機器を製造販売し、〝オムニ(総合)搬送システムのエキスパート集団〟を標榜している。

同社の顧客は、メーカー、物流、倉庫、船舶などで、ほとんどが大手企業という。「パソコンが携帯電話やスマートフォンへ、プラズマディスプレーが液晶や有機EL(エレクトロルミネッセンス)へと、産業の移り変わりに対応するのが当社の仕事となっている」(吉田常務)。

25年前の海外進出も、国内メーカーのグローバル展開という大きな波に乗ったものだ。中国、台湾、シンガポール、タイ、ベトナム、インドネシア…。日系企業のアジア進出に合わせて、同社のマテハン機器も各国・地域に広まっていく。一方で、日系以外の現地企業の需要も開拓していった。

そんな顧客開拓の一助となったのが、中小機構の海外市場F/S(実現可能性調査)など公的機関の支援策だ。タイ進出時にF/Sを実施し、その後の展示会出展により複数の顧客を獲得する。

ところで、同社のビジネスモデルは取扱品がマテハン機器という「物流システム/センターの構成要素」だけに、据え付け工事が欠かせない。メンテナンスやアフターフォローの体制づくりも必須だ。そうした工事やメンテナンスは各国・地域のローカル企業に委ねるが、高品質が売り物の同社製品には、工事やメンテナンスにも高水準のスキルが要求される。

吉田常務は「ねじ一本締めるのでも、単に回すだけと壊れないように考えながら作業するのでは、出来上がりが大きく違ってくる」と工事の重要性を説明する。

重要な工事作業の質を高めるため、同社は各国・地域の作業現場を担う中核メンバーに日本の工事現場を体験してもらうOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)などの教育訓練を施している。ただ、来日に伴うコストの問題や、ゼネコンなどの作業現場に外国籍の人を送る際の手続きの煩雑さなどから、十分な教育訓練体制の構築には至っていないのが実情だ。そのため、「将来的には海外の現地にスクールをつくりたい」(同)としている。

昭和4(1929)年、吉田常務の祖父が創業した同社を、吉田常務自身は「手押し台車の時代から、安全、正確にモノを運ぶことにこだわってきた会社」と評する。そのこだわりが生み出した技術・ノウハウの数々は各製品に反映され、主力の垂直搬送機はトップシェアを堅持している。

「更新需要もあり国内市場はまだ伸びる」(同)とみて、現在、グループ全体で約50億円の売上高を中期的に80億~100億円へと増大させる青写真を描いている。当然、海外市場の拡大にも大きな期待を寄せている。直近の海外比率は、為替の変動もあって、ピーク時(18%)を大きく下回る10%ほどの水準にとどまっている。この比率がどこまで上がるかは定かではないが、金額ベースでは右肩上がりの推移が必至だろう。

海外展開に関して、吉田常務は「販路開拓にしても、提携相手のローカル企業の発掘にしても、われわれ中小企業単独では難しいので、中小機構やジェトロ(日本貿易振興機構)、JICA(国際協力機構)のみなさんに引き続き応援していただきたい」と要請する。

その上で、「発展途上国の物流システムを構築することは、各国の経済発展に直結し、社会的貢献度が高い。誇りを持って携われる仕事だ」と目を輝かせ、アジアに続いて、アフリカでの事業も視野に入れている。

企業データ

企業名
オムニヨシダ株式会社
Webサイト
設立
1929年(法人化=1966年)
従業員数
160人(グループ企業含む)
代表者
藤田徳市氏
所在地
大阪市中央区南本町2-3-21
事業内容
垂直搬送機をはじめとするマテハン機器の製造販売