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「まくらのキタムラ(北名古屋市)」米中向け体制構築へ

この記事の内容

  • 大正12年、生地販売で創業。シーツ、枕の生産へと事業を広げる
  • 低反発枕がブームとなりOEMで枕生産を本格化、その後、自社ブランドへの展開を開始
  • 4代目北村氏は、国内ECを開始。越境ECは市場性ある米中に向けた展開を積極化する
「当社の枕で世界を眠らせたい」と語る北村社長(本社工場で)

どのような人でも、人生の3分の1は寝ている。夜間の快適な睡眠は、昼間の快適な行動に比例し、気持ち良く寝ることは、人生を豊かにする。生きるために快眠ほど重要なことはない。この考え方で企画した枕を日本から世界中の人々に届けようとする事業を愛知県北名古屋市の老舗企業が始めた。

「元気な『おはよう!』を創る」を経営理念とする「まくらのキタムラ」は、快眠と気持ちの良い目覚めの提供を目指し、機能的な枕を企画・製造・販売する枕専業メーカー。「海外15カ国以上で枕を見て来ましたが、クッション性を重視した枕が大半でした。当社が開発するような寝るためのツールという概念がない。そこに市場性が十分にあると感じています」と代表取締役社長の北村圭介氏(38)は、海外市場の有望さを語る。

同社は1923(大12)年に名古屋市の繊維街で生地販売として創業。その後、寝具用カバーの製造を始め順調に事業を拡大したが、中国への生産シフトで生産量は激減する。「もう40年以上前で2代目の時代。そのころ枕の製造を始めシーツと両輪でしのぐ時期だったと聞いています。バブルの頃に低反発枕がブームとなり、枕を手がけていたことで大手寝具製造卸からOEM(相手先ブランドによる生産)の依頼を受け、枕の生産が本格化した」という。

そのころ、中国に生産拠点の設置を強く求められたことがあった。これは断り、北名古屋市の工場での生産にこだわり続けた。ここで気がついたのが自分たちのブランドを持ち、販売網を築くことの重要さだった。3代目である北村社長の父親の時代のことだ。

2002年4月、大学卒業とともに入社した北村社長は、営業を担当し、ホテル、旅館など新規顧客の開拓に奔走する。同時にホームページ開設やネット経由での営業展開を手掛け、ブランドを持つためオリジナル商品の開発にも着手した。

「OEMで身につけたノウハウが役立ちました。枕に適した素材の特徴などは熟知しており、最適な組み合わせを考案。機能面は、より快適な眠りを導くため、頭部と首をバランスよく支え、寝返りがスムーズにいくよう設計しました。こうして06年に『ジムナスト』の商品名で独自の枕を完成させました」とブランド展開への流れを説明する。

ジムナストは左右が高く真ん中が低い構造で、正面でも横向きでも寝心地のよい工夫があり、好みで枕の中材を出し入れすることで高さを簡単に調整できるのが特徴。その後も改良を重ねた新商品を開発。こうして誕生した「ジムナストプラス」が11年に、「ジムナストミニ」が12年と連続でグッドデザイン賞を受賞。16年には縫い目を工夫した「ジムナストコロン」で三度、同賞を受賞している。価格は8000円台が中心で5万円の高級品までそろえている。

こうした中、09年7月に4代目として社長に就任。小売店への影響を考慮しながら国内EC展開を始めた。海外向けはマレーシア企業との取引を長く続けており、一定の海外販売比率がある。ホームページも知人の紹介で中国語版を作成した。

魅力ある海外へどのような形で展開するべきかが課題。「日本のやり方が通用するとは考えていませんが、切り口が見つかりません。ホームページの英語版など基本的な対応を行い、マーケティングに着手し、ブラッシュアップしていく」ことを考えていた。

そのとき、中小機構中部本部から越境ECマーケティング支援事業を聞き「だめもと」で補助金申請を行い昨年9月に採択された。現状はホームページの英文版などを整えた段階。これから中国、米国をターゲットに越境ECを本格化させる方針だ。

「確実にヒットする限定的な層に向けて訴求するため、マーケティングを兼ねニューヨークで開催された展示会に昨春と秋、今春と3回連続で出展しました。今後も現地調査など意欲的に行う考えです」という。

企業データ

企業名
Kitamura Japan
Webサイト
設立
2009(平成21)年3月
従業員数
20人(パート含む)
代表者
北村圭介氏
所在地
愛知県北名古屋市徳重小崎16—2
Tel
0568・23・0213
事業内容
枕・寝装品の企画・製造・販売