中小企業の海外展開入門

「中橋莫大小株式会社」Success Case Introduction

2020年 5月 22日

長年の技術とアイデアで新しい販路を切り開く

中橋莫大小株式会社の中橋智範社長
今回お話を伺った、中橋莫大小株式会社の中橋智範社長

相撲の街、東京・両国。ここは知る人ぞ知る「莫大小(メリヤス)」の街でもある。メリヤスとは、機械で編んだ生地のこと。ちなみに、「莫」には「無い」という意味があり、伸縮性があってサイズの大小がないという生地の特徴から、この字があてられたそうだ。この両国で、1951年からアパレルカットソーのOEMを手掛けてきた中橋莫大小株式会社が、長年培ってきたカットソー製法技術とアイデアによって、今までになかった新しいルームシューズ「merippa」を作った。今回は四代目社長の中橋智範さんに、この人気商品について、また、この商品の今後の販路開拓について伺った。

INTERVIEW
きっかけは一つのアイデアから

両国がメリヤスの街になったのは、江戸から明治へ時代が変わるとき、両国にいた武士が刀から編み針に持ち物を変え、編み物で生計を立てるようになったからだといわれている。しかし、多いときには2,000社あった東京のメリヤス組合も、今では180社ほどに減ってしまった。また、現在も、特にミセス向けのブランドのOEMを中心に手掛けていた工場は、アパレル不況もあって厳しい経営状況が続いているという。このような状況の中でも、中橋莫大小株式会社は、DCブランドやそのブランドから独立したアパレルブランドのOEMを手掛けているため、経営は安定している。しかし、「自社では、ニット製品を組み立てることはできますが、不況や高齢化の波に煽られて、上流工程であるニットを編める工場や染める工場が無くなってしまったら、ニット製品を作ることができなくなってしまいます」。そこで、閑散期にも仕事が回るようにと、自社ブランドの商品を製造しようということになり、当時の社員が思いついたニットを使ってスリッパにするアイデアから、2013年に商品化されたのが「merippa」だ。

口コミでつながった海外販路開拓

“メリヤス屋さんが作ったスリッパ”から「merippa」と名付けられたこの商品の特徴は、洋服と同じ素材を使っていて丸洗いができること、底がないのでリバーシブルで使えること、そしてデザインがたくさんありカラーバリエーションも豊富なことだ。デザインについては、中橋社長自らが毎年約120種類考えているのだとか。「生地の流行りも毎年変わりますし、何より同じパターンだけでは飽きられてしまいますからね」と淡々と語るが、この言葉から商品に対する誠実さを感じることができた。

「merippaはもともと、海外で販売することを想定して作ったものではなく当初は、新宿伊勢丹の1階にある婦人雑貨売り場に置いてもらうことを目標に作りました。とはいえ、この目標はありがたいことに1年で達成することができてしまったのですが」と中橋社長。その後、食品・雑貨を展開するライフスタイルショップで販売をしたところ、国内外に店舗を展開する老舗の、アメリカのバイヤーからお声がかかったそう。「そちらのお店で販売をしたところ、今度はサンフランシスコで商品を見た別のバイヤーから、“自分の店舗にも商品を置かないか”と声がかかるようになりました」。そして、現在はアメリカだけでなく、スイスや台湾など徐々に海外販売も増えている。

「merippa」に更なる付加価値を

ヨーロッパでも販売されているという自信を胸に、今後も国内外問わず商品のさらなる販路開拓をしようと考えているそうだ。「今後の展開として、お客様が生地から選んでオーダーできるオリジナルのmerippaと、同じ生地で作ったクマをセットで販売するイベントを各地で行っていく予定です。」中橋莫大小株式会社は「merippa」とともに、今後も絶えず新たなことに挑戦し続ける。

※掲載している内容は取材当時(令和元年度)のものです。

企業データ

企業名
中橋莫大小株式会社
Webサイト
代表者
代表取締役 中橋 智範 氏
所在地
東京都墨田区亀沢2丁目14−3
創業
1951年
事業内容
1951年創業、カット&ソー製品全般の製造およびOEMを手掛ける。有名ブランドのニット生地の製造もおこなうなど、品質の高さに厚い信頼が寄せられている。