中小企業の海外展開入門

「三鮮商事」いつかは海外での事業展開を!という思いを現実のものに

経営理念として「真・善・美(清く・正しく・美しく)」を掲げ、事業を展開している会社がある。それは、中高年向けにビジネスを展開している三鮮商事だ。その三鮮商事が国内でも13店舗を展開しているフィットネスクラブでタイへ進出し、挑戦を始めた。タイでの事業展開を統括している鹿島氏に話を聞いた。

Curvesタイ1号店の様子

事業は鮮魚店の展開からスタート

三鮮商事の本業は鮮魚店。そんな三鮮商事が、鮮魚店のターゲットである中高年向けに新しい事業展開と位置付け、展開し始めた事業が、中高年女性専用フィットネスクラブ「Curves」である。Curvesに加盟したきっかけは、「Curvesが中高年女性をターゲットとしていることから、店舗展開し、登録メンバーが1万人になれば、その1万人に魚が売れるようになる」と思ったからと語る鹿島氏。

当初、Curvesをスタートする時に20店舗の展開を計画していた。1店舗あたり平均500人が登録するビジネスであることから、20店舗の展開が実現できれば、1万人の登録メンバーとなり、彼女らを対象に鮮魚を売るだけでなく、他のビジネス展開も可能になる。そのような顧客基盤づくりとしての新規事業への取組みであった。

2013年現在、Curvesは13店舗まで展開しているが、国内ではすでに新規出店していく場所がなくなってきているという。その理由から、3年ほど前から海外出店にも目を向け始めた。

いよいよ海外への出店

もともと本業でも、東南アジアとの取引があったため、「海外出店するのであれば東南アジアへ」と社内では話が上がっていた。最初は物価や人件費が安いベトナムでの出店を考えていたが、ベトナムへの出店には色々とハードルが出てきたため、日本人の多いタイでの出店へと計画を変更し、事業展開を開始した。

タイは、在留邦人が5万人と言われており、その在留邦人向けにCurvesが1店舗できるのではないかと考え、まずは在留邦人をターゲットの中心として動き出した。タイでの出店をするにあたり、カーブスインターナショナルと交渉し始めた時、タイにはまだ1店舗も展開していなかったため、三鮮商事が日本でも店舗展開している実績を認められた結果、マスターフランチャイズの権利を購入することとなる。

[また、「実は、弊社の代表、常務と私はもともとヤオハンという会社に在籍していたのですが、その当時から海外で仕事をしており、今の会社を立ち上げてからもいつかは海外で事業展開したいという思いがあった」と鹿島氏が語るように、今回のタイでのCurves出店も会社設立当時からの強い思いを持ち続けた結果であると感じる。

タイでのカーブスの店舗展開は新たな挑戦

タイでの事業展開は、5年間で80店舗、10年間で160店舗を目標として、事業展開を計画している。そのためにはまずタイでの店舗運営のノウハウを作る必要がある。ノウハウを作るため、まずは直営で3店舗ほど展開し、その後フランチャイズ展開を計画している。現在は、2013年1月14日にオープンした直営の1号店を軌道に乗せ、さらに2013年中に2店舗の直営を出す計画となっている。「タイ1号店をオープンするに際し、様々なハードルがあった」と鹿島氏は言う。

何より一番最初のハードルが、会社の設立であった。タイでは外資規制があり、外資は49%までしか資本を持てない。そのため合弁で会社を立ち上げねばならず、過去の人脈を駆使してパートナーを選定した。さらに契約締結となるのだが、この合弁会社を立ち上げるまでに予想以上に時間がかかったそうだ。

1号店のオープン日が決まった後は、従業員の採用、店舗運営のための研修などにおいて、試行錯誤しながらの準備となった。「店舗スタッフは、現地の方をスタッフとして採用しています。ただ、人材紹介会社を介して採用活動をおこなったのですが、面接しても私自身が現地の言葉をあまり話せなかったため、どのような人物であるのかという判断においては本当に苦労しました」と鹿島氏は言う。

さらに、採用後の研修にも苦労したそうだ。研修期間は約2カ月。日本人への指導であれば十分な期間であるが、言葉の壁がある中で、Curvesの理念やマニュアルを理解させること、また登録メンバーとのコミュニケーションの取り方など、日本で行う以上に繰り返し指導することに、本当に苦労したそうだ。

1号店は在留邦人が多いエリアでの出店

タイ1号店は、在留邦人の多いエリアに出店。すでに168名の登録メンバーまで獲得できたが、その8割が在留邦人だという。当初は、在留邦人が多いエリアといえども、「現地の方と在留邦人で半々ぐらいになるのでは」と予想していたが、在留邦人が多くを占める結果となった。このことにより、在留邦人のCurvesへの関心度の高さがわかったため、2013年中に出店を計画している直営2店舗に関しては、在留邦人の多いエリアへの出店を予定している。

タイにもフィットネスクラブはあるが、中高年女性だけをターゲットにしているフィットネスクラブはなく、競合となる先はない。目下の課題は、今後一気にCurvesの認知度を上げ、現地の人たちを登録メンバーにしていくことだ。

タイでの展開の後は・・・

タイでのCurvesの展開を成功に導いた後には、近隣諸国への展開も視野に入れている。「タイのCurvesで得た利益をタイ国内で再投資し、飲食などの事業展開も考えています。さらにはCurvesのマスターライセンスを取得している企業がない国(インドネシア、フィリピン、カンボジア、ミャンマー)での展開も次の展開として考えています」と鹿島氏は笑顔で話す。

そのために「三鮮商事と同じ理念、同じ思いを持った海外の人材を育てたい」と語る鹿島氏。アジア各国で三鮮商事と同じ理念、思いを持った人材が育っていけば、アジア各国でも注目の企業として三鮮商事が不動の地位を築いていけるに違いないだろう。

企業データ

企業名
株式会社三鮮商事
Webサイト
代表者
山下 郁夫
所在地
静岡県沼津市春日町33-3
事業内容
小売、サービス(鮮魚販売、惣菜・弁当販売、フィットネスクラブ、介護、学習塾、居酒屋)