2026年 9月 9日

ユーザー車検代行業のイメージ01

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ユーザー車検代行業は、自動車の使用者などから車両を預かり、運輸支局や自動車検査登録事務所などへ持ち込み、継続検査(車検)の受検を代行するサービスである。検査日の予約、必要書類の確認、車両の引き取り・返却、検査コースでの受検などが主な業務となる。

継続検査の受け方は、大きく、運輸支局等の検査場に車両を持ち込んで受検する方法と、指定整備工場で点検・整備・検査を行う方法に分けられる。

<継続検査(車検)の主な受検方法>

A:運輸支局等の検査場に車両を持ち込んで受検

  • ユーザー本人が持ち込んで受検(ユーザー車検)
  • ユーザー車検代行業者が、ユーザーに代わって持ち込んで受検
  • 認証整備工場が、点検・整備後に車両を持ち込んで受検

B:指定整備工場で点検・整備・検査を実施(いわゆる民間車検)

  • 指定整備工場の自動車検査員が検査し、保安基準適合証を交付。運輸支局等への車両の持ち込みは省略できる

本稿で扱うユーザー車検代行業は、主にAのうち、ユーザーに代わって車両を持ち込み、受検を代行する業態である。

ただし、他人の依頼を受けて報酬を得て官公署に提出する書類を作成する業務は、行政書士法との関係に注意が必要である。車検代行業者は、顧客本人が作成した書類を預かって車両を持ち込む業務と、申請書類を作成する業務を明確に区分し、必要に応じて行政書士と連携することが重要である。

国土交通省によると、令和6年度のユーザー受検件数は181万台で、継続検査(車検)全体に占めるユーザー車検の割合は8.4%だった。平成30年度以降はおおむね8%台で推移しており、一定の利用が続いている。

ユーザー車検の受検台数と割合の推移

近年は、自動車の電子制御化や手続きのデジタル化に伴い、車検に関する制度変更が続いている。代行業者も、対象車両や必要書類、検査方法の変更を把握し、顧客へ適切に説明できる体制を整える必要がある。

2020年4月に施行された自動車特定整備制度では、従来の「分解整備」に加え、先進運転支援システムに関係するカメラやレーダーなどの脱着・調整を含む「電子制御装置整備」が認証の対象となった。これらの作業を業務として行う整備工場は、道路運送車両法に基づく認証を受けなければならない。

電子車検証は、登録車では2023年1月、軽自動車では2024年1月から導入された。車検証は小型化され、車検証の有効期間など一部の情報はICタグに記録されている。代行業者は、車検証閲覧アプリなどによる情報確認の方法を理解しておく必要がある。

また、OBD検査(※)は国産車では2024年10月、輸入車では2025年10月から開始された。対象は、原則として国産車では2021年10月1日以降、輸入車では2022年10月1日以降の新型車で、対象車両の車検証には「OBD検査対象」と記載される。検査では、車両の電子制御装置から情報を読み取り、保安基準不適合に該当する故障コードなどがないかを確認して、合否を判定する。

※車載式故障診断装置(OBD)を利用した自動車検査手法。車両の端子にスキャンツール(診断機)を接続し、対象となる運転支援装置や排出ガス関係装置などに、特定の故障コードが記録されていないかを確認する。

近年のユーザー車検代行業事情

ユーザー車検代行業は、提供するサービスの範囲や整備機能の有無によって、おおむね次の3タイプに分けられる。

純粋代行型

顧客から車両を預かり、必要書類がそろっているかを確認したうえで、運輸支局等への持ち込みと受検を代行する形態である。自社では点検・整備や修理を行わないため、比較的少ない設備で始められる一方、検査前に不具合が見つかった場合や不合格となった場合の対応先を確保しておく必要がある。

事前整備提携型

認証工場などと提携し、必要に応じて検査前の点検・整備を外部へ依頼し、代行業者が車両の引き取り、整備工場への持ち込み、受検、返却を担う形態である。自社で整備設備や整備要員を持たずに対応範囲を広げられるが、整備内容、費用、納期、再検査時の責任分担を明確にしておくことが重要になる。

整備併設型

自社または関連事業として整備機能を持ち、点検・整備から車検手続きまでを一体的に提供する形態である。認証工場や指定整備工場を開設する場合は、設備、人員、整備主任者や自動車検査員などの要件を満たす必要がある。設備投資や人員確保の負担は大きいが、既存の自動車整備事業者が車検代行サービスを追加するケースもある。

これらのうち「整備併設型」は、整備工場の認証や指定に応じた設備・人員要件を満たす必要があり、開業時の負担が大きくなる。そのため以下では、主に自社で認証を必要とする整備作業を行わない「純粋代行型」と「事前整備提携型」を想定して説明する。

ユーザー車検代行業の仕事

いずれの事業形態においても、顧客対応、必要書類の確認、車両の引き取り・返却、受検、営業などが主な業務となる。車検需要は年度末など特定の時期に集中しやすいため、予約状況や受注件数を調整し、繁閑差を平準化することが経営上の課題となる。また、車両の異常の兆候や、点検・整備が必要と思われる状態に気づき、適切な整備事業者へつなぐための基礎知識が求められる。

受付・ヒアリング

顧客から依頼を受け、車種、用途、初度登録年月、車検証の有効期間、走行距離、警告灯の点灯状況、OBD検査対象車かどうかなどを確認する。タイヤ、灯火類、ワイパーなど、顧客自身でも確認しやすい項目について事前に聞き取り、点検・整備が必要と思われる場合は認証工場などへの相談を案内する。

必要書類の確認と手続き準備

車検証、自賠責保険証明書、申請書、納税状況など、継続検査(車検)に必要な書類や情報がそろっているかを確認する。点検整備を実施済みの場合は、整備事業者等が作成した点検整備記録簿も確認する。

報酬を得て申請書類を作成する行為は、行政書士法との関係が生じる可能性がある。顧客本人が作成する範囲、代行業者が確認・受領する範囲、行政書士へ依頼する範囲をあらかじめ整理しておく。

車両の引き取り・運輸支局等への持ち込み

顧客宅や事業所などで車両を預かり、予約した日時に運輸支局等へ持ち込む。車両を公道で運転するため、車両区分に応じた有効な運転免許を取得していることや、車両の自賠責保険の有効期間を確認するとともに、預かり中・運転中の事故や損傷に備えた保険の補償内容を確認しておく。

検査コースでの受検

検査コースでは、検査担当者の案内に従い、同一性、外観、サイドスリップ、ブレーキ、速度計、前照灯、排気ガスなどの検査を受ける。OBD検査対象車の場合は、従来の検査項目に加えてOBD検査を受ける。

任意の事前確認と故障診断用スキャンツール

純粋な車検代行業を営むうえで、故障診断用のOBDスキャンツールを保有することは、法的な必須要件ではない。運輸支局等で行われる正式なOBD検査は、検査機関の設備と手順によって実施される。

一方、対応車種や機能を確認したうえで、任意の故障診断用スキャンツールを用いて故障コードなどを受検前に確認することは、不合格・再検査となる可能性を事前に把握し、必要に応じて整備工場へ相談するための補助となる。ただし、任意のスキャンツールによる確認は正式なOBD検査ではなく、その結果によって車検への合格を判断したり保証したりすることはできない。故障コードの消去だけで不具合が解消したことにもならないため、点検や整備が必要な場合は認証工場などへ依頼する。

予備検査場の利用

検査合格に不安がある場合は、運輸支局等の周辺にある予備検査場、いわゆるテスター屋を利用する方法がある。前照灯の光軸、サイドスリップ、排気ガスなどを事前に測定できるが、利用可能な項目や調整の範囲は事業者によって異なる。認証が必要な整備作業に該当する場合は、適切な整備事業者へ依頼する。

不合格時の対応

検査で不合格となった場合は、指摘箇所を顧客へ速やかに伝え、追加費用、修理の要否、再検査までの予定を説明する。整備が必要な場合は、顧客の同意を得たうえで提携する認証工場などへ取り次ぐ。再検査の費用負担や車両保管の扱いは、利用規約や見積書で事前に定めておくとよい。

車両の返却・書類の引き渡し

検査に合格した場合は、新しい電子車検証、検査標章などを確認し、車両とともに顧客へ返却する。車両の外観や燃料残量などを引き取り時と照合し、顧客とともに確認できる記録を残しておくと、トラブルの防止につながる。

顧客情報の管理と次回車検の案内

自家用乗用車の車検は、一般に新車登録後の初回が3年、その後は2年ごとである。車種や用途によって有効期間は異なるため、車検証で確認する。顧客の同意を得たうえで、車検満了日、連絡先、依頼履歴などを管理し、次回の案内に活用する。個人情報は利用目的を明示し、アクセス権限、保管期間、廃棄方法などを定める。

2025年4月以降は、車検証の有効期間満了日の2か月前から受検しても、残存期間を失わずに更新できる。早めの案内は、顧客の利便性向上と繁忙期の業務分散に役立つ。

地域営業と法人開拓

車両の引き取りと返却を伴うため、採算が合う対応地域を設定する必要がある。個人顧客のほか、社用車を保有する地域企業なども対象になり得る。法人契約では、対象車両、料金、連絡方法、事故時の対応、キャンセル条件などを契約書や覚書で明確にする。

広告宣伝とウェブ集客

ウェブサイトやチラシには、対応地域、代行料金、法定費用、追加費用が発生する条件、整備を行わないこと、不合格時の対応、キャンセル条件などをわかりやすく表示する。「必ず車検に通る」「整備不要」など、検査結果や安全性について誤解を与える表現は避ける。

ユーザー車検代行業の人気理由と課題

人気理由

  1. 比較的少ない設備で始められる
  2. 車検満了時期に応じた需要が見込まれる
  3. 在庫を多く抱えずに運営できる
  4. 業務内容と料金体系がわかりやすい

課題

  1. OBD検査対象車の増加への対応
  2. 再検査のリスクと提携整備工場の確保
  3. 一人で対応できる件数の限界
  4. 制度変更への対応コスト
ユーザー車検代行業のイメージ02

開業のステップ

STEP 1.コンセプトとターゲットの設定

個人向けか法人向けか、純粋代行型か事前整備提携型か、副業か専業かを整理する。対応地域、料金体系、車両の引き取り方法、OBD検査対象車への対応方針も検討する。

STEP 2.市場調査と事業計画・資金計画の作成

商圏内の競合、料金、運輸支局等までの移動時間、見込件数を調べる。代行料金、法定費用、外注整備費、再検査費用を分けて収支を試算し、開業資金と当面の運転資金を整理する。

STEP 3.運輸支局等と検査実務の把握

管轄の運輸支局や自動車検査登録事務所の所在地、予約方法、受付時間、必要書類、検査コースの流れを確認する。可能であれば、自分の車両などでユーザー車検を経験し、実務を理解する。

STEP 4.提携先の確保

点検・整備や再検査時の修理を依頼できる認証工場を確保する。行政書士法上の業務が生じる場合に備えて、行政書士との連携も検討する。業務範囲、費用、納期、顧客対応、責任分担は書面で確認する。

STEP 5.保険とリスク管理体制の整備

顧客から預かった車両の運転中・保管中の事故や損傷に備え、業務内容を保険会社または保険代理店へ説明し、必要な補償を受けられる保険を検討する。引き取り時の車両確認、鍵の管理、事故時の連絡手順も定める。

STEP 6.業務フロー・契約書類の整備

受付、見積もり、車両引き取り、必要書類の確認、受検、再検査、返却、入金までの標準フローを作成する。料金表、利用規約、委任状、車両受領書、チェックシート、個人情報保護方針なども整備する。

STEP 7.任意設備と業務環境の準備

パソコン、プリンター、スマートフォン、車検証閲覧アプリの利用環境などを用意する。OBDスキャンツールは法的な必須設備ではないが、事前確認に利用する場合は、対応車種、機能、情報の正確性を確認し、結果だけで合否を断定しない運用ルールを設ける。

STEP 8.開業・税務関係の手続き

個人で開業する場合は、個人事業の開業・廃業等届出書など、必要な税務関係の届出を行う。青色申告を希望する場合は、所得税の青色申告承認申請書の提出期限も確認する。法人で行う場合は法人設立手続きを進める。

STEP 9.集客ツールの整備

ウェブサイト、チラシ、名刺などを作成し、対応地域、料金、法定費用、追加費用、不合格時の対応、連絡先を明示する。法人営業を行う場合は、対象となる地域企業を整理し、契約条件を準備する。

STEP 10.営業開始と業務の見直し

開始当初は受注件数を抑え、検査予約、移動、再検査、返却に要する時間を把握する。実績をもとに料金や対応地域を見直し、事故・苦情・ヒヤリハットの記録を業務改善に活用する。

ユーザー車検代行業に必要な資格・届出・保険

自社で点検・整備や修理を行わず、顧客の車両を運輸支局等へ持ち込んで受検する範囲では、車検代行業そのものについて、一般的な営業許可や国家資格が設けられているわけではない。ただし、実際に行う業務によっては、資格、許可、登録、認証などが必要になる場合がある。

行政書士法への対応

他人の依頼を受け、報酬を得て官公署に提出する書類を作成する業務は、行政書士法との関係を確認する必要がある。顧客本人に記入してもらう書類、代行業者が内容や添付書類を確認する範囲、行政書士へ依頼する範囲をあらかじめ整理しておく。

名義変更、住所変更、抹消登録、車庫証明などを追加サービスとして扱う場合も、行政書士へ相談するとよい。

道路運送車両法への対応

分解整備や電子制御装置整備など、認証が必要な作業を事業として行う場合は、道路運送車両法に基づく認証が必要になる。代行業者は、車両の状態を目視で確認する業務と、認証を必要とする点検・整備・修理を明確に区分する必要がある。

運転免許と車両の確認

顧客から預かった車両を公道で運転するため、車両区分に応じた有効な運転免許が必要である。車検証、自賠責保険証明書、自賠責保険の有効期間なども、車両を預かる前に確認する。

保険への対応

顧客の車両を運転・保管する以上、交通事故、車両損傷、盗難などへの備えが必要である。一般の自動車保険では、業務で預かった車両の損害が補償されない場合もある。

保険会社や保険代理店に業務内容を具体的に説明し、運転中、保管中、引き取り・返却時などに必要な補償を確認する。保険商品名だけで判断せず、対象となる車両、運転者の範囲、免責金額、代車費用なども確認しておく。

資格を取得する場合

自動車整備士の資格は、車検代行業そのものを行うための必須資格ではない。ただし、車両の構造や点検・整備に関する知識を身につけるうえで役立つ場合がある。

自動車検査員は、指定整備工場で検査業務を行うための資格であり、純粋代行型や事前整備提携型の業務には通常必要ない。

ユーザー車検代行業のイメージ03

開業資金と運転資金の例

ユーザー車検代行業は、自宅を事務所とし、自社で整備を行わない場合、大規模な店舗設備を持たずに始められる。ただし、保険料、車両費、広告費、提携先への外注費などは、事業形態や地域によって大きく異なる。以下は、一人で純粋代行型または事前整備提携型として開業する場合の一例である。

<前提条件>
自宅を事務所として使用
事業用に使用できる車両を保有
従業員を雇わず一人で開業
認証を必要とする整備作業は行わない

開業資金例
運転資金例
※外注費は、受注件数や依頼内容によって異なる。上記は軽微な診断、予備検査場の利用、行政書士への依頼などを想定した目安であり、大きな修理費や部品代は含まない。
※保険料は、2年目以降も契約更新時に必要となる。月払いの場合は、毎月の運転資金に計上する。

法定費用や整備費用を顧客から預かる場合は、代行手数料などの売上と区分して管理する。また、再検査、キャンセル、車両事故などに備え、数か月分の運転資金を確保しておくとよい。

売上計画と損益イメージ

引き続き、「開業資金と運転資金の例」と同一の条件で売上計画と損益イメージの一例を算出した。事業者の売上となる代行手数料は1件あたり約1.5万円とし、繁忙期と閑散期の差が大きい業種のため、1か月あたりの売上や損益は1年間の平均値として計算している。開業当初は認知度が低く、案件数が少ないことが多いため、2~3年目の事業を想定している。

売上計画

月間の収入から支出(上記運転資金例)を引いた損益は、下記のようになる。

損益イメージ

上記には、税金、社会保険料、事業主の生活費、減価償却費、事故時の自己負担、再検査に伴う追加時間などを含めていない。また、料金や件数は、地域、対応範囲、法人契約の有無、移動距離によって異なるため、実際の事業計画では複数のケースを作成する。

ユーザー車検代行業の売上は、基本的に「1件あたりの代行手数料×受注件数」で決まる。代行手数料には地域の相場、受注件数には移動や検査に要する時間による制約があるため、代行業務だけで売上を大きく伸ばすには限界がある。

そのため、収益源を広げる方法として、名義変更、住所変更、抹消登録、車庫証明など、自動車に関連する手続きへの対応を検討する場合もある。ただし、他人の依頼を受け、報酬を得て官公署へ提出する書類を作成する業務については、行政書士法との関係を確認し、必要に応じて行政書士へ依頼する必要がある。このほか、中古車の仕入れ・販売には古物商許可、自動車保険の募集には保険募集人としての登録や所属が必要となる。整備や部品交換についても、作業内容によっては、自動車特定整備事業の認証が必要になる場合がある。車両を有償で運送する場合も、事業形態に応じて関係法令を確認することが重要である。

ユーザー車検代行業は、大規模な設備を持たずに始められる場合がある一方、顧客の車両を預かって公道を運転するため、事故や車両損傷への備えが欠かせない。また、申請書類の作成、点検・整備、保険の取り扱いなどは、法令や資格・登録との関係を確認する必要がある。

開業にあたっては、代行する業務の範囲を明確にし、認証工場、行政書士、保険会社・保険代理店などとの連携体制を整えることが重要である。制度や検査方法は変更されることがあるため、国土交通省、自動車技術総合機構、軽自動車検査協会、管轄の運輸支局などから最新情報を継続的に確認したい。

※開業資金、売上計画、損益イメージなどの数値は、開業状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)