業種別開業ガイド

バー

トレンド

1.飲酒離れあるが、若年~壮年層男性が依然有望顧客

近年、自宅で安く飲む人たちが増えたことや、サラリーマン層の可処分所得が減り交際費が減ったことなどから、飲酒代の減少が進んでいる。日本フードサービス協会の公表資料によると、バー・キャバレー・ナイトクラブの市場規模はバブル期の70%近くにまで縮小している。

単身者を対象とした家計調査を基に見てみると、男性が有望なターゲットであるのと同時に、女性の利用を少しでも増やせるかが鍵となるだろう。

2.多様なバーが人気

消費者の志向に合わせたさまざまなバー業態が登場してきている。たとえば、ワインを専門に提供する「ワインバー」、葉巻煙草を提供する「シガーバー」、カフェのような軽食メニューとお酒を提供する「カフェバー」、本格料理とお酒を提供する「ダイニングバー」、などである。

また、より消費者の志向を絞ったものとして、スポーツ・バー(特定のスポーツのファンが集まり、大型画面モニターで試合中継などを楽しむバー)といったものも出てきている。

バーの特徴

バーは、カウンターバーやショットバーなどとも呼ばれ、カクテルなどお酒を本格的に提供する店舗である。カウンターが設置されており、カウンター越しに、バーテンダーと従業員が接客を行う。

バーの顧客は固定客も多く、好みの酒のボトルキープも行われる。提供されるお酒は、高価なブランデー、ウイスキーから、低価格な焼酎など幅があり、店舗のコンセプトに合わせて、酒類の選別が行われている。

バーの仕入原価率は20%程度と言われている。仕入の多くは酒類であり、酒類卸売店や量販店から仕入れる。一般に、入手が難しい希少銘柄のお酒などは専門の卸売店から仕入れることが多く、ほかは価格の安い量販店で仕入れることも多い。

バーを含め酒類販売を主とする飲食店は、繁忙期と閑散期の差がある。一般に、繁忙期はボーナス時期と年末年始、年度の終わりと始まりの時期であり、2月や8月などは閑散期にあたる。

バー業態 開業タイプ

あらかじめコンセプトを定め、それに沿って店舗タイプを選定することが重要となる。

(1)従来型バー

カウンターバーやショットバーなどとも呼ばれ、お酒をカウンター越しに提供する通常タイプのバーである。狭い店舗でも営業が可能であり、また、提供する料理も乾き物のつまみや、簡単な料理なので、経験が浅くても比較的開業しやすいと言える。

(2)複合型バー

最近、人気が出てきているタイプとしてあげられるのが、複合型バーである。上述のワインバー、シガーバー、カフェバー、ダイニングバーなどが例としてあげられる。ほかにもターゲットを絞り込んださまざまな複合型バーが開業しているが、ターゲットを絞るほど、専門的な知識や経験が必要となる。

開業ステップと手続き

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下の8段階に分かれる。

(2)必要な手続き

バー開業の際には、基本的に以下の手続きが必要となる。

なお、接客行為に談笑やお酌などを加える場合は、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)」の規制を受け、都道府県公安委員会の許可が必要となる。許可を得る際は、所轄の警察署に申請書を提出する。また、風営法が適用された場合、深夜0時以降の酒類提供はできなくなる。

また、消防法の規定により、収容人員が30人以上である場合は、防火管理者を選任しなければならない。防火管理者の資格を取得するには、都道府県知事、消防本部を設置する市町村の消防長、あるいは総務大臣認定登録機関となっている法人が主催する防火管理者講習を修了し、効果測定試験に合格する必要がある。

このほか、バーとして、ダーツやカラオケなどの設備を設置し顧客に遊興させる場合は、特定遊興飲食店営業の許可が必要な場合がある。特定遊興飲食店営業が必要な場合は、地域の警察署・保安係にて申請手続きを行う。特定遊興飲食店営業に該当するか否かは以下のサイトで確認できる。

・警視庁/特定遊興飲食店営業について

メニューづくり

バーの経営形態は個人経営的な傾向が強く、多彩な経営スタイルの小規模店舗が乱立している。成功のポイントは、いかに固定客を確保できるか、である。したがって、強みとするお酒の品揃え、店舗コンセプト、バーテンダーのキャラクターなどに特色を持たせる差別化戦略が必要である。

差別化戦略としては、複合型バーのように提供する商品を絞るほか、より詳細に趣味・嗜好でターゲットを絞り込む方法もある。上述のスポーツ・バーもその一例であるが、たとえば「映画好きな人集まるバー」「ジャズ好きな人が集まるバー」など、お酒とは別の分野の専門性で差別化を図ることも一つの方法である。

理想的な立地条件は、店舗コンセプトやターゲット層により異なるが、店の評判などの口コミが重要となるため、必ずしも繁華街や路面店の好立地でなければならないということではない。繁華街から離れた静かな地域、ビルの地階や2階以上など、飲食店としては不利とされる立地でも営業することは可能である。

必要なスキル

顧客の滞在時間が売上に比例する傾向が強いため、居心地の良い店舗を目指すことが重要である。そのためには、バーテンダーや従業員の質は大切な要素であり、接客技術向上のための人材教育は必須である。

集客においては、ホームページの開設、飲食店比較サイトへの登録、近隣へのチラシ配布、目立つ看板などで認知してもらう必要がある。そして、一度来店してくれた顧客に対しては、顔と名前、注文した品を記憶しておき、再来店時に好みのメニューを提供するなどして、相手に特別感をもってもらい、固定客になってもらうという地道な努力も必要である。このほか、希少銘柄のお酒の仕入情報やイベント情報、誕生月割引などの情報をメールやLINEで告知するなど、きめ細かなフォローも固定客づくりには欠かせない。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

狭い店舗でも開業は可能であり、また、廃業した店舗を「居抜き」として引き継ぐことで、内装費などを節約 することも可能である。

【参考】地方都市の繁華街で店舗面積約15坪のバー(従来型)を開業する場合の必要資金例

(2)損益モデル

■売上計画
店舗の立地や業態、規模などの特性を踏まえて、売上の見通しを立てる。平日、休日で来客予想数を変えるなど、細かく作りこむことが重要である。

(参考例)バー(従来型)

■損益イメージ
(参考例)バー(従来型)

  • 個人事業主を想定していますので、営業利益には個人事業主の所得が含まれます。
  • 開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なります。

■注釈等テキスト