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ITコンサルタント

2023年 3月 3日

トレンド

ITに関する専門知識やスキルを武器に経営者視点で顧客の課題を解決するITコンサルタント(システムコンサルタント)には高度な専門知識や実務経験、能力が求められ、IT系職種の中でもトップクラスの売上を立てられる見込みがある。

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現在、DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション:デジタル変革)を推進しようという機運があらゆる業界に存在する。企業はAI(人工知能)・IoT(モノのインターネット)・ビッグデータ(巨大なデータ群)を活用して業務フローを改善し、生産性を向上させてコストを削減するだけでなく、新たな製品・サービス・ビジネスモデルを創出し、企業文化から個人の生活や社会にいたるまでの変革を実現させようとしているのだ。

しかし、みずほ情報総研が発表した、経済産業省委託事業による「-IT人材需給に関する調査- 調査報告書」では、IT人材需給に関し、2030年には需要の伸びが1%で約16万人、約5〜2%で約45万人、約9〜3%で約79万人ものIT人材が不足すると試算している。

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が公開した『DX白書2021』によれば、ビジネスモデルの変革や新技術やデータの利活用を推進するために、どのような団体・組織と密接なパートナーシップを結んでいるか尋ねた結果、日本企業では「サプライヤー(取引先)」が34.1%、「コンサルティング企業」が29.2%と、コンサルティングのニーズの高さがうかがえる。

ITコンサルタントは、顧客からのヒアリングによって丁寧に業務を分析し、企業が抱えている課題に対して、IT技術やデバイスを用いた解決・改善策を提案して、施策を実施するための支援をおこなう。また、顧客としても、国内事業を中心とした企業から、グローバルな展開をしている企業まで、幅広く想定される。

近年のITコンサルタント事情

IT技術は、これからも進化し、それに応じて需要も生まれ続けると現時点では考えられている。近年では、たとえば以下のような業務がみられる。

IT戦略コンサルティングサービスでは、長期的なIT戦略を立案し、IT投資の計画を策定して、企業の経営課題を解決する。経営・財務・人材・組織・生産などの管理システムの作成、オペレーションの改善、ITマネジメント(IT環境の構築)などを通じ、コストを削減し、投資対効果を最大化させ、企業の価値を向上させる。

パッケージ導入コンサルタントというサービスもある。システムには、ERP(Enterprise Resource Planning)、統合基幹業務システム、基幹システムと呼ばれる会計・人事・生産・物流・販売などの基幹となる業務を統合したものがある。また、CRM(Customer Relationship Management)という、顧客との関係性を管理するシステムもある。これらの仕様・動作・設定に関する詳細な知識を生かし、企業に合わせた導入を支援するのがパッケージ導入コンサルタントだ。

RPA(Robotic Process Automation)導入支援サービスも需要が高い。RPAとはソフトウェアロボットによる業務の自動化のこと。効率化や品質の向上が見込まれる新技術の1つだが、RPAを導入しても使いこなせていない企業は多いため、そこを支援する。

ITコンサルタントになるためにはIT企業に入社してSE(システムエンジニア)としての経験を積むのが一般的だが、インフラ系エンジニアからITコンサルタントへと進む人もいる。システムに関する予算・人員・進捗・運営・品質を管理するPM(プロジェクトマネージャー)と同様の経験も求められる。

また、ハードウェア関連を担当する技術営業職、ソフトウェア関連を扱うセールスエンジニア職に就き、営業活動も経験しておくと、ITコンサルタントとして独立した際に役立つ。営業担当者に同行し、製品に関して専門的な説明をおこない、導入を支援し、アフターフォローも担うプリセールスも経験しておけば、ITコンサルタントとしての業務に生かすことができる。

特定の業界・業務の知識や経験が増加すれば、独立時のターゲット設定やサービスの絞り込みがしやすくなるだろう。さまざまな経験が、ITコンサルタントという総合的な知識・経験を求められる仕事に生かされる。

ただし顧客のニーズに応えるためには、専門性を高めながらも、幅広い業界・業務にも対応できるように知識・経験を拡大することも必要だ。大規模なシステムの運用や保守、さまざまなシステムの構築やパッケージシステムの導入を経験しておくと、独立時の自信にもつながるだろう。

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ITコンサルタント開業の人気理由と課題

人気理由

1. IT職の経験や技術、資格を専門的に活用できる。

  • 高度な知識や経験が求められ、やりがいがある
  • 論理的思考力やマネジメント力も生かせる

2. 顧客のビジネスに貢献でき、評価を受けられる。

  • 業績向上の支援に携わることができる
  • 結果を出せば、経営者から喜ばれ、感謝される

3. 実績により、高収入に結びつく可能性もある。

  • 能力・経験・結果が報酬に直結しやすい
  • フリーランスで年間600~2400万円といわれる

課題

  1. 進化を続けるテクノロジーについていくため、常にスキルアップを求められる。
  2. 人脈、営業力や交渉力がなければ案件を獲得できない。

ITコンサルタント開業の5ステップ

ITコンサルタント開業の5ステップ

ITコンサルタントに役立つ資格

ITコンサルタントになるために取得が必要な資格というものは存在しない。ただし、知識・経験に加え、論理的な思考力、戦略立案や課題解決の能力、マネジメント力、コミュニケーション力などが求められる。ここでは、ITコンサルタントを目指すにあたっておすすめの資格を紹介する。

まず、ITストラテジストは国家試験で、経営とITとを結びつける戦略を求められる。「ITを高度に活用した事業革新、業務改革、及び競争優位を獲得する製品・サービスの創出を企画・推進して、ビジネスを成功に導くCIOやCTO、ITコンサルタントを目指す」とされており、難易度は高いが合格すれば全般的に必要な能力を身につけたことの目安になるだろう。また、ITコーディネータは民間資格だが、経済産業省が推進しており、同様に経営戦略を実現するIT化支援を行うための資格となっている。

中小企業診断士は国家資格で、「企業の経営に関わる知識を横断的に身につけることができる」とされている。さらに、プロジェクトマネジメント関連には国家試験と国際資格があり、これらを取得することによってプロジェクトの成功に向けた推進を管理するためのスキルを体系的に学ぶことができ、もちろんそのスキルの証明にもなるだろう。ほかにベンダー資格などもあり、取得すればT関連のハード・ソフトウェア製品の操作・保守方法のスキルの証明にもなる。将来の方向性を検討しながら、上記のような資格に関し、調べてみよう。

▼ITストラテジスト試験の受験状況

ITストラテジスト試験の受験状況

ITコンサルタントの売上イメージ

株式会社みらいワークスが運営するウェブサイト『フリーコンサルタント.jp』によれば、独立したフリーランスのITコンサルタントの報酬は月50万〜200万円、年600万〜2400万円とのこと。デジタルハリウッド株式会社が運営する『デジハリONLINE』では、年平均1000万円とされている。株式会社マイナビによると、企業に就職した場合の平均年収は512万円で、フリーのITコンサルタントとして独立した場合、年収1000万円を上回るケースも少なくないとされる。

ちなみに、株式会社Synergy Careerが運営する『就活の教科書』では日系ITコンサルタントの企業の売上高として、1位の野村総合研究所では5288億円、2位のSBテクノロジーでも661億円、13位のタナベ経営で94億円などのデータが紹介されている。小規模の開業であっても、その後は能力・人脈などに応じ、可能性は広がるといえるだろう。

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※売上イメージの数値は、開業状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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