業種別開業ガイド

ネットショップ

2021年 5月 14日

トレンド

(1)国内電子商取引市場は右肩上がりで成長

経済産業省によると、2019年の日本のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は19.4兆円となった。これは前年の18.0兆円に対し、7.65%の増加となっている。同省のデータでは、2010年から電子商取引市場は拡大を続けており、2010年の7.8兆円と比べれば2倍以上の成長を遂げている状況だ。

(2)ネットショップ(物販系電子商取引)の市場規模は10兆515億円

上述した経済産業省の売上データの内訳をみると、物販系分野が10兆515億円、サービス系分野が7兆1,672億円、デジタル系分野が2兆1,422億円となっている。

さらに、物販系分野の市場規模の内訳をみると、「衣類・服装雑貨等」(1兆9,100億円)、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」(1兆8,239億円)、「食品、飲料、酒類」(1兆8,233億円)が大きな割合を占めている。こうした商品はネットショップで販売する相性がよいと考えられるため、開業にあたって参考にしておきたい。

(3)2019年度のEC売上ランキング1位はAmazon

『月刊ネット販売』が実施するネット販売企業の売上高調査「ネット販売白書」によると、2019年度のネット販売実施企業の売上は、アマゾンジャパンが1兆7,433億円でトップとなった。

ネットショップ開業の主要な方法のひとつに、Amazonや楽天市場といったWeb上のショッピングモールサイトへの出店がある。こうした売上ランキングなどを確認し、各社の業績等も確認した上で出店先を判断したい。また、開業するネットショップとショッピングモールサイトのコンセプトが合うかどうか等も検討が必要である。

ビジネスの特徴

商品情報の提供や受発注、請求、決済など、基本的な取引行為がインターネットを通して行われるビジネス。実店舗を持つ必要がなく自宅で開業できることから、初期費用を抑えられ、かつ、時間の都合もつきやすい点が特徴である。場合によっては、会社に在籍しながらでも、副業として運営・管理することができる。

ただし、上述の特徴は、参入障壁が低いということにもつながる。そのため、開業する分野にもよるが、競争が激しい可能性がある点には留意が必要である。開業にあたっては、他店との差別化のための戦略は練っておきたい。

開業タイプ

(1)自社サイト出店

自社(個人)で独立した店舗をかまえる業態。

ショッピングモールサイトへの出店とは異なり、独自性の高いサイトを作成することができるという点が大きな特徴といえる。ただし、Webデザインや販売システム構築など、すべて自らで手配しなければならないため、その分の時間と費用がかかる点には留意しておきたい。

また、集客も主な課題のひとつである。検索エンジンやSNSからの流入のためには、コンセプトを明確にしたり、口コミが広がりやすい要素を盛り込んだりと、意識的に工夫する必要がある。

(2)ショッピングモールサイト出店

楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazonといったショッピングモールサイトに出店する業態。

大きなメリットとしては、モールサイトの集客力を活用できるという点が挙げられる。また、モールサイトは商品販売のシステムも構築されており、システム構築・運用の費用は抑えられる。

一方、デメリットとしては、まずはモールサイトへ出店するにあたっての費用がかかるという点が挙げられる。加えて、モールサイト内における競争が激しいという課題もある。また、基本的なデザインが確定しているため、独自性のあるデザインにすることは難しい場合が多い。

開業ステップ

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下のとおり。ただし、個人で自宅にて開業するケースなどのように、業態によってはオフィスが不要になる場合もある。

開業のステップ

(2)必要な手続き

●個人事業主の届出

個人でのネットショップ運営は、個人事業主にあたるため、事業所得の届出・ 納税が必要となる。

  1. 納税地の所轄税務署へ個人事業の開廃業届出書の提出
  2. 事業所所在地の都道府県税事務所あるいは、市役所へ個人事業開始申告書の提出
  3. 納税地の所轄税務署へ所得税の棚卸資産の評価方法、減価償却資産の償却方法の届出書の提出
  4. 納税地の所轄税務署へ所得税の青色申告承認申請書の提出従業員を採用した場合は労働基準監督署・公共職業安定所・社会保険事務所などへの届出
●販売物における手続き

古物商や酒類など、販売免許等を必要とする商品を取り扱う場合は、保健所や税務署等への必要書類の提出が必要となる。

商品写真の重要性——信頼されるネットショップ運営のために

ネットショップは実店舗と異なり、商品を直接手に取って確認することができない。そのため、商品写真は顧客にとって購入を決めるための重要な要素となりうる。

商品写真は、プロに頼めればそれが望ましいが、費用を抑えるためには自身で撮影することも検討しておきたい。ライティングや基本的な構図について調べた上で撮影すれば、ある程度の品質の商品写真を撮ることは素人でも不可能ではない。近年はスマートフォンのカメラも進化しており、機種によってはスマホカメラでも品質的に問題ないだろう。

また、インスタグラム等のSNSにて、コンセプトに合わせた商品写真を投稿することは、そのままショップの宣伝にもなる。

必要なスキル

Webサイト構築に関する知識

当然のことではあるが、ネットショップを開業するにはネット環境がなければならない。また、Webサイトを作成するためにはサーバー契約が必要となるほか、デザインや販売システムなども検討しなければならない。

こうしたWebサイト構築に関する知識は、インターネットを一般的に利用しているだけでは身につかないものであろう。そのため、書籍等で学ぶなどして、Webサイト構築の知識を身につけておく必要がある。

コンセプトの明確化

ネットショップは比較的参入障壁の低い業態のため、他店との差別化が重要となる。ターゲットを明確にし、そのニーズに合わせたビジネスを行うことが重要である。商品だけでなく、キャッチコピーやWebデザインなども含め、一貫性のあるコンセプトを感じられるようなサイト設計をめざしたい。

SNSの活用

近年、ネットショップの運営においては、SNSを用いた広告・宣伝の重要性が増している。SNSには情報拡散のための仕組みが多くあり、話題になれば多数のユーザーに一挙にアプローチすることができる。そのため、SNSからの集客を意識した経営が重要となっていくだろう。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

ここでは自宅での開業を想定した。開業タイプとしては自社サイト出店とし、Webサイトの制作はデザイン面にも力を入れる想定で、専門の業者に外注するモデルとした。

商品の仕入れ費用については、あくまで参考程度の金額として記載している。商品の種類や仕入れ数など、さまざまな要因で変化する項目のためである。

開業資金のイメージ図

(2)損益モデル

a.売上計画

売上に関わる項目としては、1日にWebサイトを訪れる平均訪問数や平均客単価が挙げられる。配送体制などの流通の問題はあるが、営業日数はネットショップのため実店舗に比べ、営業日数を増やすことも可能である。

また、ネットショップでは、サイトを訪れたユーザーのうち何%が商品を購入するかという指標が重要であり、この指標は「コンバージョン率」と呼ばれている。ここではECサイトの平均コンバージョン率といわれる2%で試算した。

売上計画例の表

b.損益イメージ(参考イメージ)

 損益のイメージ例の表

※標準財務比率は「無店舗小売業(その他の小売)」に分類される企業の財務データの平均値を掲載。
出典は、東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」。

c.収益化の視点

単に販売するのではなく、「何(商品・サービス等)」を「どのように」・「どのような人に売る」のか、といったテーマ設定が重要となる。ネットショップは参入障壁が低い分、競争が激しくなることが予測される。うまくいった業態が後発店舗に真似されるという可能性もある。コンセプトを明確にし、他店との差別化(ブランド化)を図ることが重要である。

開店までに準備すべきことは、会計処理・経理・在庫の仕入れルートの確保・仕入れ値・トラブルがあった場合の対処方法などが挙げられる。ネットショップは、システムとしては24時間365日対応可能だが、問い合わせ対応や商品発送などの作業は人間が行う必要がある。そのため、実店舗と同様、営業体制・営業時間を明確にしておくことが、顧客の混乱を防ぐために求められる。

また、やはり実店舗と同様の特徴となるが、ネットショップを立ち上げる前に、できるだけたくさんの顧客(見込み客)を掴まえておくことも大切である。事前の市場調査、ニーズ把握及びコンセプトの明確化などが準備として求められる。加えて、ランニングコストを低く抑え、余分な在庫を抱え込まないことなど、店舗運営における基本的な注意事項は、ネットショップでも同様に重要となる。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。
(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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