業種別開業ガイド

ファストフード

2023年 1月 25日

トレンド

外食産業は、コロナ禍の影響を最も大きく受けた業種の一つと言える。「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」などに伴う時短営業や休業対応に加え、消費者も外出を自粛し、不要な接触や密を避けるように変化。こうしたことにより多くの外食店が売上を減少させただけでなく、それまでのビジネスモデルからの転換を余儀なくされた。

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そんな外食産業にあって、唯一コロナ以前比でプラス成長を遂げているのがファストフードだ。ファストは「迅速な」という意味であり、短時間で調理し、提供できる軽食をいう。洋食系フランチャイズ店では、ハンバーガー、ホットドッグ、タコス、ピザ、フライドポテト、サンドイッチ、アイスクリームなどがあり、和風系フランチャイズ店では、牛丼、うどん、そば、ラーメン、カレー、たこ焼き、おにぎり、回転ずしなどを提供するなど、扱う内容は幅広い。

形態としては、セルフサービス、カウンターサービス、テイクアウト、デリバリーがあり、コロナ禍では、テイクアウトやデリバリーの中食を利用する人が増えている。

洋風ファストフード店についていえば、ドライブスルーを完備することにより持ち帰り需要が大幅に増えた。飲食業の売上高ランキングではフランチャイズチェ-ンの寡占となっており、1位が「すき家」や「なか卯」を展開しているゼンショーホールディングズ、次に、すかいらーくホールディングズ、日本マクドナルドが占めている。

ファストフード店の概況

ファストフード店開業の課題

ファストフードは手頃な価格でおいしく、また調理も複雑ではないものが多く、初心者でも扱いやすいとされている。大手ファストフードチェーンのフランチャイズ店であることが多く、独立店の数は多くはない。フランチャイズ店の場合、経営のノウハウをはじめ、仕入れや提供するメニューはもちろん、作り方に至るまでマニュアル化されていることが一般的で、その「やりやすさ」がメリットだ。また、大手のブランド名を使えるので、最初からある程度の集客ができるのも魅力である。

一方で、初期投資コストとして加盟料や保証金などが必要になるほか、ロイヤリティ負担が加わってくる。さらに、一人で切り盛りするようなスモールスタートが切りにくいという点も、独立店との大きな違いであろう。

ただし独立店の場合にも、適切な店舗あるいはフードトラックの準備などで、まとまった資金は必要になる。その上で、メニュー開発やコンセプト設計、事業計画作りと資金繰り、日々の営業対応、広告宣伝、採用・教育といった運営に関わる全業務を自ら行う必要がある点も忘れないでおきたい。

フランチャイズ経営のメリット

  • 大手の名前を利用できるので、最初からある程度、集客ができる。
  • フランチャイズチェーンの本部から経営のノウハウから商品のつくり方まで受けることができる。

フランチャイズ経営のデメリット

  • 運営に関して自由度が低い。開店時間や商品の価格設定も運営者が決められないことがある。
  • 本部に支払いをする必要がある加盟契約料、保証金、ロイヤリティまた、契約期間などがあるので、契約前に条件が負担にならないか留意する。
  • ブランドイメージで売り上げが左右される。他店舗で異物混入や食中毒、または不祥事があり、ブランドイメージが下がってしまったとき、その影響を受けてしまう。
  • アルバイトが休んだり、繁忙期に人手が足りなくなる場合、長時間労働になることもある。

経営ポイント

  • 「早い」「安い」であっても質・量ともにお客様を失望させないことが大切になる。
  • マニュアルだけの経営では売り上げが伸びないのも事実。競合が多く競争が激しいので、店舗限定のメニューやその土地ならではの商品を販売することで売り上げを伸ばす工夫が必要。
  • 売上高のアップを図ることも必要だが、コストコントロールにより収益力を確保することが必要。
  • 差別化戦略としては、「高付加価値化」と「低価格化」に二極化している。「高付加価値化」は大都市における好立地での収益を重視した戦略として効果があり、「低価格化」は若者層の多い地域での売上高を確保する戦略として効果がある。

開業の10ステップ

開業の10ステップ

「食品衛生責任者」と保健所の「営業許可」も

調理営業を基本とするファストフード店の開業には、「食品衛生責任者」の設置が義務付けられている。各都道府県知事等が定める養成講座を受講(調理師や栄養士等の有資格者は不要)すれば取得できるため、開業までに済ませておくこと。その上で保健所の営業許可取得も必須だ。

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開業資金

新規に店舗を取得する場合には、物件取得費や賃貸料のほかに壁紙の張り替え、電気工事・照明設備の設置、水回りの工事などの内装工事が必要だ。ただし、フランチャイズ店の場合は、契約後にフランチャイズの本部と一緒に物件を探すことになるため、自分の好みの場所で開業をすることが難しい場合が多いので注意すること。こうした費用のほかに加盟金や保証金などを本部に支払う必要がある。

開業時に本部に支払う費用の例

運転資金については、家賃や原材料費、光熱費などのほか、フランチャイズ本部に対してロイヤリティや広告宣伝費などを支払う。

開業後に本部に支払う費用の例

また、次のような細かい支出もある(一例)。

その他支出の例

従業員の採用

フランチャイズ経営の場合、店長が一人で店を回していくのは難しいと考えたほうがよい。
従業員を採用する場合、パート(主婦層が多い)かアルバイト(若年層が多い)といった雇用形態がほとんどである。アルバイト・パートの募集は研修期間を考えて、開店日の1か月前くらいが目安となる。

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※開業資金の数値は、出店状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)