業種別開業ガイド
立ち食いそば・うどん店
トレンド
1.進化してきている立ち食いそば・うどん店
立ち食いそば・うどん店の歴史は、1966年に『名代 富士そば』の原点となる店が渋谷に開業したことが始まりと言われている。当初は、でき上がりの速さと安さを打ち出した店舗が主流であった。高度経済成長期ということもあって都市部にサラリーマンが集中し、昼食時に料理ができ上がるまで長時間待たされることのない、(回転率のよい)立ち食い店が支持された。
現在では、立ち食いそば・うどん店の数も増え、ファストフード店も含め早くて安い食事を提供する店の選択肢は増えた。そのため、従来のように、早くて安いだけでなく、味はもちろん、利便性や居心地のよさなど、新たな付加価値を付け加えた店も出てきている。
2.大手チェーン店の店舗数は増加
立ち食いそば・うどん店業界においては、チェーン店が好調であり、店舗数を伸ばしている。代表的なチェーン店である『小諸そば』『名代 富士そば』『ゆで太郎』の出店状況を見ると2015年当時に3ブランド合わせて328店舗であったのが2018年には386店舗(プラス18%増)に増加している。出店先の多くが大都市圏の駅前、駅近、ビジネス街、繁華街である。
これら店舗数増加の背景には、そば・うどんが健康的な食べ物であると見直されてきたこともあると考えられる。また、消費者の支持を得るために、持ち帰りメニューの導入、カウンターテーブルに椅子を設置するなど、新たな付加価値を付ける工夫や業態改善に努めてきたこともあると言える。
立ち食いそば・うどん店の特徴
店舗の多くは5~15坪程度であり、狭い立地でも好立地であれば開業が可能である。薄利多売の商売であるため、回転率をいかに上げるかが成功の鍵となる。そのため大手チェーン各社はオペレーションの効率化を図っている。
また、大都市圏には個性的な立ち食い店もいくつかある。たとえば、内装をおしゃれにし、カウンターバーのような雰囲気を出した店や、こだわりのあるメニューを打ち出した店、トッピング具材の取り放題を打ち出した店などである。中にはランチタイムに、学生やサラリーマンが長い行列を作る人気店もある。それらの店は客単価も高めとなっており、今までになかったタイプの立ち食い店と言えるだろう。
そば・うどん店業態 開業タイプ
あらかじめコンセプトを定め、それに沿って店舗タイプを選定することが重要となる。
(1)チェーン店
効率化の追求に適した店舗形態であると言える。食材は、麺、トッピングの具材などが半調理加工された状態で、本部から店舗に提供される。品質は均一化されており、食材の調達コストは本部による大量仕入れで低く抑えられ、価格競争力も高い。また、知名度を元に安定した集客力もある。
チェーン店は大別すると、本部が直営展開する店舗と個人などが加盟して運営する店舗に分かれる。独立開業を目指す人にとっては、フランチャイズチェーンの加盟店としてスタートすることも可能である。フランチャイズに加盟した場合は、加盟金と月々の売上に応じたロイヤリティを本部に支払わなければならないが、店舗運営ノウハウに関する指導を受けることができる。この業態に初めて参入する場合は、検討してもよいだろう。
(2)個人店
チェーンに属さず個人で店舗運営を行っていくタイプである。自由な店舗運営が可能であり、メニュー開発も独自の判断で自由に行うことができるのが強みである。
競合は、他の立ち食いそば・うどんチェーン店やファストフード店になると考えられる。競合店に対しては、独自の特徴や魅力、メニューや味、素材のよさなどをアピールしていくことで差別化を図ることが重要である。前述のように、個性的な店舗で人気を博しているのもこの業態である。
開業ステップと手続き
(1)開業のステップ
開業に向けてのステップは、主として以下の8段階に分かれる。
(2)必要な手続き
立ち食いそば・うどん店の開業に際して必要な主な許可や届出は、以下の通りである。
メニューづくり
- 狭い店舗内で1~2名という少人数でのオペレーションを前提にしているため、手の込んだ料理の提供は難しい。そのため、そば・うどんを基調にしながら、トッピングの工夫や、丼物やカレーライスといった簡単な調理で済むメニューの提供、そして、上記のメニューを組み合わせたセットメニューの提供が行われる。
- メニュー数の限界をカバーするため、季節を感じさせる限定メニューや、地元の食材を使ったご当地メニューなどを開発して、顧客に飽きさせない工夫をすることも大事である。
- 狭い店舗であるというデメリットを克服するため、持ち帰りメニューを加えることは、売上アップ施策として有効である。
必要なスキル
料理をスピーディに提供しなければならないため、オペレーション効率化のノウハウ修得は必須である。チェーン店の場合は、このノウハウを研修やマニュアルなどで身に付けることが可能である。個人店の場合は、自らの創意工夫で効率化を実現しなければならない。個人で開業する前に、立ち食い店にスタッフとして入社し、スキルやノウハウを身に付けることも検討したい。
また、個人店の場合は、店舗運営やメニュー開発のために、経営や消費者に関する見識(決算書、消費者動向、食の流行など)も身に付けておくことが望ましい。
開業資金と損益モデル
(1)開業資金
立ち食いそば・うどん店は、5~15坪程度の狭い店舗でも開業可能であり、開業に要する費用は他の飲食業態に比べて低く抑えられる。しかし、薄利多売の商売であるため、人通りが多く、かつ、サラリーマンや学生の多い好立地の物件を探し出す必要がある。
【参考】
店舗面積約10坪、席数換算15席の立ち食いそば・うどん店(個人店)を開業する場合の必要資金例
(2)損益モデル
■売上計画
店舗の立地や業態、規模などの特性を踏まえて、売上の見通しを立てる。平日、土曜、日曜で来客予想数を変えるなど、細かく作りこむことが重要である。
(参考例)立ち食いそば・うどん店(個人店)
■損益イメージ(参考例)立ち食いそば・うどん店(個人店)
- ※個人事業主を想定していますので、営業利益には個人事業主の所得が含まれます。
- ※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なります。
(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)
掲載日:2018年11月