業種別開業ガイド
そば・うどん店
トレンド
(1)ユネスコ無形文化遺産にも登録された和食
2013年12月、「日本人の伝統的な食文化」である「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、海外からも注目されるようになった。国内でも、例えばそばにはルチンやポリフェノールが含まれ、毛細血管の強化、動脈硬化や脳血管疾患の予防の可能性など、健康面からも注目されている。また、うどんは食パンなどに比べて低カロリーであることも知られており、ダイエット食品として利用する人も多い。
(2)2013年から拡大し続けるそば・うどん店市場

そば・うどん店の市場規模は、2017年で1兆2,749億円であり、2013年から着実に拡大している。これは文化遺産登録により注目されたことがプラスに働いているものと思われる。
(3)老若男女、幅広い層の利用者をもつ

従来、顧客の主流だった35~59歳男性の利用額は減り、代わって35~59歳女性の利用額が増えてきている。この背景には、『はなまる』『丸亀』『麦まる』といった新しいタイプのセルフ型店が登場してきたことがあげられる。低価格なうえ、ヘルシーで味にもこだわる小綺麗なうどん店が、若者や女性、家族連れなどの新規顧客を取り込んでいる。
そば・うどん店の特徴
そば・うどんには地域性がある。青森県の「津軽そば」、岩手県の「わんこそば」、長野県の「信州そば」、香川県の「讃岐うどん」、秋田県の「稲庭うどん」などが有名であり、産地ではご当地のそば・うどん店が多い。
これら地方店舗の大都市および全国への進出も行われている。たとえば、讃岐うどんのチェーン店はセルフ形式で販売する店舗を全国で展開している。
また、十割そば(そば粉100%を使って打ったそば)など、製法にこだわりをもった店舗も多く存在している。店頭では、作業場の前面をガラス張りにして、手打ち作業や製麺作業を外から見えるようにしているところもある。

そば・うどん店業態 開業タイプ
あらかじめコンセプトを定め、それに沿って店舗タイプを選定することが重要となる。
(1)専門店
たとえば、秋田の「稲庭うどん」専門店など、ご当地伝統のそば・うどんを専門的に提供する店舗タイプである。その店でしか食べることのできない本場の麺が売りで、観光客やそば・うどん愛好家などが主なターゲットとなる。また、土産用や贈答用に乾麺の販売をしているところもある。

(2)大衆型店
提供するものは一般的な麺であり、そば・うどんのほかにも丼物やカレーなどのメニューを加えて提供する店舗タイプである。繁華街など人通りの多い場所で営業されることが多い。価格帯は低めに設定している。

(3)ロードサイド型複合店
本格的なそば・うどんを提供すると同時に、ほかの和食メニューも提供する和食レストランに近い店舗タイプである。広い駐車場をもち、価格帯は専門店と大衆型店の間に設定され、ファミリー層をターゲットにしている。
(4)ファストフード型店
ファストフード型店としては、いわゆる「立ち食い」店が原型であるが、近年では、広く清潔な店内でゆったりと食事のできるタイプのセルフ型店が普及してきている。この新しいタイプの店は、ロードサイドやショッピングセンターのフードコート内などにも多く展開している。会計は自販機による前払いで、サイドメニューやトッピングメニューは顧客が選び、食器の返却までを行う。
開業ステップと手続き
(1)開業のステップ
開業に向けてのステップは、主として以下の8段階に分かれる。

(2)必要な手続き
そば・うどん店の開業に際して必要な主な許可や届出は、以下の通りである。

メニューづくり
- 専門店であれば、ご当地商品のブランドを活かしたメニューづくりを行う。食事だけでなく、土産や贈答用のニーズにも応えるため、乾麺などの店頭販売やネット販売も行えるだろう。
- 大衆型店であれば、そば・うどんのほか、丼物やカレーライスなどの品揃えに加え、低価格でも利益の出るメニューづくりを行う。メニュー数は店内のオペレーションに見合ったものとし、少数のメニューを高い回転率で出していくのが理想的である。
- ロードサイド型複合店であれば、高級なそば・うどんのほか、寿司、天ぷらなどの和食メニューも提供する。少し高めの価格設定ではあるが、顧客満足度を上げることで、ファミリー層のリピート客を作ることができる。
- ファストフード型店は、フランチャイズ本部がチェーン展開しているところが多い。食材の大量仕入れ、セントラルキッチンシステムを活用した半加工食材の店舗搬入などで、徹底したコストダウンを行っている。また、店舗オペレーションの効率化により、低価格でのメニュー提供が可能となっている。
- そば・うどん店においては、夜の「居酒屋需要」の獲得も重要となる。これが実現できれば、来店頻度・客単価の向上が可能になる。居酒屋メニューの開発やアルコール類の充実なども重要である。
必要なスキル
そば・うどんは、産地や材料によって最適な調理法が違うため、本格的なそば・うどん店を目指すならば、専門店で技術を身に付けたい。一方、大衆型店やファストフード型店の場合は、短期間の研修やマニュアルの修得で必要な技術を身に付けることもできる。
また、一経営者として起業するのであれば、調理のスキルだけでなく、経営に関する見識(オペレーション、決算書、消費者動向など)も身に付けておくことが望ましい。
開業資金と損益モデル
(1)開業資金
たとえば都心で15~20坪、席数20~30席程度のそば・うどん店を開業する場合、開業資金の相場はおよそ1,000~1,500万円だと言われている。また、麺を自家製にする場合は製麺機の導入が必要であり、さらに100~200万円の資金が必要となる。
【参考】
繁華街:店舗面積約20坪、席数30席のそば・うどん店(大衆型店)を開業する場合の必要資金例

(2)損益モデル
■売上計画
店舗の立地や業態、規模などの特性を踏まえて、売上の見通しを立てる。平日、土曜、日曜で来客予想数を変えるなど、細かく作りこむことが重要である。
(参考例)そば・うどん店(大衆型店)

■損益イメージ(参考例)そば・うどん店(大衆型店)

- ※個人事業主を想定していますので、営業利益には個人事業主の所得が含まれます。
- ※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なります。
(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)
掲載日:2018年11月