業種別開業ガイド

陶芸教室

トレンド

(1)40代以上の女性に人気

公益財団法人日本生産性本部「レジャー白書2017」によれば、2016年における陶芸を趣味とする人の数は140万人だった。本人口は、2009年には470万人ほどいたが、2010年以降、減少が続いている。本人口は男女ともに減少しているが、特に男性人口の減少が大きい。年代別・性別に見て参加人口が多いのは、60代女性(構成比17.9%)、70代女性(構成比16.7%)、40代女性(構成比14.6%)などの順となっている。

(2)市場規模は約272億円

同資料によれば、余暇活動として陶芸を行う人たちの年間平均活動回数は12.3回であり、1回あたりに使う費用は平均1,580円とされている。本費用には教室などの会費と材料費が含まれている。上記の参加人口と年間平均活動回数、そして1回あたりの使用金額を加味すると、陶芸教室の市場規模は約272億円程度と推測される。

(3)新たな動き

陶芸の産地では、観光PRの一環として陶芸体験の場が多く設けられている。不定期ではあるが著名な陶芸家を講師に呼んでワークショップを開催する自治体などもある。自治体や陶芸団体が主催する陶芸教室では、地元の陶芸家たちが講師として活躍している。

また、都市部での教室では、両親に贈るウェディングギフト制作としての陶芸体験会や、生け花教室やドライフラワー教室、日本茶教室とのコラボ・イベントを開催し、陶芸への関心を喚起するところもある。

陶芸教室の特徴

陶芸教室では、土を練るところから成形、絵付けするなど陶磁器の制作技術全般を教える。

日本の陶磁器の産地は、福井県(越前焼)、愛知県(瀬戸焼)、滋賀県(信楽焼)、京都府(清水焼)、岡山県(備前焼)、山口県(萩焼)、佐賀県(有田焼)などが有名であり、それぞれの産地に根差した焼き物の教室が、観光客などを対象に数多く展開されている。そのような産地以外でも各地で教室が開かれている。

陶芸教室で制作される陶磁器は、初心者向けとして、湯飲み、茶わん、皿などが扱われ、経験者や上級者になると、美術的な要素を含めたものまでが対象となる。

陶芸教室業態 開業タイプ

(1)教室のタイプ

a.体験型
初めて陶芸に触れるといった初心者向けの教室である。陶磁器の産地や観光地に多く存在し、陶磁器の土産物店の併設も数多く見受けられる。

ターゲット層は幼児からお年寄りまで幅広い。幼児は保護者同伴であれば参加可能なところが多く、簡単な粘土細工などを教えている。電動ろくろは小学生以上で使用され、茶わんや湯飲みづくり、そして絵付けまでを体験する。

料金体系は、大人(高校生以上)で、基本料金が1,000円前後のところが多い。小・中学生向けにはより安価な設定にし、夏休みの自由研究などの需要を取り込んでいる。

b.技能向上型
陶芸を趣味とする人たちを対象とする技能向上を目的とした教室である。対象は、初心者から上級者まで幅広い。立地としては、都心など人が多く集まりやすいところに教室を出し、会員制で月会費を徴収するスタイルが多い。

標準的な受講時間は、1回2.5時間程度で月4回の受講である。料金体系は、入会金と月会費(受講料、材料費、設備費の合計)から成り、入会金は1万円前後、月会費は8,000円前後である。上級コースでは、入会金が2万円~3万円、月会費は1万円~2万円の設定が目安となる。

受講生の作る作品のレベルは高く、定期的に作品展を開催したり、ホームページ上で受講生の作品を紹介したりしている教室が多い。

(2)事業規模

総務省「経済センサス」によれば、陶芸教室のような「教養・技能教授業」の事業所数は、従業者数4人以下のところが全体の約80%を占めている。ほとんどの教室が個人事業など、小規模な事業所だと考えられる。

開業ステップ

(1)開業のステップ

開業に向けてのステップは、主として以下の5段階に分かれる。陶芸教室を開業するにあたって必要な許認可などは特にない。

すでに自身で広いアトリエをもっているなら、そこで教室を開くことも可能だが、公民館などが提供している貸し会議室などを教室として利用することも可能である。

(2)必要な手続き

陶芸教室を開業するにあたって必要な許認可などは特にない。

コースづくり

体験型教室の場合、生徒のスキルに関係なく、作品別に教室を開催するとよい。陶磁器の産地や観光地であれば、地元に由来する焼き物の作り方等を教えると喜ばれるだろう。なお、観光客を対象とする場合は、粘土で作品の型までを作ってもらい、窯焼きして仕上げた完成品を後日、送り届けることになる。

技能向上型教室の場合、生徒のスキル別に教室を開催する。初級コースでは、湯飲み、茶わん、皿といった日用品の一般的なタイプの陶器づくりを教え、上級コースでは、花瓶や急須など、難易度の高い陶器の作り方を教えるほか、生徒の自主性に任せた美術工芸品的な要素のある作品制作をサポートする。

生徒集めに関しては、ホームページや案内用看板の作成、SNSなどでの呼びかけ、地元のフリーペーパーなど、地域広報誌などへの広告掲載、周辺家庭へのチラシ配布などをするとよいだろう。

必要なスキル

陶芸を教えるに足るレベル(少なくともセミプロと呼ばれるレベル)の技量を有していることが前提ではある。また、展示会などに積極的に作品を出展し、個展を開くなどして、世に自身の名前を出す努力が必要である。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

陶芸教室開業に際しては、作業板やヘラなどの道具のほか、ろくろ、電気窯の購入が必要である。価格は、道具類で3万円前後、ろくろが1台10万円前後、電気窯が1台200万円前後である。物件に関しては、内装外装費用、棚や什器の購入費用、広告宣伝費用などがかかるため、初期投資額は、400万円前後と思われる。

(2)損益モデル

■売上計画(参考例)
教室の立地や特性を踏まえて、売上の見通しを立てる。会員制の教室の場合は、生徒数を予測しやすいが、観光地などにおける体験型教室の場合は、繁忙期と閑散期の差が激しいので売上予測には注意を要する。

(参考例)自己所有のアトリエを教室とし、従業員を雇わず、自分1人のみで陶芸教室を開業する場合を想定している。

■損益イメージ(参考例)

  • 個人事業主を想定しているので、営業利益には個人事業主の所得が含まれる。
  • 開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況などにより異なる。

(本シリーズのレポートは作成時時点における情報を元に作成した一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

掲載日:2018年9月

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