業種別開業ガイド
介護士派遣業
- 介護士派遣事業には、ケアマネージャーが常駐し要介護者に対してケアプランの作成などを行なう「居宅介護支援事業」と、介護福祉士や訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の居宅に訪問して介護サービスを提供する「訪問介護事業」がある。居宅介護支援事業と訪問介護事業を兼務することが一般的で、かつメリットも大きいことから、ここでは両方を兼ねる事業所を介護士派遣事業所と考える。
1.起業にあたって必要な手続き
居宅介護支援事業および訪問介護事業を行なう場合、都道府県知事の指定を受けることが必要である。指定を受けるためには、原則的に法人格が必要である。ただし、1つの法人が居宅介護支援事業および訪問介護事業の2つの事業を展開することは問題ない。
指定基準
- ※訪問介護員:
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一般に介護福祉士と呼ばれ、試験や検定はない。行政や民間の「養成研修機関」が実施する講座を受講することで取得できる。資格には1級~3級までがある。
- ※介護支援専門員:
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一般にケアマネージャーと呼ばれ、看護師、社会福祉士、介護福祉士、保健師などの資格・免許を持ち、かつ900日以上の実務経験があり、「実務研修受講資格試験」に合格の後、32時間の演習を受講した者。
- ※サービス提供責任者の要件:
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介護福祉士、実務者研修修了者、初任者研修修了者であって、3年以上介護等の業務に従事した者。
指定申請の手続きは、都道府県に用意してある手引書を参考に申請書を作成、基準に合致していれば指定を受けられる。申請書提出からおおむね2カ月程度必要である。
2.起業にあたっての留意点・準備
1)人材の確保
居宅介護支援事業および訪問介護事業を創業する場合、ケアマネージャーとヘルパーの確保が最初のハードルになる。居宅介護支援事業所が増加するなか、ケアマネージャーは不足傾向である。また、質の高いヘルパーの確保に頭を痛めている事業所も多い。
2)顧客の開拓方法
顧客の開拓には主に以下の方法が必要になる。
- 行政の介護保険課からの紹介
- 各地域にある居宅介護支援センターからの紹介
- 病院のソーシャルワーカー(相談窓口)からの紹介
- 地域の民生委員や老人会などからの紹介
- 既存利用者の口コミによる紹介
3)サービスを提供する上での留意点
- 均一で質の高い介護サービスを提供するためには、マニュアル化、ヘルパー教育などによる管理が重要である。
- 利用者と事業者間が契約書を交わすことが望ましく、したがって契約書、重要項目説明書などの用意が必要である。
- 利用者とのトラブルが多発している。買物代行における金銭の預かり時の対応策、プライバシー保護などに細心の注意が必要である。
4)初期段階の固定費負担
利用者の多寡にかかわらず、管理者の他にケアマネージャーと常勤換算方法で2.5人以上のヘルパーを確保することが要件になっている。事務所費用を含めた固定費がかさみ、利用者の少ない初期段階は厳しい経営が予想される。
5)サービス提供と保険料給付のタイムラグ
提供したサービスは1カ月ごとに集計し、利用金額の1割を利用者が負担し、残りの金額は介護保険から支給される。利用者負担する部分は基本的に現金で支払われる。保険から支給される部分は、集計・請求の翌々月、国民健康保険連合会から給付される。サービスの提供から、実際に保険料が給付されるまでにタイムラグが発生することから、まとまった金額の運転資金を確保する必要がある。
3. 必要資金例
都市部の幹線道路に面したビルの2階、15坪の事務所を開設する場合の必要資金例
(単位:千円)
4. ビジネスプラン策定例
1)売上計画例
- ※顧客はすべてケアプラン作成後、サービスの提供を受けるものとする
- ※開業月のケアプラン作成は10件、その後毎月1件ずつ増加(2年間)と仮定する
- ※生活援助と身体介護の割合を2:1と仮定する
1)売上計画例
(単位:千円)
- ※開業当初の管理者(社長)がサービス提供責任者を兼務する
サービス提供時間が450時間、900時間を突破するごとにサービス提供責任者を新規雇用する
ケアプラン作成は8,500円/件
生活援助サービスの平均単価は2,080円/時間と計算
身体介護サービスの平均単価は4,020円/時間と計算 - ※必要資金、売上計画、シミュレーションの数値などにつきましては出店状況によって異なります。 また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。
最終内容確認日2014年3月