起業マニュアル
起業支援サービスの活用:行政書士
行政書士は、役所に提出する許認可等の申請書類の作成並びに提出手続代理、権利義務や事実証明に関する書類作成等を行う国家資格者であり、会社設立や許認可申請のサポートや企業経営に対するアドバイス等を行っています。
以下では、行政書士に業務を委託する際のメリットについて解説します。
行政書士に業務を委託する際のメリット
1.融資や助成金に関するアドバイスを受けることができる
創業時に資金に余裕があるという方はめったにいないのではないでしょうか?そこで、融資や助成金を活用することを考える方も多いと思われます。
国や地方公共団体は創業支援のための各種施策を行っていますので、創業時は国や地方公共団体の「制度融資」を利用するチャンスです。創業時の融資・借入の申請に際しては、創業計画や経営計画の策定が必須です。行政書士に相談すれば、この創業計画や経営計画の策定の支援・アドバイスを受けることができます。
また、創業時に利用できる助成金には、会社設立の時期から人の雇い入れの時期まで細かく指定されている場合があります。起業前から行政書士に相談しておくことで、申請に必要な準備をタイミングを逸することなく計画的に進めることができます。
2.理念や事業に合致した定款を費用を抑えて作成できる
・自身が描いた会社設計を定款に適切に表現できる
定款は会社の根本を定めるものです。従来に比べ定款の記載事項にも自由度が高くなったため、定款作成にあたって多くの事項を検討することが必要になりました。自ら記載事項の詳細な意味を確認しながら定款を作成しようとすると、かなりの時間がかかります。また、項目の意味が曖昧なまま雛形を参考に定款を作成してしまうと、その後の会社運営に支障が出てしまう心配もあります。さらに、会社設立後に定款を変更するには、株式総会の開催が必要であり、登録免許税がかかります。そのため、最初からしっかりとした内容の定款を作成したいものです。行政書士に定款作成を依頼することで、定款に盛り込むべき項目について相談しながら、自らが描く会社設計に合致した永く使える定款を作成できます。
・事業に必要な許認可等を見据えたアドバイスを受けることができる
新たに事業を始める場合、飲食業、建設業やリサイクル業などでは許可や届出、登録などが必要となる場合があります。こうした許認可は、実際に事業を始めるまでに取得すればよいのですが、会社設立の段階から許認可の条件を考慮に入れておくことも重要です。
たとえば、会社の定款に特定の事業名が書かれていない、あるいは取締役に特定の業務経験を有する人がいないと許認可が下りない場合があります。行政書士に定款作成を依頼することで、許認可申請を見据えた起業準備が可能となります。
・電子定款で設立コストを抑えることができる
株式会社設立時の定款認証は公証役場で行います。定款には紙で作成される定款と電子定款とがあり、定款認証には所定の費用がかかります。費用においては公証人手数料と印紙税が大きなウェイトを占めます。
<定款認証に際してかかる費用>
- 紙で作成される定款の場合
- 公証人手数料...5万円
- 印紙税(収入印紙)...4万円
- 電子定款の場合
- 公証人手数料...5万円
- 印紙税(収入印紙)...0万円
上記のように、紙で作成する定款に比べ、電子定款は印紙税4万円の節約が可能です。合同会社の場合、公証役場での定款認証は必要ありませんが、定款作成は必要です。この場合も電子定款とすることで、印紙税を節約することができます。ただし、自身で電子定款を作成するためには電子証明書や署名キットなどの環境を整える必要があり、それだけで数万円かかってしまいます。そこで、電子署名を持ち電子定款作成に対応している行政書士に依頼すれば、リーズナブルに定款を作成することができます。
3.事業に必要な許認可の申請代行を依頼できる
事業に関する許可や届出、登録などの許認可申請は自身で行うこともできますが、多くの場合、多数の複雑な書類や資料を作成・提出する必要があり、手間や時間がかかるものです。せっかく作成した書類等に不備があれば、許認可等を受けることができず、事業開始が遅れてしまいます。許認可申請の専門家である行政書士に依頼すれば、書類作成や申請を代理してもらうことができますので、他の開業準備や営業活動に使う時間を確保することができます。また、飲食店の営業許可など、許可前に役所の立入検査がある許認可がありますが、立入検査に当該申請に関する専門知識を有した行政書士に立ち会ってもらうことで、役所への適切な対応も可能になります。
さらに、一旦許認可を受けた後の管理者や名称等の変更や定期的な報告書作成・提出等の手続きについても依頼することができます。
4.契約書や規定文書の作成等を依頼できる
・契約書作成、チェック支援
自社製品・サービスの販売・提供に関する契約については自社で契約書を準備するのが一般的です。それら契約書の作成を行政書士に依頼することができます。
日常的な契約では、大手会社からの定型契約書に機械的に記名・押印を求められることも少なくないかと思われます。しかし、契約相手から提示された契約書の場合、自社にとって不公平な条項が盛り込まれている可能性があります。契約前にその条項がどの程度不公平で、その不公平が許容に耐えられるのかを検討することが大切です。行政書士が契約内容についてチェック・アドバイスすることで、契約により発生しうるリスクを理解し軽減することができます。
・規程文書、社内文書作成支援
経営にあたって必要となる次のような書類の作成を依頼することもできます。
- 議事録(株主総会、取締役会等)の作成
- 社内規程、文書作成のルールや様式の作成
- 社内文書、社外文書の作成 等
5.会計記帳や給与計算をアウトソーシングできる
行政書士に会計帳簿の記帳や給与計算を任せることができます。会社設立当初はどうしても忙しく、記帳などを行う時間がとりにくいものです。事務処理業務をアウトソーシングすれば経営に専念する時間を確保できる上、経理等の担当者を雇う人件費等を削減できます。(ただし、決算申告に関しては、税理士や公認会計士の独占業務ですので、行政書士はできません。)
6.顧問契約で総合的なサポートを受けることができる
行政書士と顧問契約を締結すれば、上記業務を総合的にサポートしてもらうことができます。顧問契約を締結すれば、各種行政機関や企業間の手続き書類、契約書の作成とチェック、社内規程や文書の整備等の分野でサポートを受けられますし、事業で必要な許認可等の法改正や助成金等に関する情報提供を継続的に受けることもできます。許認可等の管理も任せられますので、許認可の更新なども確実に行えます。また、経営や企業法務・民事法務に関する疑問や悩み等を相談することもできます。相談内容によっては他の士業や専門家と連携して対応してもらうこともできます。
上記のように、行政書士に依頼して受けられるサポートは様々ですが、報酬コストも発生します。依頼する際は、受けたいサポート(手続きごとに依頼するのか、顧問契約とするのかも含めて)とコストを比較検討して依頼しましょう。
また、行政書士によっても得意分野や専門分野は異なります。依頼する際は、自身のニーズにあった行政書士を選ぶとよいでしょう。
(執筆・監修:行政書士 新津 廣美)
最終内容確認 2018年2月
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