起業マニュアル

リスクマネジメント

実験「白黒ゲーム」

袋Aと袋Bがあります。Aには白い石が50個と黒い石が50個入っています。Bには割合は分かりませんが白黒合計100個入っています。目隠しして袋の中から取り出した石が白か黒かを当てるゲーム、当たったら賞金がもらえるとします。あなたはどちらの袋を選んで挑戦しますか?その選択の理由は?

リスクとは何か

このゲーム、リスク許容度を判定する実験です。人は、中身が分からないもの、正体が分からないものをリスクと判断します。この実験ではAを選ぶ人が多く、その理由は「なんとなく安心だ」ということです。Aは、白50対黒50、つまりどちらにしても確率50%ということが「分かって」いますので、安心だ、不安はないと感じるようです。確率は分からないが一発勝負とか、もしかすると確率が高いかもしれないほうに賭けるという考えかたではなく、「安心だから=リスク回避」が最優先の判断材料になっています。

リスクに対応する方法

この実験から分かることは、「リスクの中身や正体が分かれば、人は選択・行動しやすくなる」ということです。転職や起業などの大きな選択では、このような「正体が分からないこと」が多く、これをリスクと捉え、行動をためらうことがありますが、このリスクの正体が分かれば、対策を立てることも、回避することもできます。ここではリスクについて、細かく考えていきます。

リスクマネジメント

リスクを分類してみると大きく「個のリスク」と「公のリスク」に分けることができます。個のリスクとは、主に個人に起こる変化に起因するものです。個人の努力で計算や管理できる主観的なリスクであり、大きく3つあるといわれています。公のリスクは、社会との関係のなかで相対的に発生するものです。他者(他社)との比較で変化するもので管理は難しいのですが、努力でカバーできることも多くあります。

個のリスク

(1)金銭的リスク

就職していれば得られたであろう給与をもらえなかったり、事業に失敗して生活資金を使い果たしてしまうというリスクです。対応策としては、自己資金を投資して事業を起こすとき、いくらまでなら失っても耐えられるかを計算してみましょう。貯金、家族の収入、ローン、子供の教育資金などを総合的に勘案して、使い切ってもよい金額がわかったら、それが金銭的リスクの上限ということになります。

(2)身体的リスク

健康リスクといっても良いと思います。誰よりも早く商品やサービスを完成させるため、残業や休日出勤も少なくないでしょう。好きなことに没頭するあまり寝食を忘れて取り組むことも多いでしょう。意義あることとはいえ、体調を崩しては元も子もありません。そもそもあなたがいなければそのアイデアは実現しないわけで、無理は禁物です。また、上場を目指すなら、法律に則った勤務体制も必要です。

(3)感情のリスク

「起業とは、崖から飛び降りてから、急いで飛行機を組み立てるようなものだ」と言ったのは世界的起業家で著名な投資家でもあるリード・ホフマンです。絶好調のときもあれば、地獄に落ちる寸前のときも、ジェットコースターのように目まぐるしく訪れます。ビジネスは中長期的な取り組みですから、日々の出来事に一喜一憂せず、失敗を成長の機会とポジティブに捉えたり、信頼できるパートナーを得ることなどで感情の乱高下をコントロールしましょう。

公のリスク

(1)社会的リスク

起業するということは、まだ誰も知らない会社を作り、誰も知らない商品やサービスを売るということです。本当に売りたいもの、価値あるものを世に出すという大きな意義がある反面、会社のカンバンやブランドには頼れません。社員とその家族を守る義務もあります。すべての社会的責任はあなたが負うことになります。理念やビジョンに賛同してくれる仲間や応援団を多く集めることが、このリスクを軽減することになります。

(2)知識のリスク

最新の知識や技術だと思っていても、世界のどこかでみなさんと同じような天才が、同じようなアイデアを考えているかもしれません。みなさんの地域では価値のあるものが他の地域では役に立たないかもしれません。法律や制度を良く知らなかったために事業を中断せざるを得ないようなことに直面するかもしれません。技術や制度、商慣習、市場や顧客を徹底的に調査することがリスク回避につながります。

リスクは創られる

アメリカ同時多発テロ事件のあと、アメリカ国内では飛行機での移動をリスクと感じ、自動車で移動する人が急増しました。心理的には無理もないことですが、統計値では自動車での死亡事故は航空機事故の何十倍も多いことが分かっていました。事実、自動車死亡事故が通常の何倍も起こったそうです。何が本当のリスクなのかは感情や雰囲気ではなく統計や事実に基づいて判断すべきものです。起業はリスクが高いって、本当にそうでしょうか。

まとめ

自分にとって何がリスクなのか、そのリスクをどこまで許容できるのかなど、リスクを細かく定義して分析すれば、かなりの場合にリスクヘッジすることができます。繰り返しとなりますが、人間は正体のわからないもの、予測ができないものに不安を感じるものです。リスクの正体や本質を理解することで漠然とした不安を取り除くことができ、正しい選択や対策を講じることが可能になります。