起業マニュアル

起業支援サービスの活用:商工会議所

商工会議所の起業支援サービス

商工会議所は、1953年に制定された商工会議所法に基づいて運営されている自由会員制の公益経済団体です。現在、全国の都道府県に500カ所以上の商工会議所があり、政策提言活動、各種検定試験、中小企業や地域・産業の振興活動などを行っています。
全国各地に存在する商工会議所は、地域密着型の中小企業支援を行っており、その一環として創業者支援に力を入れた各種事業も行っています。以下では、商工会議所が行っている代表的な創業者支援活動をご紹介します。

1. 創業に関する窓口相談

創業予定者(希望者)向けの創業専門の相談窓口を設置している商工会議所があります。創業予定者(希望者)とは、「自分の会社を設立したい」「自分の店を持ちたい」「資格や技術を活かして新しい事業を起こしたい」などといった意向を持つ人です。
創業は、ITなど先端技術を活かしたベンチャー企業立ち上げ、小売店・飲食業の開業、のれん分けによる開業など様々ですが、いずれのスタイルに対しても専門家がアドバイスを行います。
相談内容は、「創業を進める上で何が必要になってくるのか」「途中で生じてくる問題にはどのようなものがあるのか」「各種問題に対してどの様に解決していくのか」などがありますが、経営・金融・税務・法律・労務・貿易・技術問題などの視点からアドバイスが行われます。
商工会議所によっては、「創業支援窓口」といった創業専門の窓口ではなく、一般の「経営相談窓口」で創業に関する相談を受け付けているところもあります。相談にかかる料金は、原則無料のところが多いようです。

2. 創業支援融資

商工会議所では、創業者を対象とした融資制度を独自に設けているところがあります。たとえば、東京商工会議所は東京信用保証協会との提携で「創業支援融資保証制度」を創設しています。これは、創業予定者に対し、東京商工会議所が事業計画書を審査し、保証協会が最大2,500万円の融資(原則無担保)を提携金融機関に斡旋するものです。
東京商工会議所は、具体的には次のような支援を行います。

(1)創業計画審査

創業予定者から「創業計画書」および「認定申請書」の他、審査に必要となる書類の提出を受け、審査のうえ「認定書」を発行します。

(2)創業ゼミナール

週1回30分の個別相談と2時間半のゼミナール形式の講座を実施し、創業を進めていく上でのアドバイスを行います。

(参考URL)東京商工会議所「創業支援融資保証制度」

3. 創業セミナー、イベント

全国の商工会議所では随時、経営に関する各種セミナーやイベントが開催されています。同様に創業者を対象としたセミナー、イベントも数多く実施されています。これらセミナー、イベントは、「創業塾」「起業塾」「創業セミナー」「起業カレッジ」などの冠名称がタイトルに付けられることが多いようです。
セミナーのスタイルは、(1)ゼミナール形式のものと(2)講義形式のものがあります。

(1)ゼミナール形式

参加者20名程度の少人数セミナーで、ディスカッションを豊富に取り入れた講座です。ゼミナール形式の講座は、毎回同じメンバーで数回、継続的に行われるのが一般的です。対象者は、ある程度創業する内容が詳細に決まっている人が多く、参加メンバーが創業のための準備を実際に進めるうえで問題となる点などを提示し合い、講師がそれぞれの課題に対する解決策をアドバイスし、全メンバーがその内容を共有する、といった形式が多いようです。

(2)講義形式

新規開業に必要な基本的知識を、短時間で一通り伝授するコースであり、サラリーマン、学生、主婦など創業準備中の人や、将来、創業を考えている人であれば、性別・年齢にかかわらず誰でも参加できます。
講義内容は、毎回、参加者の関心の高い業種やカテゴリ別のテーマが設定され、業界特有の事情や開業ノウハウ、開業に必要な知識などが解説されます。

創業者向けイベントとしては、フォーラム形式の基調講演やパネルディスカッション、交流会などが、適宜開催されています。これらのイベントでは、創業予定者だけでなく、創業後間もない経営者たちも集い相互の情報交換なども利用されています。

<女性向け創業セミナー、イベント>

商工会議所ならではの特徴としては、「女性向け創業セミナー、イベント」を挙げることができます。これは、全国商工会議所 女性会連合会が主体となって推進しているものであり、この動きに合わせて各地の商工会議所でも女性向けの創業セミナー、イベントが実施されているところがあります。
参加者は、独立開業をめざす主婦、OL、専門家、学生、また、創業後間もない女性経営者まで幅広く、講義の内容は、活躍中の女性起業家などの体験発表、起業プラン作成、経理・法務知識や開業手続きなど経営に必要な知識の解説などとなっています。
また、全国商工会議所 女性会連合会は、『女性起業家大賞』という賞も設けています。同賞は、「女性の視点で、革新的・創造的な企業の創業や経営を行い、事業を成功させている女性起業家を顕彰し、督励・支援することにより、産業界における男女共同参画社会の実現を推進し、もって、わが国経済の発展に資する」ことを目的として2002年に創設されたものであり、2013年第12回の表彰が行われました。

(参考URL)全国商工会議所女性会連合会 第15回『女性起業家大賞』

上記の他にも商工会議所では、経営者向けに、ホームページや窓口などで、地域の法人設立窓口、税務関連の届出窓口、年金事務所、労働基準監督署などの情報提供を行っています。また、融資関連についても、都道府県や市区町村が独自に設けている融資制度や助成金・補助金に関する情報提供も行っています。全国各地に存在する商工会議所は、地域に密着した経営に役立つ情報を豊富に保有しています。最寄りの商工会議所のホームページは定期的にチェックされることをお勧めします。
また、商工会議所では、創業支援のほかにも、一般企業向けの資金融資、福利厚生、人材研修、商談会、交流会など様々な情報や便益を提供していますので、創業後も継続して活用することも可能です。