起業マニュアル

儲ける仕組みの考え方

儲ける仕組みの考え方

儲けの仕組みは、収益モデルと言い換えることもできます。収益モデルとは、単に利益を上げる手法を説明したものではなく、事業にまつわるモノとカネの流れを構造化したものです。つまり、所有する経営資源をどう活用するのか、顧客との関係性はどう維持されるのか、提供価値はどのように届けられるのか、対価としてのお金はどのように自社の口座に入金されるのかなどを説明したものであり、ビジネスの進展に伴う自社や顧客の変化などを総合的に考慮する必要があります。

収益モデルは競争力

収益モデルは、企業の生死を左右することもあるとても重要なものです。同じような商品・サービスを扱っていても、「あの企業はどうして儲かっているんだろう」「なぜユーザーが多いんだろう」と不思議に思うことが少なくありません。収益モデルはビジネスモデルであり、実は差別化要因、競争力の源泉でもあるのです。

8つの収益モデル

1. 直接提供モデル

直接提供モデルは、「製品やサービスを開発・製造し、それを顧客に直接販売して売上を上げるもの」であり、原材料や直接人件費など原価と売上高の差額が利益となります。自動車や家電製品、食料品などを製造販売するもののほか、美容院や病院、会計士など各種専門家からのノウハウ提供など、直接顧客にサービスを提供し対価を得るものもこのモデルに分類されます。

2. 小売り卸売りモデル

小売り卸売りモデルは、「商品やサービスを自社で製造することなく、他社から仕入れて販売するもの」で、仕入れ価格と売上高の差額が利益となります。書店、百貨店、スーパー、コンビニ、飲食店などがわかりやすい事例です。これを実店舗だけでなく、インターネット経由でおこなっているビジネスも数多く存在します。

3. 広告モデル

広告モデルは、「商品を掲載主体にして、他社の広告を掲載することで広告料を得るもの」で、広告掲載料が利益となります。新聞やファッション誌はそのものの売上も得られますが(直接提供モデル)、実は広告掲載料のほうが大きな売上になっています。民放テレビを無料で視聴できるのはコマーシャルが入るからですし、インターネット検索サービスや動画サービスが無料で利用できるのも同じ仕組みです。

4. 別形態活用モデル

別形態活用モデルは、「同じ商品を別形態で販売したり、その商品等を利用できる権利を与えることで利益を得るもの」です。週刊誌に連載されていたマンガが週刊誌掲載時と同じ内容のままで単行本になったり、過去のヒット曲を集めたベスト版が販売されたりするものが該当します。また、アニメ等の人気キャラクターを別会社の商品に掲載させて利用料・ライセンス料を得る場合もこのモデルと言えます。

5. 消耗品モデル

消耗品モデルは、「基本的な商品やサービスの価格を無料もしくはかなり安く設定して販売したうえで、その商品を使い続けるための消耗品やメンテナンス等を追加購入してもらうことで、後日利益を確保するもの」です。家庭用プリンターやウォーターサーバー、最近ではオフィス向けコーヒーサーバーやお菓子スタンドなどがこれに該当します。

6. 継続前提モデル

継続前提モデルは、「商品やサービスの利用期間に注目し、一定以上長期間の利用を前提に価格を設定し販売するもの」です。具体的な事例としては携帯電話やフィットネスクラブなどの各種会員制サービス、毎号付録がついてきて全巻そろえると何かが完成する情報誌などがあります。全期間の売上がコストを確実に上回るような販売価格で、月額上限料金や定額制を設定することで、ユーザーにお得感や継続する必要性を感じてもらうのがコツです。

7. マッチングモデル

マッチングモデルは、「モノやサービス、情報を持っている人や会社と、そのモノ等を探している、欲しがっている人や会社を引き合わせ、紹介料や成約報酬などを得るもの」です。採用、旅行、住宅情報、中古車、結婚式場など、以前からリアル店舗や雑誌等で提供されているサービスです。ネット上で行うことで顧客を広げると同時にコストを下げることができることから、いわゆる仲介サイトなどが多数運営されています。

8. フリーミアムモデル

フリーミアムモデルは、「数多くのユーザーを獲得し基本サービスを無料(フリー)で利用してもらい、その中の一部が有料ユーザーへ移行したり、課金サービスを利用する(プレミアム)ことを想定して提供するもの」です。ゲームや音楽など、いわゆるアプリの大多数がこのモデルで運営されています。インターネット上のサービスとして相性が良く、既存事業である新聞や雑誌、映画、業務用ソフトウェアなどにも広がりを見せています。

収益モデルを使いこなす

複数の収益モデルを使いこなすことで、顧客満足度を高め、同時にヘビーユーザーとして売上の機会を増やすことができます。某有名レシピ共有サービスでは、多くの無料会員からヘビーユーザーが有料会員化し(フリーミアム・継続前提)、ネットを通じて調理器具や食材を購入し(直接提供・小売卸売)、このサイトに別の企業の広告を掲載し(広告)、ユーザーの情報を提供し(マッチング)、レシピ情報等を雑誌など別コンテンツとして販売しています(別形態活用)。

収益モデルはビジネスモデル

収益モデルを変えることで新たな収益機会を獲得するケースが増えています。腕時計や高級車、洋服などこれまでは購入(直接提供・小売)が当たり前でしたが、ユーザーが年会費を支払うことでその期間は何度でも利用できる継続前提モデルや消耗品モデルを採用するサービスが増えてきました。また、コンビニは小売モデルの代表格ですが、チケット端末やATMを置くスペースを提供して対価を得て(直接提供モデル)います。

技術の変化による収益モデルの変化

米国タクシー配車サービスのUberでは、利用者が集中する時間帯にその混雑度合いに応じて料金が高くなるシステムを採用しています。これはタクシー全車の稼働状況と利用者のニーズを一元的に把握できるシステムがあって実現したものです。深夜早朝は2割増という一律的なものではなく、時々刻々変化する実際の混雑状況に応じて料金が変化するのが特徴で、利用者の納得感を損なわず収益機会を逃さない実によくできた仕組みです。

収益モデルを身近に感じること

日々利用するサービス、スマホのアプリ、通勤通学中に目にする商品や広告など、身の回りにはいろいろな収益モデルが存在します。それらがどのような収益モデルで構築・運営されているのかを考えることが、自社のモデルをどう構築すると良いかのヒントにつながります。