起業マニュアル
事業コンセプトの作り方
事業コンセプトは、起業のアイデアをビジネスの構想として具体的に整理したものです。「誰に」「何を」「どのように」といった視点でまとめることで、事業概要が端的に表現されます。
事業計画書の作成の際にも「コンセプトを明確に」と言われますので、アイデアをまとめる段階から、わかりやすいコンセプトづくりを意識しましょう。
なぜ、事業コンセプトが必要か
1.起業準備がスムーズになる
事業コンセプトづくりは、事業の骨格を固めていくプロセスになりますので、その後の起業準備が進めやすくなります。例えば、今後、事業計画書を作成する際にも、最初に作成した事業コンセプトが計画書のベースになって、事業内容を具体化します。事業コンセプトがしっかりしていれば、仮に部分的な変更があっても、大きな後戻りがなく、進められるはずです。
2.関係者の協力を得やすくなる
事業コンセプトをしっかり作ることで、創業時の仲間や金融機関等の関係者からの理解と協力が得られやすくなります。特に、これまでにないビジネスを立ち上げ、金融機関から資金を借りたり、取引先企業と連携して取り組む場合には、事業コンセプトを共有することが重要です。この事業コンセプトが、いわば「合言葉」のような役割を果たし、関係者間の誤解や衝突を未然に防いでくれるのです。
3.決断がぶれなくなる
事業コンセプトを作成すると、これから直面するさまざまな課題に対して、考え方にブレがなくなり、首尾一貫した事業展開がしやすくなります。例えば、どこにお金をかけるべきか、何を大切に集客するか、など起業準備を進める段階で、意思決定がしやすくなるはずです。これは開業後の運営でも、業務の優先順位や軽重の判断に役立ちます。
事業コンセプトのまとめ方
事業のアイデアを「誰に」、「何を」、「どのように」に分けてまとめると、事業内容が明確になります。この3つを聞いたときに、考えているビジネスが明確にわかるのが理想です。
1.誰に
「誰に」は、「対象顧客」を指します。顧客ニーズが多様化した現代では、起業時から万人受けする商品・サービスを開発することは困難です。誰に対して商品を販売するのか、ターゲットを明確にすることで、商品開発や広告宣伝などの焦点が定まります。顧客に対しても専門性をアピールできるため、事業活動の効果が高まります。
「誰に」の具体的な例としては、「医学部の学生」「転職活動中の30代会社員」「旅行が趣味の高齢者」などがあります。年齢や性別、職業、嗜好など、様々な切り口、組み合せがあるため、製品の特性に基づいて絞り込むことが大切です。
2.何を
「何を」は、対象顧客に提供する商品・サービスそのものを指します。ここで大切なのは、売り手として顧客がその商品に求めている「価値」を的確に捉えることです。
有名な例ですが、ドリルを購入する顧客が求めている価値は、ドリルを使用して穴をあけることであり、ドリルそのものではありません。穴をあける事ができるのであれば、ドリルでなくても構わないのです。
商品を購入し、使用することで、顧客が求めている価値は何か。売り手の視点ではなく、顧客の視点に立って考え抜き、自身の提供する商品の価値を明確にしておくことが大切です。
3.どのように
「どのように」は、商品・サービスを提供する「方法」を指します。顧客に商品を提供するうえで、接客や付帯サービスの品質を高めたり、内装や備品にこだわったりすることで、顧客にとっての商品の価値を高めることができます。同じ商品を販売している会社が複数あっても、顧客はその商品の価値をより高く感じられる会社に集まります。同じ商品を扱っても、提供方法を工夫することで、ライバル会社と違いを出せるチャンスになります。
魅力のある事業コンセプトとは
魅力のある事業コンセプトは、「顧客にどんなメリットが提供できるか」が明確にわかるものです。そのためには、自身が考えている事業アイデアの「ウリ」が事業コンセプトを読んで理解できるのがよいでしょう。
顧客になりそうな人に「そんな商品やサービスがあったら、ぜひ利用したい」と思ってもらえれば、事業の魅力が伝わる事業コンセプトになっているはずです。