起業マニュアル

経営理念

経営理念

経営理念とは、経営する上での重要な指針であり、企業の根本的な価値観を示すものです。やや堅苦しく聞こえるかも知れませんが、平たく言えば「このように経営していく」という企業の決意表明です。
起業前や起業直後では、なかなか決められないこともありますので、ある程度、経営が軌道に乗ってから、定めるのも一つです。

経営理念を定めることの意義

経営理念は、明文化することで、内外の関係者に向けて自社の価値観を表明し、共有することができます。企業内部に向けては、経営者や社員の判断や行動の基準を与えます。また、企業外部に向けては、顧客や取引先に自社の基本的な経営姿勢を伝えることができます。
重要なのは、それにより、企業・組織としてのベクトルを揃え、首尾一貫した事業展開が可能になることです。

日本政策金融公庫の日本公庫総研レポート「中小企業による経営危機への対応と持続的な競争優位獲得への取り組み」によれば、利益率(総資本利益率)が高く、持続的競争優位を持つ中小企業の特徴として「経営理念が従業員に浸透している」を重視する企業の割合が高いことが示されています。
経営者を含む社員が同じ価値観を共有して事業に取り組むことで、組織としての総合力も発揮しやすくなり、結果として高い利益率に繋がっている可能性があります。

経営理念の例

経営理念には、事業を行う上での信条や行動規範的なもの、価値基準を示すものなど、さまざまなものがあります。ここで、経営理念の具体的な例をいくつか確認してみましょう。
※企業理念、使命、フィロソフィ、クレドなど、呼称・定義に違いはありますが、ここでは「経営する上での重要な指針」を総称して経営理念としています。

1.アサヒ飲料株式会社

「わが社は飲料事業の分野で社会や市場の変化に対応し、高品質で安全な商品と真心のこもったサービスの提供を通じて、豊かで健康な食生活の実現に貢献し、限りなく発展する企業を目指す。」
(出典)アサヒ飲料株式会社HP

2.伊藤忠商事株式会社

「伊藤忠グループは、個人と社会を大切にし、未来に向かって豊かさを担う責任を果たしていきます。」
(出典)伊藤忠商事株式会社HP

3.株式会社サイゼリヤ

「人のため・正しく・仲良く」
(出典)株式会社サイゼリヤHP

4.楽天株式会社

「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」
(出典)楽天株式会社HP

いずれも企業・組織としての価値観が明示されており、経営に対する姿勢や顧客との関わり、社会に対する責任などが端的に述べられていると言えるでしょう。

経営理念を浸透させるための取り組み

営理念は、それが経営者を含む社員によって実践されることで、はじめて意味を持ちます。しかし、組織内のすみずみに経営理念を浸透させることは容易なことではありません。朝礼や社内報など、ありとあらゆる場面でその重要性を訴え、繰り返し、周知徹底を図っていくことが大切です。ここでは、「経営課題別に見る中小企業グッドカンパニー事例集」より、横浜の老舗印刷企業における経営理念浸透の取り組みをご紹介します。

横浜の老舗印刷企業・後継者の挑戦!!~経営理念の浸透で会社を一つに~

<URL>

同社は2015年に「地球温暖化防止活動環境大臣表彰」を受賞していますが、これは経営者を含む社員が経営理念を真に共有し、実践してきた結果であることが示されています。

経営理念は重要である。ただそう言われても理解しにくいところもあるかも知れません。しかし、経営理念を定め、価値観を共有し、それを組織に浸透させていくことで、業務上のコミュニケーションや意思決定、会議での発言や上司への報告、プレゼンテーションのやり方、顧客対応なども変わり、それらが総体となって、組織としての強みに結びついていくのです。

最後に、経営理念は大切ですが、築き上げた価値観や行動規範に固執するあまり、新たな変革の機会を逃してしまっては本末転倒です。経営環境は常に変化しており、時には、新たなキャンバスに夢を描くように、新たな経営理念を構築していくことも重要です。