業種別開業ガイド

自動車整備業

2019年 11月 19日

トレンド

(1)業界動向

2018年度の自動車整備業の市場規模は、5兆5,295億円(2018年)と2013年対比で2.0%増となっている。このうち、専業の自動車整備工場2013年度対比では4.7%減少したものの、兼業自動車整備工場は4.5%増加、ディーラー工場も2013年対比で7.3%増加している。

また、2018年度の事業所数は、91,883事業場で、前年度と比較すると118事業場減(0.1%減)と3年連続の減少となった。指定工場数は30,075事業場で、前年度と比較すると92事業場増(0.3%増)となった。

総整備売上高(市場規模)単位:億円

出典:一般社団法人日本自動車整備振興会連合会「平成30年度 自動車分解整備業実態調査結果の概要について」をもとに編集
※専業とは自動車整備業としての売上が50%超、兼業は50%未満

(2)ハイブリッドカーの普及や自動運転自動車の進化

現在では、ハイブリッドカーなどの電動化が進んだ自動車の新車登録台数が上位を占めている。こうしたことが、ディーラー工場の売上が増加している要因として考えられる。ハイブリッドカーなどの整備の多くは、ディーラーで行われるためである。ただし、ハイブリッド車整備のための養成を受け、機器を備えれば、町の自動車整備工場でもハイブリッド車の整備は可能である。また、近年では自動ブレーキの搭載や自動運転など自動車の電子化が進展し、自動車整備においても車載式故障診断装置(OBD)を活用した検査が、近い将来行われる見込みとなっている。自動車整備工場は、単に自動車の整備にとどまらず、電子化の進展に対応できる高度な整備への対応も求められるようになることは確実である。

(3)町の自動車整備工場の動向

町の自動車整備工場の兼業事例では、中古車販売との兼業を行っている工場や、レンタカーとの兼業、人気の高い特定の車種に特化した自動車整備と販売を行っている工場などがある。このように兼業する理由は、従来の自動車整備事業の市場自体は縮小しており、自動車整備事業のみでは、業績の向上が難しいためである。整備そのものにとどまらず、自動車関連の他のサービスや物品販売などとの兼業を行うことが重要である。

ビジネスの特徴

自動車整備を行っている工場は、新車販売店(ディーラー)やカー用品店、中古車販売店などの業態の違い、排気量(大型や小型など)による対応区分がある。

業務内容から区分すると車検整備、定期点検整備、自己整備の3つに分けられる。その他の整備として、カーナビゲーションやETCの取り付け、板金などがあげられる。カーナビゲーションやETCの取り付けなどは比較的容易であり、かつ他の業務に比べ利益率も高い。

いずれの業務も工賃が主体で、回収は現金および短期売掛がベースである。このため回収サイクルは早く、運転資金の負担はさほどない。さらに、比較的利幅が高いその他業種の扱いを増やすことで、高回転・高収益の経営も望むことができる。

一方で、設備の老朽化に伴う更新需要は旺盛なため、一定の流動性を確保するほか、リースの活用なども検討事項となる。

開業タイプ

町中には、ディーラーの系列や大手チェーンの屋号にてビジネスを展開する系列型が多くみられるが、この記事では、営業ノウハウ、資金などの開業準備に努力を要するが、高収益が期待できる独立型について主に記載していく。

(1)中古自動車販売/買取との兼業 (古物営業法の許可申請が必要)

車の構造を熟知した自動車整備業としては最も取り組みやすい多角化と言える。顧客の要望を聞いた上で、品質や価格帯、ライフスタイルに合った車を一人一人に提案、業者間取引により中古車を仕入れる販売方法であれば、多くの在庫を必要としない。また、販売後の車検や点検整備について自社工場の利用へと容易に誘導することができる。さらに、中古車を販売した顧客が新車に乗り換える際には、買い取りにつながる可能性があるなど、長期的な関係を築くことが容易にできる。

また、小回りの利く整備工場であることを生かし、町会などの行事や運営に参加して代表者の顔を売り、自動車の整備や販売を手掛けていることを覚えてもらう。こうして築いた人脈を生かした営業展開を行い、狭い地区内でトップシェアを狙う事業展開も考えられる。

大都市圏であれば、人気が高く愛好家が多い車種に特化するのも、一種の差別化として考えられる。万人受けする車が新車として販売されがちな今だからこそ、所有する喜びが感じられる車種を求める愛好家が必ずいる。

愛好家を対象とする場合、ファンクラブなどを運営することで、遠方からの来店も導くこともできる。このような事業展開によって、自動車のカスタマイズ需要(部品の販売・取付)も見込むことができる。

(2)レンタカー事業との兼業

自動車整備を熟知していることを生かし、顧客から買取した自動車や業者間取引などで仕入れた中古車を貸出用として運用することで、新たな収益の確保と整備工場の稼働率向上につながる。

レンタカーとしての稼働と、自動車整備中の顧客への代車需要への対応を両立させるため、格安レンタカーチェーンやインターネットを活用したカーシェアリングサービスへの加盟が考えられる。

開業ステップ

(1)開業のステップ

開業のステップ

競争が激化しているなかで、自動車整備業を開業するのであれば、もう一歩進んだ工夫が必要である。つまり、『既存の同業他社との違いをどのように顧客に訴えていくのか』という視点(差別化)を持ったうえで、これからの事業計画を立てることである。

(2)必要な手続き

自動車整備業は許認可業種である。開業するには、基本法規である「道路運送車両法」に基づき、事業所ごとに地方運輸局長の承認を得なくてはならない。

自動車整備業には、点検・整備までの「認証工場」(検査は国の車検場で行なう)と、自社で点検・整備・検査までできる「指定工場」がある。ただし、「指定工場」になるためには、「認証工場」の認可を既に受けており事業実績も求められるため、ここでは新規開業に向けて「認証工場」に絞ってとりあげる。

「認証工場」の条件

現在は、「専門認証制度」が誕生しており、特定の装置の整備のみができるといった認証を得ることも可能となっている。各条件を整えたうえで、地方運輸局長に申請する。
なお、自動車整備業を始める場合、基本となる道路運送車両法以外にも、建築基準法、消防法、水質汚濁防止法、下水道法、騒音規制法、振動規制法、悪臭防止法などが適用される。これらの取扱いは地域によって大幅に異なっている。詳細に関しては、開業を検討している地域を管轄している市町村の担当部署で確認されたい。

サービスメニュー、カリキュラムなど

料金設定については、低価格を訴求する車検フランチャイズチェーンの拡大により多様化し始めている。また、社員教育の徹底については、「自動車整備業=サービス業」として認識し、整備士に対しても挨拶、接客などの基本を十分に指導する。

まずは以下の点に留意して取り組むと良い。

  • 周辺事業者の料金設定の動向を把握したうえでの価格設定
  • 個々の整備料金を一覧表にして顧客に提示するなど、料金体系をはっきりさせる。
  • 割引制度や休日整備
  • 複数の代金決済手段の提供

必要なスキル

品質に直結する部分である。内燃機関としての機械的な自動車だけでなく、ハイブリッド車や電気自動車なども普及しつつあり、最近はコンピュータ化が進んでおり、車載式故障診断装置(OBD)への対応も近々求められる見込みである。そのため、より高度な知識が求められており、メーカーの講習受講や電気系の資格取得などの取組みが必要である。
従業員を雇用する場合は、自動車整備士免許の区分についても留意する必要がある。ただし、資格保持者を採用できるとは限らないため、未経験者を採用し社内で教育し、試験を受験させるという取組みも必要となる。

開業資金と損益モデル

(1)開業資金

業種の性格上、一定以上の設備投資負担があり、初期投資の抑制は重要な要件となる。ここでは、幹線道路沿いの居抜き物件や中古機械の導入などにより初期費用を抑制した上で、開業することを前提に必要資金の例を示す。

【土地面積:200平米、建物床面積:135平米で開業する場合の必要資金例】

必要資金例の表

(2)損益モデル

a.売上計画

年間営業日数を312日として、平日よりも土日のほうが来店客は多いと考えられるため、以下のように分けてモデルを示す。

売上計画例の表

b.損益イメージ

標準財務比率(※)を元に、法人形態の場合の損益のイメージ例を示す。

損益のイメージ例の表

※標準財務比率は自動車整備業に分類される企業の財務データの平均値を掲載。
出典は、東京商工リサーチ「TSR中小企業経営指標」。

c.収益化の視点

自動車整備業は成熟産業であり成長を図ることは難しいが、ビジネスの工夫によりひとつの整備工場を成長させるのは不可能ではない。その一つの手段としては、愛好家が多くコンピュータ化が進んでいない車種に特化した事業展開が考えられる。

町の自動車整備工場では、電子化が進んだ最新自動車の整備が困難であることを逆手に取り、特に愛好家が多い車種の整備に特化する戦略は、大手ディーラーがとることはできない。ディーラーの第一のビジネスは新車を販売することだからである。このような、大手企業が対応困難な領域に特化してビジネスを展開するのは、成熟産業でビジネスを行う中小企業においては極めて重要である。

また、コストの大半が整備工場の人件費、つまり売上の多寡にかかわらず、減少させることが難しい費用である。したがって、整備工場の稼働を高めることが収益の確保につながる。工場の稼働を高めるには、立地や自動車関連の他のサービス、物品販売などにおいて工夫を図ることが欠かせない。

※開業資金、売上計画、損益イメージの数値は、出店状況等により異なります。

(本シリーズのレポートは作成時点における情報を元にした一般的な内容のものであるため、開業を検討される際には別途、専門家にも相談されることをお勧めします。)

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