起業マニュアル

パート・アルバイト採用の留意点~パートタイム労働法の概要

パートタイム労働法制定の経緯

雇用者全体の約4分の1(1,240万人)を占めるパートタイム労働者。いまやパートタイム労働者なくして企業活動は成り立たないと言えるほどに重要な役割を果たしていますが、労働条件や雇用環境において正社員との間にはまだまだ大きな格差があります。

パートタイム労働者がその有する能力を有効に発揮することができるよう、企業に対して、適正な労働条件の確保、教育訓練の実施、福利厚生の充実、そのほかの雇用管理の改善に関する措置、職業能力の開発・向上に関する措置などを講じるよう定めた法律が「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下、パートタイム労働法)」です。

少子高齢化、労働力人口の減少、女性の社会進出に伴いパートタイム労働者に対するニーズはますます高まっており、最近では、短時間労働者の仕事の内容は専門的な職種にまで広がりその責任も重くなる傾向があります。パートタイム労働法が誕生してから10余年、パートタイム労働者の多様な就業意識や就業実態を踏まえつつ、その意欲や能力を十分に発揮できるような雇用管理を行っている企業はまだまだ少ないのが現状で、短時間労働者の労働市場における重要性が高くなっても、賃金や教育、昇給・昇格制度の面で正社員との格差はなかなか縮小されません。

そこで、パートタイム労働者の待遇改善をうながし、正社員との待遇の差別を禁止した「改正パートタイム労働法」が平成20年4月より施行されました。

正社員であろうと短時間労働者であろうと、会社のために労働力を提供してくれる貴重な人材であることには変わりありません。少子化・高齢化によって中長期的には労働力不足が懸念される日本企業においては、重要な戦力となりうる短時間労働者の処遇には、こうした法律に基づいて、細心の注意を払っていく必要があります。

パートタイム労働法の概要

目的

少子高齢化による労働力人口の減少や、結婚・出産をした女性が安心して働ける社会づくりといったことを背景に、パートタイム労働者の待遇改善(正社員との均衡がとれた待遇の確保など)を目指した法律が「パートタイム労働法」です。具体的には、

  • 適正な労働条件の確保
  • 雇用管理の改善
  • 正社員への転換の推進
  • 職業能力の開発および向上に関する措置

などを講ずることによってパートタイム労働者がその有する能力を有効に発揮できるようにし、福祉の増進を図る内容が書かれています。

対象となる労働者

この法律が対象としているパートタイム労働者とは、

1週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される通常の労働者に比べて短い労働者

です。「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「準社員」などの呼称にかかわらず、正社員と比べて所定労働時間の短い労働者のことを指します。なお、国家公務員、地方公務員および船員には同法は適用されないこととなっています。

事業主の責務

事業主は、パートタイム労働者の就業実態、正社員との均衡などを考慮して

  • 適正な労働条件の確保
  • 教育訓練の実施
  • 福利厚生の充実その他の雇用管理の改善
  • 正社員への転換の推進

に関する措置を講じるよう努めなくてはなりません。

パートタイム労働指針の概要

パートタイム労働指針とは、事業主が講ずべきパートタイム労働者の雇用管理について具体的に示したものです。

労働条件に関する文書の交付

パートタイム労働者を雇い入れる際には、文書交付などによる労働条件の明示が義務付けられています。

  1. 労働契約期間
  2. 就業場所、従事する業務内容
  3. 労働時間(始業・終業時刻、残業の有無、休憩時間、休日など)
  4. 賃金(計算および支払方法、賃金締切日、支払時期)
  5. 退職(解雇事由含む)
  6. 昇給の有無
  7. 退職手当の有無
  8. 賞与の有無

就業規則の整備

パートタイム労働者を含め常時10人以上の労働者を使用する事業主は、パートタイム労働者に適用される就業規則を作成しなければなりません。
また、就業規則を作成、変更するときは、パートタイム労働者の過半数を代表する者などの意見を聴くように努めなければなりません。

差別的待遇の禁止

パートタイム労働者の働き方に応じて、均衡のとれた待遇を確保しなくてはなりません。

  1. 正社員と同じ内容の仕事をしているパートタイム労働者については、賃金などの待遇をパートタイム労働者であることを理由に差別的に取り扱うことができません。
  2. 1.以外のパートタイム労働者についても、仕事の内容や成果、能力や経験、意欲を考慮して、正社員とバランスが取れるような待遇(賃金の決め方、教育訓練の機会、福利厚生施設の利用など)をするよう努力しなくてはなりません。

正社員への転換

パートタイム労働者に対して、正社員に登用する機会を与えることが義務付けられました。具体的な対応例としては次のようなものがあげられます。

「研修」の在留資格の場合は、日本で就労することができません。研修として認められる活動は、公的な研修および実務作業を含まない研修です。

  1. 外部から正社員を募集する場合には、パートにも募集に関する情報を周知する。
  2. 正社員のポストを社内公募する際、パートにも応募する機会を与える。
  3. 一定の資格を有するパートを対象に、パートから正社員への試験制度を設けるなど転換制度を導入する。

待遇についての説明

パートタイム労働者から待遇について説明を求められたときには、誠実に対応することが義務付けられました。正社員との待遇に差がある場合には、職務や責任、配転などでどのような違いがあるためなのかを丁寧に説明する必要があります。

苦情処理・紛争解決援助

事業所内に苦情処理窓口などを設置し、会社とパートとの間で労働条件などをめぐるトラブルが発生した場合に自主的に解決できるよう努力することが義務付けられました。
なお、事業所内での解決が難しい場合には、

  • 都道府県労働局長による助言・指導・勧告
  • 都道府県労働局の紛争調整委員会による調停

などを活用した紛争解決援助システムもあります。

短時間雇用管理者の選任など

常時10人以上のパートタイム労働者を雇用する場合には、事業所ごとに「短時間雇用管理者」を選任するよう努めなくてはなりません。短時間雇用管理者は、雇用管理の改善に必要な措置を検討・実施したり、パートタイム労働者の相談に応ずることが主な職務です。

パートタイム労働者の待遇改善支援策

改正パートタイム労働法の施行にあたり、厚生労働省では事業主への支援策として以下の取り組みをしています。

均衡待遇推進コンサルタント

全国都道府県の労働局雇用均等室に「均衡待遇・正社員化推進プランナー」が配置されており、パート労働者の雇用管理の改善に関して無料で相談することができます。

(監修:社会保険労務士 富岡英紀・加藤美香)

関連ドキュメントのダウンロード

最終内容確認 2018年2月

同じテーマの記事