起業マニュアル
介護休業・短時間勤務規程
介護休業について
介護休業制度とは、女性もしくは男性従業員が、事業主に申し出ることにより、要介護状態にある対象家族を介護するために休業を取得することができる制度です(育児・介護休業法 第11条)。
育児・介護休業法で規定されている主な制度としては、介護休業制度のほか、介護のための勤務時間短縮措置等や休暇制度などがあります。
・育児・介護休業法
育児・介護休業法は、家族の介護を行う従業員の雇用継続等を通じて、従業員の職業生活と家庭生活の両立、および経済・社会の発展を目的として制定された法律です(育児・介護休業法 第1条)。この法律は、社内規定の「介護休業・短時間勤務規程」と密接に関わっているため、法律の概要を考慮しながら、規程を作成する際のポイントをご説明します。
介護休業・短時間勤務規程作成のポイント
1.対象者を限定する場合は、労使協定により定める
平成17年の育児・介護休業法の改正により、一定の要件を満たす期間雇用者も介護休業を取得することができるようになりました。そのため、対象者を限定しない場合は、原則として、アルバイトやパート従業員等であっても、本人が介護休業の取得を申し出た場合には、会社はこれを拒否することができません(育児・介護休業法 第12条)。
ただし、「介護休業・短時間勤務規程」とは別に、従業員の過半数代表者等と労使協定「介護休業等の適用除外者の範囲等に関する協定書」を締結することにより、介護休業の適用範囲から、下記の従業員を除外することはできます。
(なお、この協定は、「育児・介護休業等の適用除外者の範囲等に関する協定書」として、育児休業と併せて規定することもできます。)
- 勤続1年未満の者
- 休業申出のあった日から起算して93日を経過する日から6ヶ月を経過する日までに雇用関係が終了することが明らかな者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の者
2.介護休業の対象家族とは
要介護状態にある対象家族とは、負傷、疾病又は身体もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態にある次の者をいいます。対象となる家族の定義は、規程にも記載しておくと良いでしょう。
- 従業員の「配偶者」「父母」「子」「配偶者の父母」
- 同居しかつ扶養している、従業員の「祖父母」「兄弟姉妹」「孫」
3.育児・介護休業法で規定されている制度
以下に、育児・介護休業法で規定されているおもな介護支援制度を一覧表にまとめました。
本人から申し出があった場合に備え、規程には、利用に必要な手続きを定めたり、届出フォームを別途作成しておくと良いでしょう。また、育児・介護休業法で定められている制度の中には、導入が義務付けられていない(努力義務である)制度もあります。詳しくは、厚生労働省のホームページやパンフレット等でご確認ください。
なお、介護休業と同様に、一定の従業員を適用除外とするには、従業員の過半数代表者等との新たな労使協定の締結が必要です。
4.休業中の給与と介護休業給付について
「ノーワーク・ノーペイの原則」により、介護休業者の休業期間においては、無給とすること自体に問題はありません。その場合は、介護休業中は無給とする旨を規定しておいてください。
・介護休業給付金
雇用保険の一般被保険者が対象家族を介護するために介護休業を取得した場合で、所定の要件を満たした場合は、「介護休業給付金」を受給することができます。介護休業給付金の支給額は、原則として次の式で計算されます。
【休業開始時の賃金日額(介護休業開始前6か月間の賃金÷180)×支給日数】×67%
※介護休業中に休業開始前1カ月あたりの賃金の8割以上が支給されている場合は、介護休業給付金は支給されませんので、ご注意ください。
介護休業給付金は、対象家族の同一要介護状態につき、1回の介護休業期間(最長3カ月間)に限り支給されます。一方、要介護状態が異なることにより再び取得した介護休業については、通算して93日を介護休業期間の限度として給付金が支給されます。
介護に関する理解を深めることも大切
近年、家族の介護や看護を理由に、退職・転職を余儀なくされる人が増えています。介護は、育児と異なり、「いつからいつまで、どの程度の介護が必要か」という見通しが立てにくく、長期化すれば仕事との両立は困難であるとも考えられます。
一方、少子高齢化に伴い、企業は今後、労働力の確保が難しくなることが予想されます。介護を担う人は40~50代の管理職である場合も多く、企業としては、社内で重要な役割を担う人材を喪失する状況は避けたいところです。
しかしながら、多くの企業では、未だ介護に関する制度の整備や周知が遅れており、介護休業等の制度を利用する人自体もまだまだ少ないのが現状です。自分自身はもちろん、家族もやがては年をとるものです。まずは、従業員全員が介護に関する知識を深める機会を作ることや、従業員が負担している介護費用の一部を会社で助成するなど、企業としても雇用の継続を可能にするよう、介護支援体制を整えていけると良いと思います。
(執筆・監修:特定社会保険労務士 岩野 麻子)
最終内容確認 2019年7月
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