起業マニュアル
会計・経理の基本
会計・経理は「過去・現在のお金のやり取りを記録、管理する仕事」です。日々の取引の記録や決算書の作成だけでなく、債権・債務管理や出納業務など会社の屋台骨を支える重要な仕事です。
会計・経理の目的
会計・経理の目的は、日々の取引とお金の流れを記録、管理して、会社の経営成績と財政状態がわかるようにすることです。
なお、「財務」という言葉がありますが、会計・経理と区別されます。財務は会計・経理で作成した決算書などを元に、「未来」に必要な資金を調達する仕事です。一方で会計・経理は「過去・現在」のお金のやり取りを記録、管理する仕事といえます。
また、会計と経理を区別する考え方もありますが、会社や人によって定義は様々です。もっとも、創業期は全て1人で業務を行うこともありますので、本稿では会計・経理を「過去・現在のお金のやり取りを記録、管理する仕事」と定義して、創業期に必要な業務を見ていきます。
会計・経理の業務内容
会計・経理のメインとなる業務は以下のとおりです。
1.取引の記録
取引が発生したら、一般的には複式簿記の原則にしたがってその内容を記録し、帳簿にまとめます。手書きでもいいですが、事務効率化のために会計ソフトを使うといいでしょう。会計ソフトであれば、取引内容を入力さえすれば、必要な帳簿作成を自動的に行うことができます。
また、記録の根拠となる書類(領収書、レシート、請求書、契約書など取引に関係する書類全て)は、必ず取引先から受け取り、保存します。日付順に並べるなど、あとで見返すことを想定した保存をしてください。法律上、保存期間は書類によって異なりますが、10年間保存すれば間違いないでしょう。
2.決算・申告
(1)決算
日々の取引を記録し、帳簿を作成したら、これらを元に決算書を作成します。決算期に決算書を作成するのはもちろんのこと、月末月初にかけて月次決算を行うこともあります。
決算では主に以下を行います。
1)記録に抜け漏れがないかチェックする
特に売上の漏れは要注意です。請求書と入金記録(預金通帳など)を突き合わせて確認します。抜け漏れがあれば、記録を修正します。
2)帳簿の残高と実際の残高を一致させる
特に現金預金、棚卸資産、売掛金、買掛金は要チェックです。現金預金であれば金庫の現金や預金通帳の残高が帳簿と一致するか、棚卸資産であれば、実地棚卸しをして実際に保有する棚卸資産が帳簿と一致するか、確認します。もし違いがあれば、その原因を追究して、記録を修正します。
3)決算整理処理をする
減価償却費や引当金を計上したり、仮払金・仮受金を精算します。特に仮払金・仮受金は内容をチェックして、正しい費用、収益の項目で処理するか、返金処理をしてください。
4)決算書作成
貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書は最低限、作成します。
(2)申告
決算を終えたら、作成した決算書を元に、所得税や法人税など税金の申告をします。申告期限(原則、法人税であれば決算月から2ヶ月以内、所得税であれば翌年の3月15日まで)までに必ず税務署等に申告してください。
3.債権・債務管理
債権とは相手に金銭などを請求できる権利をいい、売掛金(販売代金を受け取る権利)が代表例です。一方、債務とは相手に金銭などを支払う義務をいい、買掛金(仕入代金を支払う義務)が代表例です。
これら債権・債務を管理するのも会計・経理の重要な業務です。会計ソフトなどを使って確実に管理していきましょう。
4.出納
出納(すいとう)とは、現金や預金の出し入れをいいます。お金を支出する業務であれば、経費、買掛金、給与の支払や出張旅費等の精算をイメージするといいでしょう。お金の収入としては、お客様からの入金が該当します。
このお金の出し入れを管理し、記録することが大切です。この出納業務を従業員に任せている場合は、必ず経営者か管理職など複数の人がチェック・承認する仕組みにしてください。不正やミスを防止する観点から重要です。
5.その他
その他、会社が持っている機械・設備などの資産の状況が帳簿と一致するか確認したり(資産管理業務)、製品の原価を集計・分析したり(原価計算業務)、事業者によって会計・経理の業務範囲は異なります。
今後のヒント
事業を行う上で会計・経理は必ず必要な業務ですが、事業者の得意不得意が出やすい分野といえます。もし不得意であれば、取引の記録や決算・申告業務は税理士に外部委託するなども検討しましょう。また、会計ソフトなどITをうまく使って業務を効率化し、本業に集中できる環境を整えることにも注意してください。
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