起業マニュアル

育児休業・短時間勤務規程

育児休業について

育児休業とは、女性もしくは男性従業員が、その養育する1歳に満たない子について、事業主に申し出ることにより、養育のための休業を取得することができる制度です。

育児休業は通常、子が1歳に達するまでの間に取得することができます。

父母がいずれも育児休業を取得する場合(いわゆるパパママ育休プラス制度を利用する場合)には、1歳2カ月まで育児休業期間を延長することができます。

保育所に入所できない等特別な事情がある場合には、1歳6カ月まで育児休業期間を延長することができます。さらに、子が1歳6ヶ月に達した時点でも保育所に入所できない等の事情が解消していない場合、再申請することで最長2年まで育児休業期間を延長できます。

3歳までの子を養育する従業員が希望すれば、所定労働時間の短縮措置(所定労働時間を6時間程度とする短時間勤務制度の整備)を講じることが事業主の義務となります。また、3歳までの子を養育する従業員がその子を養育するために請求した場合は、事業主は所定労働時間を超えて労働させることはできません。

・育児・介護休業法

育児・介護休業法は、子を養育する従業員の雇用継続等を通じて、従業員の職業生活と家庭生活の両立、および経済・社会の発展を目的として制定された法律です(育児・介護休業法 第1条)。この法律は、社内規定である「育児休業・短時間勤務規程」と密接に関わっているため、規程作成後も注意が必要です。最近では、平成29年10月に改正法が施行されていますので、すでに規程をお持ちの場合であっても、ここ数年改定を行っていないようであれば、見直しが必要です。

以下では、上記の法律の概要を考慮しながら、規程を作成する際のポイントをご説明します。

育児休業・短時間勤務規程作成のポイント

1.対象者を限定する場合は、労使協定により定める

平成17年の育児・介護休業法の改正により、一定の要件を満たす期間雇用者も育児休業を取得することができるようになりました。そのため、対象者を限定しない場合は、原則として、アルバイトやパート従業員等であっても、本人が育児休業の取得を申し出た場合、会社はこれを拒否することができません(育児・介護休業法 第6条)。

ただし、「育児休業・短時間勤務規程」とは別に、従業員の過半数代表者等と労使協定「育児休業等の適用除外者の範囲等に関する協定書」を締結することにより、育児休業の適用範囲から、下記の従業員を除外することはできます。
(なお、この協定は、「育児・介護休業等の適用除外者の範囲等に関する協定書」として、介護休業と併せて規定することもできます。)

  • 勤続1年未満の者
  • 子が1歳6ヶ月に達する前に雇用関係が終了することが明らかな者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の者

2.育児・介護休業法で規定されている制度

以下に、育児・介護休業法で規定されている主な育児支援制度を一覧表にまとめました。

育児・介護休業法で規定されているおもな育児支援制度の一覧表

本人から申し出があった場合に備え、規程には、利用に必要な手続きを定めたり、届出フォームを別途作成しておくと良いでしょう。

・育児休業申出書例(巻末参照)

また、育児・介護休業法で定められている制度の中には、導入が義務付けられていない(努力義務である)制度もあります。詳しくは、厚生労働省のホームページやパンフレット等でご確認ください。

なお、育児休業と同様に、一定の従業員を適用除外とするには、従業員の過半数代表者等との新たな労使協定の締結が必要です。

3.休業中の給与と育児休業給付について

「ノーワーク・ノーペイの原則」により、育児休業者の休業期間においては、無給とすること自体に問題はありません。その場合は、育児休業中は無給とする旨を規定しておいてください。

・育児休業給付金

雇用保険の一般被保険者が子を養育するために育児休業を取得した場合で、所定の要件を満たした場合は、「育児休業給付金」を受給することができます。育児休業給付金の支給額は、原則として次の式で算出されます。

【休業開始時の賃金日額(育児休業開始前6カ月間の賃金÷180)×支給日数】×給付率
※給付率:育児休業開始から180日目までは67%、180日目からは50%
※育児休業中に休業開始前の1カ月あたりの賃金の8割以上が支給されている場合は、育児休業給付金は支給されませんので、ご注意ください。

また、育児休業中は、本人・会社負担ともに社会保険料の支払いが免除されます。

4.育児休業取得者等に対し、不利益取扱いをしない

休業期間中に昇給や賞与の支払いを行わないことや、退職金算定にあたり休業期間を勤続年数に算入しない旨の規定を設けること自体に問題はありません。ただし、育児休業の申し出や取得を理由に、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない、と定められています(育児・介護休業法 第10条)。育児休業中の待遇や育児休業終了後の労働条件についても、あらかじめ定めておいて、従業員に周知させておくのが良いでしょう。

育児する人もそうでない人も働きやすい職場環境作りが大切

仕事と育児の両立は、たやすいことではありません。育児をしながら働いている人の多くは、時間に制約があるため、短時間で集中して仕事をこなさなければならず、帰宅後も育児で夜も満足に眠れない日が続く場合もあります。また、少子高齢化により、日本の労働力人口はこれからさらに減少していくといわれています。人口の減少は日本経済を冷え込ませる大きな要因ともなりうることから、社会全体で育児をする従業員を支えることは非常に重要なことといえます。。

ただ、一方で、育児休業や短時間勤務制度を利用する従業員のことを考えるあまり、他の従業員に業務が集中してしまうケースがあることも問題です。ある職場では、短時間勤務制度を利用する従業員が、終わらなかった仕事を当然のように同僚や部下に任せて帰ることから、短時間勤務者と他の従業員との間に溝ができてしまった例もあります。もちろん、このような職場ばかりではありませんが、これでは、短時間勤務者を応援しようという職場の雰囲気は薄れていってしまいます。

育児休業や短時間勤務制度の導入に際しては、制度利用者と他の従業員との間に確執が生じたりしないよう、職場の風土にも留意しておくことが必要だといえます。

(ご参考)育児休業申出書例

育児休業申出書

[申出日]  平成   年   月   日
[申出者]         部        課
氏 名                  印

下記のとおり育児休業の申出をします。

(執筆・監修:特定社会保険労務士 岩野 麻子)
最終内容確認 2019年7月

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