起業マニュアル
消費税の基礎知識
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消費税および地方消費税(以下、消費税という)は、事業として対価を得て行われる資産の譲渡・貸付・役務の提供をその課税対象としています。すなわち、ほとんどの商品やサービスの消費に対して課税される間接税というわけです。
つまり、事業者に負担を求めるのではなく、流通の各段階において順次課税され、最終的には消費者が税金分すべてを負担することになります。しかし、実際に納税しているのは生産・流通・小売段階の事業者です。課税対象となる商品などがいくつかの生産・流通・小売段階を経ている場合、各段階の取引で消費税が課税される仕組みになっているため、そのままでは二重三重の課税が行われることになってしまいます。
そこで、各事業者は、
を納付することになっています。
消費税は商品やサービスに課税される税金ですが、すべての商品やサービスに課税されるわけではありません。消費税の性格になじまないもの、社会政策上の配慮によるものなど、一定の取引を消費税では非課税と定めています。そのため、事業者は仕入れたもの、あるいは売り上げたものが課税対象であるかどうかの判断をし、課税額を計算しなければなりません。
そこで、次に消費税の計算方法についてみていきます。
消費税の計算方法
消費税の実質的な税率は5%です。しかし、実は消費税(国税)の税率は4%と定められています。これに、地方消費税の税率として消費税額の25%(消費税率換算で1%)が加えられて、実質的な税率が5%となっているのです。
消費税(国税)・地方消費税の納税額は次のように計算します。
課税売上高とは
消費税の課税売上高とは、消費税の課税取引の売上高からその取引にかかわる売上返品、売上値引や売上割戻にかかる金額(消費税額を除く)の合計額を控除した残額を言います。
この課税売上高は、次の計算で求められます。
取引は、消費税の課税取引、非課税取引、課税対象外の取引の3つに区分されます。
また、輸出取引は免税となっています。
課税仕入高とは
課税仕入高とは、消費税の課税取引の仕入金額(消費税額を除く)の合計額からその仕入にかかる仕入返品、仕入値引や仕入割戻などにかかる金額(消費税額を除く)の合計額を控除した残額をいいます。
仕入とは、商品の仕入や原材料の仕入のほかに、
建物・機械の購入や賃借・賃加工・運送などのサービスの購入も含みます。
ただし、人件費は含みません。
具体的には、次のような勘定科目が原則として課税仕入に該当します。
中小規模事業者が受けられる特例
消費税の計算には手間がかかるため、小規模事業者の納税事務の負担軽減を目的として次のような特例が定められています。
- 納税義務の免除(免税事業者)
- 簡易課税制度
納税義務の免除(免税事業者)
基準期間の課税売上高が1,000万円以下の小規模事業者は、
「消費税課税事業者選択届出書」を提出しない限り免税事業者として扱われます。
*基準期間:個人事業者...前々年
法人 ...前々事業年度
基準期間がない場合(設立1・2年目)は、原則として免税事業者となります。しかし、
事業年度開始の日における資本または出資の金額が1,000万円以上の場合には
課税事業者として取り扱われます。
免税事業者には、
- 消費税の納税事務が不要。
- 売上に課税されるべき消費税が課されない。
というメリットがある反面、
- 仕入などにかかった消費税の控除は認められないので、その還付が受けられない。
というデメリットがあります。
輸出業者のように経常的に消費税額が還付になる事業者などは、還付を受けるために課税事業者となることを選択することが必要です。また、大規模な設備投資などを予定している場合なども、仕入などにかかる消費税が大きくなるため、課税事業者になる方が有利になる場合があります。課税事業者となるためには、納税地を所轄する税務署に納税義務の免除を受けない旨の「消費税課税事業者選択届出書」を課税期間の開始の日の前日までに提出することが必要です。
簡易課税制度
課税事業者のうち、
- 基準期間の課税売上高が5,000万円以下。
- 「消費税簡易課税制度選択届出書」を適用課税期間開始の日の前日までに税務署に提出している。
場合には、簡易課税制度を適用することができます。この制度を適用すると、
実際に仕入時に支払った消費税額の計算を不要とし、
その営む業種に応じた一定率の仕入があったものとみなして、
消費税の納付税額を計算することができるため、納税事務が軽減されます。
この制度では課税事業を5種類に分類し、それぞれの事業で仕入などが売上の一定の割合を占めているとみなして納税額を計算します。具体的には、
という計算を行います。
また、それぞれの事業のみなし仕入率は次のように設定されています(事業区分は課税期間における売上高の内訳に基づいて行います)。
<計算例>
事業区分 第一種事業
基準期間の課税売上高 5,000万円以下
課税期間の課税売上高 3億円
簡易課税は、一度選択すると2年間は継続して適用しなければなりません。大規模な設備投資などを行った場合、実際の仕入などで負担した消費税額がみなし仕入率で計算される消費税額よりも大きくなり、原則課税の方が有利になる場合もあります。したがって、大規模な設備投資などを予定している場合には、どちらが有利かを慎重に検討したうえで、簡易課税制度を適用するかどうかを選択してください。
申告・納付方法
課税事業者は、「確定申告」によって申告、納付を行います。また、その課税期間の直前の課税期間(1年分)の消費税額が一定額以上の場合は、確定申告だけではなく、「中間申告」も行わなければなりません。
確定申告
課税事業者は、課税期間の末日の翌日から2カ月以内に確定申告書を提出し、税額を納付しなければなりません。原則として、個人の課税期間は暦年、法人は事業年度とされています。ですから、3月末日決算の法人の場合には5月末日までに申告と納付を行うこととなります。ただし、個人事業主の場合には、特別措置として翌年3月末日までに確定申告および納付を行えばよいとされています。
中間申告
消費税の中間申告と納付は原則として、直前の課税期間の消費税の年税額により、所轄の税務署に中間申告書を提出し、その税金を納付します。中間申告の時期と納付金額は以下のようになります。
(1)直前の課税期間の確定消費税額 60万円以下(地方消費税分を含む)
中間申告は不要。
(2)直前の課税期間の確定消費税額 60万円超500万円以下(地方消費税分を含む)
→課税期間開始から6カ月を経過した日から2カ月以内に。
- 直前の課税期間(1年分)の消費税額の6カ月分相当額。
または
- 仮決算に基づいて計算した当該課税期間6カ月の消費税額。
(3)直前の課税期間の確定消費税額 500万円超6,000万円(地方消費税分を含む)
→課税期間開始から3・6・9カ月を経過した日からそれぞれ2カ月以内に。
- 直前の課税期間(1年分)の消費税額の3カ月分相当額。
または
- 仮決算に基づいて計算した当該課税期間3カ月の消費税額。
(4)直前の課税期間の確定消費税額 6,000万円超(地方消費税分を含む)
→毎月末から2カ月以内に。
- 直前の課税期間(1年分)の消費税額の1カ月分相当額。
または
- 仮決算に基づいて計算した当該課税期間1カ月の消費税額。
<<本項のご利用にあたって>>
税金にはさまざまな例外や特例があります。詳しくは税理士、税務署、国税局の税務相談室などにご相談ください。
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