起業マニュアル
キャッシュフロー経営の基本
キャッシュフロー経営とは、企業の生み出す資金に着目して、そのコントロールを重視する経営管理手法です。
会計原則-発生主義と現金主義-
現代の会計は、「発生主義」に基づき、会計処理を行い財務諸表を作成しています。発生主義とは、現金・預金などの入金、出金に関係なく、その入金の原因が発生した取引の時点で収益として、また、その出金が発生した取引の時点で費用として計上する方法です。
たとえば、「売上」という取引は、取引先から入金があった時点ではなく、販売した時点で計上します。あるいは、電気代は、実際に支払ったときではなく、使用したときに「水道光熱費」として計上します。収益から費用を控除して利益を算出します。
したがって、利益と資金の増減額とは一致しません。仮に利益が出ていたとしても、資金の増減額はマイナスであるということもよくあります。利益アップばかりに目を向けていて、資金の動きに無頓着であると、黒字倒産になる可能性もあります。「勘定あって銭足らず」にならないような経営をしなければなりません。それが、キャッシュフロー経営ということです。
減価償却
資金流出(キャッシュアウト)と費用計上が分離した代表的な科目として、「減価償却費」があります。減価償却費は、キャッシュフロー経営でもっとも重要な要素のひとつです。
減価償却とは、たとえば、自動車や建物は使用することにより、また、時間の経過により、価値は下がっていきます。このような資産を減価償却資産といいます。自動車を100万円で購入したとすると、その自動車を10年後に100万円では売れることはありません。10年後に10万円で売れたとしたら、10年後に売却損が90万円出ることになります。しかし、その10年間において自動車は企業活動に貢献していることから、10年間でその価値の目減り分を費用化すれば合理的です。この考え方から費用化する会計上の手続きを「減価償却」といいます。減価償却の方法には、定額法と定率法があります。
業種にもよりますが、一般に、減価償却費は多額になり、利益と資金の増減額が乖離する大きな要素となります。
資金管理計算書の種類とその内容
キャッシュフロー経営をするにあたり作成する主な計算書は、以下のとおりです。
(1)資金繰り表
日次あるいは月次の資金の出入りを「収入」と「支出」に区分して、資金ショートしないように管理する計算書で、実務でもっともよく作成されているものです。前日(月)繰越に収入と支出を加減算し、翌日(月)繰越を計算します。翌日(月)繰越がマイナスにならないように、その日、その月の資金収支を管理します。
(2)資金運用表
資金をその運用と調達に区分して比較対照する表です。貸借対照表の科目の増減で作成します。資金がどのように運用されているのか、たとえば、「売掛金の増加」、「棚卸資産の増加」、「有形固定資産の取得」など、運用別に区分します。また、資金がどのように調達されたか、たとえば、「支払手形の増加」、「長期借入金の増加」、「資本金の増加」などの調達要因別に区分します。
(3)資金移動表
資金移動表は、損益計算書の損益科目に貸借対照表の資産負債科目の増減額を加減算することで、資金の増減額を表示する計算書です。会社の支払能力を見たいときなどに作成します。
(4)キャッシュフロー計算書
キャッシュフロー計算書は、会社の資金が生み出される源泉別に、「営業活動によるキャッシュフロー」、「投資活動によるキャッシュフロー」、「財務活動によるキャッシュフロー」の三つに区分して、表示する計算書です。
「営業活動によるキャッシュフロー」で計上されるキャッシュは、販売取引などの会社の営業活動により生み出されるものです。この営業キャッシュフローが、慢性的にマイナスであれば、事業継続が難しいことを意味しています。
「投資活動によるキャッシュフロー」は、主に、設備投資などによるキャッシュの運用を表示したもので、会社がどれだけの規模の設備投資をしているかなどをみることができます。基本的に、「営業キャッシュフロー」の範囲内であれば、健全な設備投資であるといえます。
上記「営業活動によるキャッシュフロー」と「投資活動によるキャッシュフロー」を合計した額を、一般に、「フリーキャッシュフロー」といいます。
「財務活動によるキャッシュフロー」は、借入、増資など、会社の資金調達状況を表示したものです。会社が、どれだけ借入を行い、また、返済をしたかがわかります。フリーキャッシュフローが、マイナスであれば、財務活動によるキャッシュフローで穴埋めをするか、それができなければ、手持ちの流動資金を取り崩すことになります。
まとめ
- 「勘定あって銭足らず」の経営にならないよう心がける
- 現代会計は、「発生主義」といって、資金の出入りと関係なく会計処理されていることに注意する。
- 利益と資金の増減額の乖離要因で、もっとも代表的な科目は、「減価償却費」である。
- 資金を管理する計算書は、いくつかあり、それらの特長をとらえて作成する。
最終内容確認 2018年2月
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